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右や左の国士様  作者: 隣之 芝生


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30/62

第30話 戦うたびに弱くなる最強の決闘者(5)

 『時任 永遠』は第三階梯に進めなくなってしまった。

 他のキャラクターの物語を進めても良いのだが、比較的マシと言われる、もう一つの結末を見せたい気持ちの方が強い。

 『校長先生の長いお話への反逆』を使って victim を振り出しに戻したいのだが、あまり複雑な手順を見せると因獄先輩も混乱するだろうから、次のターンにしよう。


「『時任 永遠』の物語の進展ポイントは第二階梯が求めるコストを超えている。僕は『時任 永遠』の前進を選択する」


 リングファイルを前進させた私は、ポケットから取り出したセミの抜け殻を因獄先輩に差し出して言った。


「これは僕が大事にしているものです。どうか受け取ってください」


 彼は両手で丁重に受け取ってくれたので、察しの良さに感心しつつ続けた。


「苦しみと悲しみを隠さない『時任 永遠』が第二階梯に進んだので、『ナターシャ』の特記事項に従い、第二階梯が求めるコストを無視して『ナターシャ』も前進する」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『病院送りにしてあげる #1』


 他人の痛がる様子や苦しむ姿を見るのが大好きだった。

 涙を流し、鼻水や涎を垂らして泣き叫ぶといった振る舞いが滑稽で、可笑しくて、楽しくて、たまらなかったのだ。

 村の子ども達と遊んでいる最中に、誰かが転んで膝を擦りむいて泣いた時など、腹を抱えて大笑いしてしまうのだが、そんなところを家族に見つかると、決まって拳骨を頭にもらって涙ぐんでしまう。

 自分が涙を流すのは、ちっとも面白くなかった。

 幼馴染の子ども達は皆大きくなって、転んだぐらいでは泣かないので、小さな子ども達の子守役を買って出たりもしたのだが、幼子たちが危ない遊び方をしても止めないので、信用を無くしかけていることに気がついた。

 慌てて、大人達が納得するような振る舞いをして何とか取り繕ってみたものの、いつまで誤魔化せるかは怪しいもので、さて、どうしたものかと思っていた時のことだった。

 村に巡回の医師団がやってきたのだ。

 流行り病を防ぐために、予防接種というものを国中の子ども達に打って巡っているのだという。

 興奮と感動で鼻血を流してしまった。

 刺しているのだ。

 王都から来たという大人達が、注射器という不気味な道具を使い、子ども達の腕に針を刺し、得体の知れぬ液体を身体の中に流し込んで、そして、それは、とても痛いらしいのだ。

 骨が折れても泣かなかった近所のガキ大将が、顔を青くして失禁しながら泣き叫んでいる。

 面白い、楽しい、嬉しい。

 ここは天国かと思った。自分の番が来るまでは。

 いざ、自分の番になって針を刺された時は、激しい怒りの余り、気を失ってしまった。

 意識を失う寸前に強く思った。

 自分は刺す側の人間にならなくてはいけない。

 絶対に、絶対に、絶対にだ。


名前 ナターシャ

年齢 12

特技

慈愛の微笑み

 大笑いしたいのをぐっとこらえて微笑み、相手の苦しみや悲しみに寄り添い、慰めの言葉をかけて、手当などをするフリをしながら、その様子をじっくり観察するのが大好き。


境遇

 辺境の寒村の生まれ。他人が痛みや苦しみに顔を歪めている様子を見ると大笑いしてしまう感性の持主。両親は『悪魔憑き』ではないかと恐れおののいているが、情緒面が残念な反面、状況の客観的な評価と合理的な解決策を導き出す知性、常軌を逸した決断力と行動力に優れているため、村内での評価は「要領の悪い子」から「危なっかしい所もあるけれど、面倒見が良くて優しい子」に落ち着いている。


特記

 苦しみ、悲しみを隠さない他の victim が規定位置に進む時、この victim もコストを無視して追従する。


1D1~2 病院送りにしてあげる #2 へ物語は続く

1D3~4 病院送りにしてあげる #3 へ物語は続く

1D5~6 病院送りにしてあげる #4 へ物語は続く

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