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右や左の国士様  作者: 隣之 芝生


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37/62

第37話 我ら原理主義者なれば

「無し無しの有り有りでいいだろう?」


 全ての準備を整え終えた卓越しに私が問いかけてきた。

 妥当な提案だろう。

 『犬殺しループ』無し、『観客の身代わり参加』無し、但し『観客の声援ヤジ』有り、『カットイン』有り。


 前世で私が所属していたコミュニティは『原理主義者』と呼ばれる異端の集団だった。

 『合意の上で皆で楽しく遊ぼうね』とルールブックの前文に歌われた一言を至上のものとし、禁止されていないのだから良いだろうと、物語をあるべき姿に着地させるためなら何でもするのだと編み出したハウスルール。

 私達が本気でやり合うための『カットイン』


 超越的存在に急かされて来たという私の言をどこまで信じて良いのか躊躇いはあるが、いい加減、待ちきれなくなっているのは私も同じだ。

 ダイスを振り、私の先攻が決まったところで手の内を開示する。

 『与吉』、『脱出王ハリー』、『時任 永遠』、『白狼』、『ヨアンナ』


 私は対面の陣容を見て訝しむ。

 『ナターシャ』、『教師A』、『与吉』、『白狼』、『ヨアンナ』

 左翼から中央に置いた『バニラ』の突撃力は凶悪だが、夕日はまだ力強く、右翼に至ってはコスト無視が機能しない。


 この決闘は長丁場必至だが、日が暮れるまでには私の手元に『最初からそのつもりだった』が落ちてくるだろう。第二階梯に進めた『時任 永遠』を隊列移動してしまえば、あの陣容に勝ち筋は無い。

 強いて言えば『教師A』と『与吉』によるハラスメント行為があるが、『犬殺しループ』を禁じた以上、単発の嫌がらせにしかならない。

 何か見落としがあったのか。

 先ほどの確認行為に詐術が隠されていたのか? 


『バッターラップ』


「手札の使用フェーズをパスして、『与吉』の物語に挑戦する」

 カッコ悪い始まり方をしてしまった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『愛して殺す印地打ち #1』


 おっとうは、もう食べたから、これは全部、お前の分だ。

 副業のあてが無くなった水呑み百姓の稼ぎなど、たかがしれている。

村の雑役を片付けて、与えられた駄賃は握り飯を二つだけ。

 流行り病で亡くした妻の忘れ形見である息子は病弱で、いつも青白い顔をして咳込んでいる。

 あばら家の外で泥と埃にまみれた身体をはたき、顔と手足を濯いで戻ってみれば、息子の姿が見当たらぬ。

 家の裏手の気配をたどって見れば、そこには野良犬に握り飯を分け与えている息子が居た。

 自分でも驚くほどの平板な声が出た。

「おっとうの稼ぎが少なくて、お前には何時も、ひもじい思いをさせて済まないと思っている。お前の咳が治らぬのも、腹いっぱい食わせてやれぬからだと情けなく思っている。おっとうが今日、稼いだのは握り飯二つだけ。いつも寝ているばかりで働いたことのないお前には分からずとも仕方がないか。いや、おっとうのことを少しでも思う気持ちがあるならば、気付くことだとは思うがな。お前は握り飯を分け与える相手に、おっとうではなく、その犬を選んだ。お前にとって、おっとうは野良犬以下なのだな」

 言ってから後悔した。

 思うように身体の動かせぬ息子のせめてもの慰めが、あの野良犬と戯れることだったのだろう。

 翌日、頭を地べたに擦り付けて頼み込み、雑役を増やしてありついた握り飯三つを持って、あばら家に帰った男が見たものは、首を括って、隙間風にゆらゆら揺れている息子と、その足下で頭を叩き割られて死んでいる野良犬の姿だった。

 いったい、どういうことだろう。

 死人と話す術があるならば、息子に問うてみたいのだ。

 お前は何を思ったのか。

 働けぬ我が身の始末を自分でつけ、たらふく食ってくれと、犬の肉を、この父に分け与えたのか。

 それとも父に愛想を尽かし、冥途の旅路の連れ合いに、この野良犬を選んだのかと。

「やってみなければ分からぬ」

 与吉は、そう独りごちた。

 犬を手懐け、わずかな飯を分け与えるほどに愛着を持った、その上で、撃ち殺してみなければ、いくら考えても息子の気持ちは分かるまいと。

 もう迂闊には喋らない。

 無口で無表情な与吉の放浪が始まった。


名前 与吉よきち

年齢 32

特技

印地打ち

 投石の名手であり、投石紐を使用すれば防具を身に着けた相手の殺傷も可能。投石紐がなければ、手ぬぐいなどの代用品で同様の成果を得ることが出来る。


境遇

 貧農の生まれ。小作の傍ら、村の畑を荒らす害獣の駆除を請け負って息子と二人、細々と暮らしていた。戦乱の世では、駆り出された戦場で多くの敵兵を撃ち殺し、剝ぎ取った武具を売り払った代金や、褒美として与えられた金品で、それなりに裕福な暮らしを送っていた。太平の世になって迎えた妻が流行り病にかかり、蓄えの全てを注ぎ込んだ看病の甲斐なく妻は帰らぬ人となっている。


特記

 ダイスは任意のプレイヤーに投げつけて振らなければならない。投げつけられたプレイヤーはダイスをトラップして卓に落ちるように協力すること。ファンブルした場合、ダイスを振ったプレイヤーと投げつけられたプレイヤーは犬の物真似を行い、GMによる優劣の判定を受けた後にダイスを振りなおす。


1D1~2 愛して殺す印地打ち #2 へ物語は続く

1D3~4 愛して殺す印地打ち #3 へ物語は続く

1D5~6 愛して殺す印地打ち #4 へ物語は続く

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