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右や左の国士様  作者: 隣之 芝生


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20/62

第20話 華族パワーで魔法少女に変身

 説明口調になるので恐縮だが、マジで便利だわ、華族パワー。


 前世で慣れ親しんだギャルゲー内のミニゲームであったヴィックスの位置づけは、やりこみ要素としてはアリだけど、エンジョイ勢にとっては、やらなくても困らないオマケ程度のものだった。

 主人公が恋愛対象を振り向かせるために、各種ステータスを上昇させるための努力コマンドを選択すると、成果に応じたストレスも蓄積して、許容量を超えてストレスが貯まると、一定期間、努力コマンドが選択出来なくなって、その間はステータス値も半減するという仕様なのだが、ミニゲームを遊んで勝利すると報酬として、ストレスを解消してしまう謎のお薬が手に入ったり、ゲーム内通貨では購入できない装身具などが与えられたりして、恋愛対象にプレゼントできるようになる。

 でも、ギャルゲー自体は、ミニゲームをやらなくても全恋愛対象とのエンディングに辿り着けるように出来ていた。


 やらなくていいミニゲーム。


 仕方ないよね。ヴィックスの演出って画面の中では表現出来ないものが多いし、ルールとか解釈とか、公式と愛好家の間で論争してる最中で、色々と割愛したミニゲームになってたし、初見の人が遊んでみようと思っても、最初は持ち札が1枚しかなくて、学校内に隠されたカードを探すところから始めないと楽しめなかったし。


 というわけで、今、私は因獄先輩と二人で、学校の七不思議にありがちな場所を漁って回っています。

 いや、本当に便利ですよ、華族パワー。どちらかっていうと国士パワーの方かな。

 職員室で残業していた先生に向かって、因獄先輩が官姓名を名乗るだけで、マスターキーを借りることが出来ました。

 おかげ様で、音楽室、美術室といった特別教室はもちろんのこと、校長室にまで入り込めたので、1年生の段階で入手できる5枚のカード、あっという間に揃っちゃいました。

 2年生、3年生になってから発見できるようになるカードの所在も確かめてみようかなと思ったんですけど、一緒に回っている因獄先輩が、カードが出て来る度に可哀そうなくらいに狼狽するので止めることにしました。


 ちなみに、ヴィックスの公式がローンチした victim は全15種。第一世代から第三世代と呼ばれるものまで都度5種ずつ製作販売されてきました。

 トレーディングカードゲームで使用できるキャラが15種しかないって少ないなって思うでしょ。

 でも、それだけで、結構、お腹一杯になるんですよ。

 各キャラクターの物語は序破急の形式で進展して、破に進む段階で3つの分岐、急に進む段階で2つの分岐があるんです。

 つまり、 victim 1種につき10枚のキャラクター像が用意されるってことです。

 Victim 5種で50枚に加えてキャラクターの行動に必要なコストや戦術の幅を与える手札のバリエーション。

 それから、公式と愛好家の論争の結果、追加のキャラクター分岐像が販売されることもありましたから十分に楽しめるんです。


 え、なに?

 段々、語り口調が女の子っぽくなってきたですって? 


 仕方ねえだろ、練習だよ。この後、今日一番の山場が待ってるんだよ。

 身辺調査されちまったんだ。

 絶対、辰子おばさ――もとい、辰子お姉ちゃんのとこにも調査機関の聞き込みが行ってるぜ。そんで、事情を知った辰子お姉ちゃんが待ち構えてるはずなんだよ、僕の帰りを。


 というわけで、手にいれた5種の victim を因獄先輩に持ち帰ってもらって、今日の成果品ってことにして顔を立てて、それで、その見返りに、これまで国士院が蓄積してきた、この世界での神前決闘の経験則――ルールの適用状況、求められた代償の先例とかの機密事項を、どこまで私に開示するか上役の指示を仰いで、国士院の中での調整がついたら、また会いましょうねって約束しました。


 それから、これが一番大事なところなんですけど、私を家まで送ってくださいってお願いしました。


「え、うん、まあ、君が望むのなら」


 お人好しの因獄先輩は、そう言って引き受けてくれたので、とっても助かりました。

 私のお家は学園から徒歩10分くらいの場所にあって、一人暮らしをしているのですけど、やっぱり、家の灯りがついていました。


 辰子お姉ちゃんですね。


 玄関前で、じゃあ、僕はここでとか言って帰ろうとする因獄先輩の手を掴んで、一緒に玄関に入ると仁王立ちの辰子お姉ちゃんが待ってました。


「徹っちゃああぁぁ……?」


 辰子お姉ちゃんの怒声は、私と手を繋いで玄関に立つ因獄先輩の姿を見て尻すぼみになって、出端を挫く私の目論見は成功しました。

 神前決闘の宣誓をしたことについて追及されたんですけど、国士院大学付属高校生の因獄先輩に保護してもらって、とっても反省してますって一生懸命説明しました。

 決め手は『守ってみせる』って約束してもらったのって言って、因獄先輩の肩をギュっと掴んで、目で訴えたら、因獄先輩が『あ、はい』って答えてくれたあたりだと思います。

 辰子お姉ちゃんは因獄先輩と一緒に帰って行きました。

 多分、帰宅の道すがら、二人の間で色々なやりとりがあると思うんですけど、おおよその事情を把握している因獄先輩なら適切な受け答えをしてくれるんじゃないかなって思ってます。

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