第23話 リターンマッチ(上)
何やら物言いたげな顔をしている者もいたが、結局、無言のまま5人の国士が部屋を出てから、因獄先輩は深い、深い溜息をついて語り掛けてきた。
「君の叔母上殿から聞いてはいたが、本当に君は頑固で危うい。僕の事も信じてくれては居ないようだが、そこは口先だけでなく行動で証明するしか無いようだ」
彼は、制服の胸ポケットから折りたたまれた紙を取り出し、机の上に広げて見せた。
「おや、早速、お相手をして下さるので?」
因獄先輩が広げて見せたのは、若葉さんの選挙ポスターだった。
「掲示板に貼られているものを剥がしただけで決闘が始まるかもしれないから、織部に頼んで、余っていたものを借りてきた。余り物でも破いて見せれば脅迫行為になるだろう」
疲労困憊という様子だったが、彼の両目には強い意志の輝きがあった。
「では、お渡しした5枚のカードを僕に……」
私の申し出は遮られた。
「侮ってもらっては困る。この5枚のカードを君に使わせるという意見も強く出た。だが、そんなこと、許されるものではないだろう。母の顔を知らず、父の愛を知らず、自分という存在を認めさせるために男として振る舞う健気な乙女に、死んでしまうかもしれないが試しに使ってみせろなど。これを使うのは僕だ。そのように有ってみせねば、華族の名誉、国士の正義などと語っても、全て戯言、虚言となる」
私も深い、深い溜息をついた。
ヴィックスに関わると、皆、思い込みが強くなるのか、それとも拘りが強いからヴィックスに惹き寄せられるのか。
ここで因獄先輩の認識を否定しても、きっと受け入れはしないだろうし、その話し合いは後にして、確かめておかなければならないことがある。
「先輩は、所有しておられる『世界の終わりの羊飼い』の絵札の少女の名前をご存じで?」




