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右や左の国士様  作者: 隣之 芝生


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第29話 戦うたびに弱くなる最強の決闘者(4)

「僕は手札に持つ『執念』のコスト4を消費して、引き続き『時任 永遠』の物語に挑戦する」


 これで手札はコスト1の『決意』とコスト6の『狂気』の1枚ずつだけになってしまうが、ここまでの流れが良かったから、コスト2の『確信』、コスト8の『天啓』も、すぐに引き当てるだろう。


 あれ? 弱い。

 私の出目は1。

 R15指定だよ。

 無観客試合だが、盗撮、盗聴をしている奴らはどうなるんだろう? 


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『骨まで永遠に #9』

 下血した。

 入院して告げられた。

 末期の大腸癌だという。

「1年だけ、なんとか生きられませんか?」

 担当医の表情は苦しげなものだった。

 あと半年なのだ。

 模範囚などという理由で奴らのうちの一人が仮釈放されると聞いていた。

 全員は諦めざるを得ないが、せめて一人でも捕まえて剥製にしたいのだ。

 担当医は答えた。

 余命1か月だと。

 自分でも不思議な程に落ち着いていた。

 どうしてだろうと考えて、自分の腹の底に、どっしりとした揺るぎないものがあるのに気が付いた。

 腹が据わるというのは、こういうことなのだなと、どこか他人事のように感心した。

 強い痛みを訴えて、可能な限りの痛み止めを処方してもらった夜、点滴スタンドを引き連れて病院を脱け出した。

 公衆電話から連絡すると、すぐに迎えに来てくれた。

 もう10年近くの付き合いになる探偵には、すぐに病院に戻るべきだと説得されたが、思っていた通り、腹を割って話せば、不承不承ながらも依頼を引き受けてくれた。

 自宅まで送ってもらい、探偵を見送ったあと、必要と思われる書類を作って、それから、失礼にならない程度に色を付けた依頼料を探偵の口座に送金処理した。

 するべきことは他にもあるのだが、時間がないので許してもらうことにして、試作してきた素体の中で、一番、出来が良かったものを引っ張り出し、作業に取り掛かった。

 自分の感性と手先が研ぎ澄まされていると感じるのは薬物の副作用による錯覚だろうか?

 素体の表情の仕上がりに、すんなりと納得がいったので、加減など知らぬのだが、点滴の流量調節を全開にして、最後の作業に取り掛かった。

 望ましいのは全身の処置だったが、顔の防腐処理をして貼り付けたところで、感覚が鈍り、高揚感が失われつつあると感じたので、作業道具を丁寧に片づけて、昆虫標本作成キットを取り出した。

 後は、あの人が上手くやってくれるだろう。

 引き受けた依頼は必ず成し遂げる探偵なんだ、あの人は。


名前 時任ときとう 永遠とわ

年齢 20

特技

昆虫標本作り、剥製職人の前で口にしてはならぬ技

 限定的なものになるが、自分で自分の剥製を作ることができる。

 付属の犬の剥製と対で完成品とされており、愛らしい犬の表情と本体の嚇怒の表情の落差は見る者の狂気を誘う。


狂気を共にする友

 自分の行く先や周囲に『死臭』を纏ったものの移動を感知すると、ターンとコストを無視して自動追尾し、友に遺志を託す。


境遇

 危険運転者に家族を奪われた過去を持つ探偵と、依頼人と請負人という関係を超えた信頼関係を構築した。彼の遺作となった剥製は、定期的に特定の家を巡回して飾られる。この取り決めの履行は監視されており、違約があった場合は私信の公表が行われることとなっている。


特記

 この victim が規定位置に進んだ時、GMには配慮すべき観戦者に退室を命じる裁量がある。


『骨まで永遠に』 Fin

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