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右や左の国士様  作者: 隣之 芝生


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第40話 良心的GM

 透明な樹脂製のバケツか洗面器もどこかにあるのだろうと思って立ち上がった私の首から上は、水を張った金魚鉢に覆われていた。

 これは非道ではないかと思ったのだが、開放型の金魚鉢を傾ければ、水はあっという間に抜けてしまうだろうし、水を張ったバケツや洗面器越しに卓上を見るよりもずっと楽だ。あれ、重たくて疲れるんだよな。水をこぼすと始末に困るし。


 観客席からは悲鳴や、私を案ずる声が上がっているようだが、よく聞こえない。

 『観客席からの声援ヤジ』有りにしておいて良かった。


『ケケケ、金魚や水草も入れてやりたかったんだが、視界を邪魔されたなんてケチをつけられたら業腹だからな』


 ダイスを振り、十分に息を残して『ターンエンド』を告げると金魚鉢は消え去って、首から上は乾いている。

 親切設計の演出だなあ。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『脱出王ハリー #4』


 再々、こんな有様では、如何なものなのかなと憂鬱ではあるのだが、ハリーは行かなければならなかった。

 こと、オカルト関連の困難に苦しんでいる人がいると聞けば、無視することは出来ない。それが虚言の類であると大方の予想はついていても、行かなければならないと思うのだ。

 ハリーの脱出王としての名声は世間に轟き、また似非霊能力者を撲滅するためのパフォーマンスであることを機会を捉えて公言しているので、憧れのハリーと親しく言葉を交わしたいと願うファンの中には、心霊的な現象に遭って困っているなどと嘘を吐いて、ハリーと接触の機会を持とうとする者が増えている。

 今回は、悪魔憑きを自称する少年の家族から、少年に憑りついた悪魔がハリーを指名して、会って伝えたいことがあると言っているという報せだった。

 ちなみに、ハリーが許せないのは霊能力者を騙り、善良な人々の弱みにつけ込んで金品を騙し取る詐欺師達であって、ハリー自身は敬虔なクリスチャンであり、神の愛と悪魔の存在を信じている。

 ただし、神の秘跡は軽々しく顕現するものではないし、悪魔の軍団は審判の時に現れるものだと認識しているだけで、その時が来るまで人の子は、ただ祈るだけでなく信仰と共に困難を乗り越える努力をしなければならないと思っている。

 これまでの経験からして、ハリーが少年と会い、手錠外しのようなちょっとした奇術を見せて、それから少年と握手してサインなど渡してやれば、無事、悪魔は退散してしまうのだろうと予想しているが、果たして神は、この自分の行いを善行としてお認めくださるのか心配になって、それで憂鬱になってしまうのだ。

 目的の家に着いた時『おや、今回は随分と念の入ったことだ』とハリーは思った。

 おそらく、教区から派遣されたのであろうシスターも、ハリーの到着を少年の家族と一緒にお待ちになっておられたからだ。

 シスターのお手を煩わせるなんて、今回の少年にはシスターの前で僭越ではあるが、説教の一つもしてやらなければならないと考えたのだが、その後の展開はハリーの想像を超えるものだった。

 ハリーは有名人になったから、まだ何とか説明が出来る。

 いつも持ち歩いている鞄の中には手錠や錠前外しの道具といった、犯罪者の疑いをかけられても仕方のない物品が入っているのだが、シスターは鞭や拘束具、それから知識として知っているだけなのだけれど、拷問器具とおぼしき工具が見え隠れしている手提げ袋をお持ちになっておられる。

 聖職者が悪魔と対峙する時の持ち物と言えば聖書に十字架、それから聖水と決まっているのではないだろうか。

 いや、もちろん、それらもお持ちになっているようなのだが。

 シスターと共に少年が待つ部屋に入った時、自分は来てはいけない所に来て、見てはいけないものを見てしまうのではなかろうかと、ハリーは恐れおののいた。


名前 脱出王ハリー(だっしゅつおう はりー)

年齢 32

特技

脱出・瞬間移動系マジシャン

 縄抜け、手錠外し程度であれば、生まれつき柔軟な身体や任意で外せる関節を駆使して数秒で実行できる。厳重に封印された木箱に入れられたフリをして脱出したように見せかけるトリックも使えるが、本人のこだわりで、本当に拘束され、水槽に沈められてから脱出する方法を好んで実行している。ハリーを逮捕・拘束することはできず、コンクリートを注入したドラム缶に押し込めて〇〇湾に投棄するというような敵対行為は失敗する。


境遇

 誰もが知るエンターテイナー。

 似非霊能力者の一掃を目標としていることを公言しているが、同時に、自分の家庭を破壊した詐欺師を名指しで糾弾しているので、憎い仇は雲隠れしてしまい、未だに復讐は果たせていない。


特記

 この victim を使用するプレイヤーは、自分のターン開始時に、悪魔憑きの少年か、悪魔祓いのシスターのどちらかを選んで、自分が考える最高にカッコイイ登場時の名乗り、若しくは決めゼリフを披露してからでないとダイスを振ることができません。


1D1~3 脱出王ハリー #9 へ物語は続く

1D4~6 脱出王ハリー #10 へ物語は続く

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