第31話 戦うたびに誤解される最低の決闘者
「ターンエンド」
物語の行く先は良くなかったが、難しいロールプレイが無かったので、安心して手番を渡した私は、因獄先輩の手札を見る。
『決意』が3枚、『確信』が1枚、『執念』が1枚か。
変わり種の手札が来ないとは、何気に彼もツイてるらしい。
はい、『決意』のコスト1を消費して『時任 永遠』の物語に挑戦ね。
ほう、出目が5で#4に進んだね。
へえー、光って書き換わった。
手動の場合、そういう演出になるんだね。
ええっ、『執念』じゃなくて『決意』2枚と『確信』1枚を使うの?
いや、合ってるけど大した度胸だ。
私が彼の立場だったら絶対『執念』を使うよ。
自分なりに解釈して上回るプレイをしろとは言ったけど、早速、応用してみせるなんて流石だよ。
それで出目が3かぁ。
いま、彼が侠気を見せたんだから良い目を出してやっても良いだろうに、ケチ臭いね、超越的存在は。
まあ仕方が無いよ、そうそう、そうやって進めてね、うん?
因獄ちゃん、何してるの?
「この腕時計は父の形見なのだが、どうか受け取って欲しい」
え?
『熱量のある振る舞いだが認められない。調貫徹の勝利とする』
『第二階梯まで進んだ物語を逸脱行為で止めてしまった。代償が必要だ』
落ち着け、私。
超越的存在は嫌な奴だ。
代償を支払うのは因獄先輩ではなく私なのだろう?
彼は私の嘘に踊らされただけだ。
私の過ちと向き合えと言っているのだろう?
「因獄先輩、ここに織部会長と物部副会長をお呼び願いしたいのですが」
『ケケケ、相変わらず疑り深い奴だ。次は、どんな嘘を吐くのか楽しみだ』
プレイングマットは消失し、私は誠意の見せ方を考える。
詫びる相手を呼びつけておいて、謝罪も何もあったものではないのだが。
「僕が背負うべき対価を君に肩代わりさせてしまったのか?」
悲壮感の漂う因獄先輩の誤解を解くため、手短に決闘の感想戦をして、それから、場を整える時間が欲しいので慌てなくて良いですよと申し添えて彼を送り出し、私は天を仰いだ。
ごめんね、因獄ちゃん。怖かったよね。
私が僭称する咒禁師の家紋はセミの抜け殻を意匠したものなのだそうだ。
短命の象徴みたいな生き物を紋章にするなんて、どうなんだろうと思ったのだけれど、7年かけて密かに呪い、凶兆に気づいた時には手遅れだから残り僅かな命を、せいぜい謳歌するがいいと勝ち誇る一族だったのだそうだ。
そんな相手からセミの抜け殻を繰り返し手渡されたら、「これは何?」なんて言えないよね。
そりゃあ、御父上の遺品に希望を託したくもなるよね。




