第22話 醜悪なる権力闘争
再会の約束は初対面の相手との交流の始まりだった。
友達の家に遊びに行ったら、友達の友達が居て微妙な雰囲気になったと言えば分かって貰えるだろうか。
国士院大学付属高校から、我がギャルゲー学園に6人の男子生徒が転入してきた。
因獄先輩を始めとした6人の国士様方である。
放課後、華族パワーによって確保された職員用会議室で顔合わせ会的な場が設けられたのだが、5人の国士様方は自己紹介などしてくれなかった。
華族を騙る庶民であろう私を軽侮して名乗らないというのであれば別に構わないのだが、咒禁師云々を信じて、直接に名乗ると呪われるなどと思われているのだったら憂鬱だ。
これ以上、嘘を吐いたり、誤解を放置したりという恥と罪を重ねたくないのだが、迂闊に手を出してはいけない危険人物であるという幻影を見せる必要から訳知り顔で黙って座っていなければならない。
ただ、察することはあって、全く会話の弾まぬ顔合わせ会にも収穫はあった。
私に情報を与えないという腹積もり以上に、国士様方同士で交わされるアイコンタクトや表情に、何やら決意と覚悟が見え隠れして、きっと派閥争いと疑心暗鬼の鍔迫り合いがあるのだろうと感じたのだ。
6人の中では筆頭的な立場にあるのだろう因獄先輩のお開きの宣言で、他の5人は立ち上がって退出しようとしているのだが、因獄先輩は座ったままだ。
私に出ていけとも言わぬので、この後の『二人っきりの秘め事』も調整済みということだろうか。
もちろん疑り深い私は、全面的に因獄先輩を信用しているわけではないが、本当に彼が只のお人好しだったならば、何もかも背負わせてしまうのも不本意だ。
私が金の卵を産む鶏なのか、それとも天に唾吐く贋作者なのか、議論はすれども結論が出るはずもなく、彼らは監視者として――私だけではなく、お互いを牽制し合いながら、私との接点を確保し、場合によっては私を抹殺する役儀を背負って来たのだろう。
利権の奪い合いと責任の押し付け合いの犠牲者というわけだ。
「転校初日でお疲れのことと存じますが、よろしければ、今しばらくお時間をいただいて、お伝えしたいことがあるのですが」
因獄先輩の顔には疲労の色が濃く、ここに至るまでの調整に、さぞ難儀したのだろうけれど、この後、二人で密談をして、彼だけが利益供与されたのか、それとも彼もまた反乱分子なのか、疑われ、あちこち引き摺り回されることを思えば、盗聴器の一つ、二つは仕掛けられているのだろうけれど、目の前で済ませた方が、スッキリするというものじゃないか。
「2点あります。まず、僕の神前決闘の目的です。生徒会長候補に関連して宣誓しましたが、これは機会を捉えて行っただけで、思想的な背景も多少はあるものの、しかし、僕の目論見は別にあります。国士である皆様方から見れば過激なものでしょう。神前決闘を主催する存在――僕はそれを神ではなく超越的存在と呼称しますが、その存在と邂逅し、神前決闘制度の廃止を求めたいと考えています。次に僕が提供した5枚の絵札について、皆様は、その真贋について議論し結論は出なかったのでしょう。以上の2点について、解決策を提案したいのです。簡単なことです。僕が、その5枚の絵札を使って決闘すれば良い。誰かが、掲示板の選挙ポスターを1枚、破いてしまえば決闘が始まります。皆様方の柵が、それを許さぬのなら外野に任せれば良い。皆様の中には職務上、やむを得ず在野の国士と接触を持っておられる方がいらっしゃるのではありませんか? もとい、闘士と呼んで区別しなければいけなかったのでしょうか。理想社会の建設を夢想する闘士の皆様に耳打ちしてやれば良いのです。神前決闘による革命の機会を奪おうとしている反動分子が居ると」




