残されて一人
「・・・・・・」
魔王はほとんどすべての魔力を使い切り、魔法を行使した。
一切の配慮をせず、他への影響を考えず、
ある一体を殺すために
最大限の火力をぶつけた。
ただ、その結果は、何とも言い難いものであった。
「・・・・・なんだ・・・これ・・・」
目の前にあるのは真っ黒な球体。
恐らく、この中にアイツがいる、
それはわかるが、
「・・・・・」
気配がしない
魔力が感じられない
目の前には異常な光景が広がっているのに
まずそこに何かがあると脳が中々思ってくれない。
気を抜いたら、そこには何もないと思ってしまいそうだ。
「・・・・・」
いや、しかし、この中にアレがいるのなら
忘れてなどいられない
(今すぐここを)
そう思い、テオはその黒に手を伸ばす。
しかし、
「!?」
触れられない。
そこにあるはずなのに触れられない。
感触がない。かと言って、すり抜ける様なものではない。
「・・・・・・」
テオの眉間にしわが寄る。
静かな激情が今も彼を支配し続けている
「!!!!!」
顔が怒りで歪む。
ふざけるな
ふざけるな
殺す殺す殺す殺す殺す
何度も拳を打ち付ける
何度も
何度も
何度も
拳をそこへ打ち付ける。
が、
「!!!!!!!!!!」
感触がない。
あたってはいるが何もない。
瀕死とは言え、
そこらの一般人なら木端微塵にできる
暴力を振り回しているのに
コイツの中には何も届かない
「!!!!!」
足で蹴っても
、
棒で殴っても
魔法を撃っても、
届かない。
「ッ!!!!!!!」
どうすればいい
どうすればいい
今にもこの世界を壊してしまいそうだ
でも、そうしたところで一番壊したいモノは
きっと壊せない。
「・・・・・・・・・・・・」
じっくり見据える
アレは何かじっくりと考える
しばらくして
思い至った結論は
化け物は独りになった
というものだった。
あらゆるモノから切り離れされたのだ。
いかなる衝撃も、攻撃も彼には届かない
だが、それは、あらゆる光も声も届かないのと同じ
「・・・・・・これで・・・終わった・・・のか・・・いや」
これでアイツが終わるはずない
これで俺が終われるはずはない
(俺が殺さないと、気が済まない)
テオはまた考える
本当に全てから切り離されたなら認識できないはずだ。
(絶対的な障壁、断絶じゃない・・・コイツは多分、そのうち解ける)
今、コイツはそこにあるとわかる
だったら、いつかわかる。
「お前は、絶対に、俺が殺す」
そう言い残し、魔王は動き出した。
数年先かも知れない
何百年もあとかもしれない
それでも、魔王はこの中の化け物が出てくるのを待つ気でいる。
化け物を、仇を
必ず殺すために




