第28話 戦うたびに弱くなる最強の決闘者(3)
「『時任 永遠』の物語に挑戦する僕はダイスを1回振る」
出目は5。
Victim の物語が序破急で進展するように、プレイングマット上で victim が進む道も3段階に分かれている。
それぞれの階梯の横に表示された必要コストは順に1、5、10。
『時任 永遠』の物語は#4に進展し、追随能力を持つ『ナターシャ』の#1と合わせれば5を超える。
前世のヴィックス愛好家達は、ここから争わなければならなかった。
ルールブックには明記されていなかったのだ。
単体で超えていなければならないのか、他のキャラクターとの合計でも構わないのか。
もちろん私は victim を進めない。
前世で私が所属していたコミュニティの流儀を押し付けるわけではない。
これが安全策だ。
必要コストを超えたら階梯を進まないといけないというルールも無かったからな。
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『骨まで永遠に #4』
「お願いだから、焼かないで」
そういって両親が眠る棺に縋りつく永遠君の姿を見て涙しないものは居なかった。
慶び事は日取りを選べるが、不幸事は突然にやってくるものだ。
丁寧にエンバーミングされた遺体は頬に赤味を帯びていて、今にも目を開けて起き上がり、泣いている永遠君の頭を撫でて微笑んでくれそうに思えた。
だからこそ、永遠君は、この遺体が損なわれぬように、自分の持てる技術の全てを駆使して保存したかったのだ。
焼いてしまうなんて、あり得ない。
それでも、永遠君は無力で、親戚たちに抱きしめられて両親が荼毘に付されるのを見送ることしか出来なかった。
しばらくの間、永遠君は悔しくて、情けなくて、どうしようも無かったが、時が過ぎて研鑽を積む内に、あれで良かったのだと思えるようになった。
あの時の自分は未熟で、そして腕を磨いた今でも永遠君の技術は、お父さんに遠く及ばない。
あるいは、お父さんなら出来たかもしれないが、今の自分には無理だ。
人間の皮膚は丈夫だが、剥製にするには違う方向性の強さだから、詰め物をして形だけ整えたとしても、残念な結果に終わっていただろう。
お父さんの遺作となったチャッピーを撫でながら思う。
ホルマリン漬け、死蝋化、あるいは素体へシリコン素材を肉付けしての造形など、あれこれ考えてみても、この温かみや懐かしい匂いを再現することはできない。
家業を継いだ永遠君は一つ一つの仕事に工夫を凝らしながら待っている。
お父さんとお母さんの死因は交通事故だった。
走り屋などと自称して粋がっている者達が、交通量が少ないとはいえ、サーキットではない山道へやってきて危険運転をした挙句、永遠君のお父さんとお母さんが乗った車を谷底に突き落としてくれたのだ。
永遠君は探偵と長期契約を結び、刑務所に入った彼らが出所したならば、その所在を報告してもらうように手配している。
彼らならば問題ない。
温かみも懐かしい匂いもしなくて構わない。
否、するわけがないのだ。
一人残らず捕まえて剥製にしてやろう。
両親の墓前に、いつまでも、いつまでも、土下座した姿で飾ってやるのだ。
名前 時任 永遠
年齢 19
特技
昆虫標本作り、剥製職人業界の異端者
先立ってしまったペットと生前の姿のままに一緒に過ごしたいと願う人は意外に多く、永遠君は顧客の悲しみに寄り添えるよう、精一杯努力している。鳴き声の音声データがあればスピーカーを内蔵して出力する、首や手足の関節を可動にする、目が光る、ラジコン操作で走る台座に乗せて一緒に散歩できるなどのオプションを用意している。空を飛ぶ類のペットをドローンで吊り下げて飛行できるようにしたこともあったが、納品後、野外での飛行中に猛禽類に攫われてしまったと聞いて、心を痛めると同時に自分の復元技術に手応えを感じている。時々、返品されることがあって、剥製職人の道を歩み続ける自信がなくなることもあるが、暫くすると新しいアイデアを思いついて、やる気が漲ってくる。
妄執に衝き動かされて
自分の行く先や周囲に『死臭』を纏ったものの移動を感知すると、ターンとコストを無視して自動追尾し、衝動的に剥製にしてしまう。
境遇
金持ちの放蕩息子達の危険運転により両親を亡くした。代わりに多額の賠償金と、毎年、両親の命日に獄中の加害者達から送られてくる後悔の念と謝罪が綴られた手紙を得ているが、賠償金の一部を使って雇った探偵による調査では、加害者達が友人・知人に宛てて『俺は回避行動をとったが相手の運転技術がお粗末だった』、『あんな山奥に住んでいる変人を死なせたぐらいなら無罪が妥当』といった私信のやりとりをしていることを知った。自分の剥製職人としての技術の集大成を父母の墓前に捧げる決意をしている。
特記
この victim が規定位置に進んだ時、自己の使用する victim により他のプレイヤーが使用する victim を殺害しているプレイヤーは退場しなければならない。ただし、この victim を使用するプレイヤーから昆虫標本をプレゼントされているプレイヤーが標本を返却すれば、そのターンの退場を免れる。返却する昆虫標本が無くなったターンに当該プレイヤーは退場する。
※ 昆虫標本授受のために生じるコスト軽減のため、GMにはセミの抜け殻程度であっても昆虫標本として認める裁量がある
1D1~3 骨まで永遠に #9 へ物語は続く
1D4~6 骨まで永遠に #10 へ物語は続く




