第27話 戦うたびに弱くなる最強の決闘者(2)
次の手順に移るわけだが、『ナターシャ』へのコスト消費は無駄ということを教えなければならないし『教師A』の演出は初心者には過激すぎる。『与吉』の演技は理解に苦しむものだろうし、『脱出王ハリー』のロールプレイは超越的存在が提供する演出次第で降伏宣言も出来なくなる恐れがある。
盤上のどの victim から手を付けてもよいのだが、特技・特記の優先順位は左からと定められている。
消去法で最左翼に置いた『時任 永遠』の物語の結末は、どれも辛いのだが、定石通り、ここから物語を進めることにする。
「キャラクター群の行動フェーズに入る。手札に持つ『決意』のコスト1を消費して『時任 永遠』の物語に挑戦する」
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『骨まで永遠に #1』
「これでもう、ずっと一緒だぞ。だから、もう悲しむことはない」
そう言ったお父さんの顔は誇らしげで、そして慈愛に満ちたものだったので、永遠君は、心の中によぎった疑問を口にすることが出来なかった。
永遠君が物心ついた時から、ずっと一緒だった愛犬のチャッピーが天寿を全うして旅立ってから、いや、チャッピーが年老いて、立ち上がることも、呼びかけに応えることも出来なくなってからずっと、永遠君の胸は悲しみで張り裂けそうだったのだが、とうとうお別れの時が来てしまって、永遠君の身体の中には、ぽっかり大きな穴が空いてしまっていた。
そうして、月日が過ぎ、自室に引きこもって膝を抱えて泣いていた永遠君の前に、お父さんがチャッピーを連れてきた。
一緒に楽しく駆け回っていた頃のように、凛々しく立ち、茶色のつぶらな瞳を永遠君に向けて、小首をかしげて永遠君の顔を覗き込んでいる。
「チャッピーぃぃっ」
永遠君はチャッピーに抱き着いて、それから、すぐに気が付いた。
チャッピーの毛並みは艶々として、香ばしくて懐かしい匂いもするのだけれども、堅くて、ぬくもりも、息遣いもなくて。
チャッピーは剥製になっていた。
永遠君のお父さんは腕の良い剥製職人だ。
『これは、ちょっと違うんじゃないかな』
いつまでもメソメソしていては、きっと天国に居るチャッピーを悲しませることになるから、チャッピーのお墓の前で、元気にふるまってみせないといけないと考え始めていたところだったのだ。
永遠君が引きこもっている間に、チャッピーは火葬されてペット霊園で安らかに眠っているものだと思っていたのだけれど、でも、そうじゃなかった。
目の前の剥製と改めて向き合う。
息をするのも苦しそうだったチャッピーではなく、ボールを投げれば、いつまでも、どこまでも駆け巡っていた頃のチャッピーが居る。
永遠君の胸に空いた大きな穴が少し小さくなった。
火葬だけじゃないんだね。
土葬や水葬、鳥葬にしたり、木乃伊にしたり、旅立った者を悼む方法は一つじゃない。
永遠君の胸に空いた穴は、何か別のもので埋まった。
『僕が死んだら、お父さんは僕を剥製にしてくれるのかな』
永遠君は閃いた。
『じゃあ僕も、お父さんとお母さんを剥製にしてあげないと』
永遠君は腕の良い剥製職人になるための修行を始めた。
名前 時任 永遠
年齢 11
特技
昆虫標本作り
父の伝手で入手した昆虫標本作成キットは、戦前まで子ども向けに売られていたアレ。キットに含まれている青酸カリと注射器のヤバさから製造販売禁止となった経緯があるのだが、永遠君の技術は日々向上し、子どもらしい自由な発想で使用している。
純真無垢な好奇心
自分の行く先や周囲に『死の気配』を纏ったものの移動を感知すると、ターンとコスト消費を無視して自動追尾し、親切心で標本にしてしまう。
境遇
父の仕事の都合上、住居は人里離れた山奥にあり、通学するだけで精一杯なので、放課後や休日に友達と遊ぶことは少なかったが、愛犬が何時も側に居てくれたおかげで寂しくはなかった。父のような腕利きの剥製職人になろうと決意したが、気恥ずかしくて家族には秘密にしている。自分で考えた修行の手始めとして、誕生日プレゼントに昆虫標本作成キットを買ってもらった。
特記 この victim は昆虫標本を所持するプレイヤーしか使用することができない。プレイ中、 victim を規定位置に進める都度、使用するプレイヤーは自己以外のプレイヤーに昆虫標本をプレゼントしなければならず、プレゼントされたプレイヤーは丁重に受け取らなければならない。プレゼントする昆虫標本が無くなった時点で、使用プレイヤーは退場する。
※ 昆虫標本授受のために生じるコスト軽減のため、GMにはセミの抜け殻程度であっても昆虫標本として認める裁量がある
1D1~2 骨まで永遠に #2 へ物語は続く
1D3~4 骨まで永遠に #3 へ物語は続く
1D5~6 骨まで永遠に #4 へ物語は続く




