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5

 ミナシカの町、領主の所持する別荘。それが、現在勇者達の滞在している屋敷である。


 そして、その屋敷に姫様も同じく滞在していた。


 姫様は勇者たちを心配してこっちに来たと言っていたが、真意は定かではない。

 正直、俺は姫様のことを信用してはいなかった。


 姫様のいる部屋のドアをノックして、名を名乗る。


「アルベルトです。サクラ様について、報告があります」


「入って下さい」


 俺が部屋に入ると、姫様は手に持っていた本を引き出しの中にしまった。


「サクラ様がどうかしたのでしょうか」


「はい。サクラ様が数日前からずっと眠っていましたが…」


「遂に、目覚めたのですか…?」


「いえ、魔力暴走を起こして近付くことが出来ないとの報告がありました」


 その報告を聞いた姫様は、顔を俯かせた。


「ッ、面倒な…」


 そして、小さな声でそう言った。それを追及したい気持ちはあるのだが、立場の関係上そうもいかない。

 俺は素知らぬ振りをして、姫様に問い掛けた。


「…何か言いましたか?」


「えっと、聞こえたんですか…?」


 姫様は顔を赤らめて俺に聞いた。恋する乙女を気取っているのだろう。

 ただ、実際俺程の実力がない人なら簡単に騙されるぐらいに上手な演技なのだからたちが悪い。


「いえ、何を言ったかまでは聞き取れませんでした。何と申されたのですか?」


 本当は全て鮮明に聞き取れている。

 姫様と話す度にこんな茶番を繰り返すのには、いい加減飽き飽きしていた。


「…ひ、秘密ですっ。それよりサクラ様についてですよ!」


 姫様は恥じらいながら、慌てて話題を逸らした。

 まあ、見かけだけだろうが。


「はい、魔力暴走とのことなので彼を呼んでいます。明日にはこの屋敷に着くでしょう」


「ノア様のことですね。彼はアルキセルド一の光魔術師ですから、彼にまかせるなら安心ですね」


 ノア、光魔法のスペシャリスト。アルキセルド一だという姫様の言葉も強ち間違いではない。

 男なのにポニーテールをしている変な奴ではあるが、治療法がわからず難病だと言われていた魔力暴走の治療法を見つけ出した実力者だ。


 今では、治療法も広まり昔より魔力暴走による被害は少なくなっている。


「ですが、後遺症の危険が無くなる訳では無いですよ」


「分かっています。記憶喪失の危険性が消えないことは…寧ろその方が好都合ですがね…」


 悲しそうな表情で姫様は言った。独り言がなければ完璧な演技だ。

 独り言のせいで、何か企んでいることが丸分かりなのが玉に瑕なのだ。


「…報告は以上です。それでは」


 そう言って俺は、部屋を後にした。


───

──


 「……」


 「……」


 屋敷の廊下で、向かい合いながら顔を赤くしながら立ち尽くす二人。

 僕とルイザさんだ。

 どうしてこうなったのか、少し説明しよう。


 ダンジョンから帰ってきた僕は、自分の部屋に戻った。

 自分の部屋の前まで移動した僕は、扉の前に人が立っているのに気がついて顔を上げた。

 それがルイザさんだったというわけだ。


 僕たちが立ち尽くしてから、既に二十分程経過している。


 僕は最初の方に、謝罪をしようとした。しかし、


「え、えっと…」


「待って下さい!私から、話させて下さい…」


「ああっと、分かった…」


 のような会話があり、それからずっと話そうとする素振りは見せるのだけど一向に話し始めない。


 僕の方から話そうとするのと何故か同時話し始めようとしてしまうので、僕は話しが始まるまではずっと黙っておくことにした。


 その結果、気まずい雰囲気で二十分向き合うことになった。

 何の話なのだろう…


 やはり、あの件のことで慰謝料を請求されるのだろうか…

 そうなったとしても可笑しく無いよな…


 例えそうなら、精一杯の謝罪をしなければいけないな…



「ヒ、ヒビヤ様…」


 そしてルイザさんは、遂に話し始めるようだった。


「上手く言えない、ですけど…私は、ヒビヤ様のことが…す、好きです」


「…え…?」


 頭の中が真っ白になった。これまで、好きだなんて言われたことは無かった。

 その分とても驚きだった。


「ただ、ヒビヤ様は今、辛い状況の中にいると思います…だから、私ヒビヤ様の支えになります…あの、何でも頼って下さいね?…それじゃ私はこれで!」


 そういってルイザさんは走り去っていった。


「あっ、待ってくれ…!」


 そう、慌てて僕はそう言った。


 しかし、気がついたころにはもうルイザさんはその場にはいなかった。


「…どういうこと」


 僕は暫く先ほどと変わらず、部屋の前で呆然と立ち尽くしていた。

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