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 カボチャを人の顔のように切り抜いた装飾、ジャック・オー・ランタン。

 俺は今、それと対峙していた。


 暗い、闇の中から這い上がってきたその巨体は、人間のサイズを遥かに上回り、頭からは不自然な程赤い炎がほとばしっている。


 ソイツは俺を嘲笑うかのように、キチキチと音を立て、そして、動いた。



 瞬時に、何メートルもある距離を詰められ、大振りにナタが振り下ろされる。ヤバい!



 咄嗟に避ける。



 …目と鼻の先にナタが通り過ぎ、ダンジョンの床を砕く。



 今のままでは負ける、そう思った俺は即座に雷魔法を発動させ、



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 この魔法は二年間の鍛錬によって身に着けた技であり、身体の電気信号を操ることによって、脳から直接身体全体を動すことが出来る…というイメージで使っている。



 俺はランタンから距離を取った。



 …しかしランタンは、直ぐに距離を詰め攻撃してくる。

 それに応じて何度も距離を取るが、結局距離を詰められ無駄になってしまう。



 打つ手は無いのか…?



 …嫌だ、怖い、怖い、怖い!


 徐々に焦りが増し、魔力が乱れていく。




「…がッ!」


 俺は…足をもつれさせ、硬い地面を転がった。



 ヤバい、殺される…!


 ランタンが近づいてくるのを察知し、必死でもがく。



…そして、何とか立ち上がり、背を向けて逃げ出した。


 出来るだけ遠くへ…





 だが、


「ほラホら、逃げテバカりジゃぁジャックにハ勝テなィよ!!」


「……っ!」



 …その言葉に、ハッとさせられ、俺は足を止めた。

 そう、このままだと俺はいずれ魔力も体力も尽きてしまう。

 どうせ逃げ出してもマリアに捕まり殺される。


 …今の今まで、俺は速めに殺されるか、遅めに殺されるかを天秤にかけていたのだ。

 生きる為に、俺は戦わなければならないのに…!


 このままでは、駄目だ。


 唾を呑み込み、後ろを振り向く。



 …まだ、恐怖はある…。

 だが、戦える…!



 …きれた息と魔力を整え、ランタンの動きを観察する。



 そしてギリギリまで近づけてから、逃げる。



 突破口は必ず、ある…!


 だから、絶対に見つけて…此処から、ダンジョンから生きて帰る…!



───

──


 勝機はやって来た。

 勝つためのルートはもう決まった…あとは、実行に移すだけだ。


 俺は、地面から石を拾い上げ、氷を十層のフロア全体に張り巡らす。

 魔力をゴッソリと削られるが、関係ない。



 それに伴い、ランタンが凍りついて動かなくなる。



 残念ながら、動かなくなる時間は数秒間の間だけ。

 しかし、三秒も有れば、充分…!



 残り三秒。


 ランタンの回りの氷が溶け始め、ツルが動き出す。


 俺は石を握り締め空中に投げる。



 残り、二秒。


 ランタンの顔の間から炎が吹き出し、その熱風が此方まで届く。


 俺はイメージを研ぎ澄ました。



 残り…あと僅か。


 ランタンが完全に動き出した、と同時に…


 俺は落下して来た石を、



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 …何度もいうが、魔法とイメージは直結する。

 それがどんな無理難題であろうと…イメージさえあれば。



 結果的に俺が放った一撃は、レールガンとなり、ランタンの身体全体を貫いた。



 正に必殺の一撃。



 ランタンは、塵と化し…その姿を消した。


 魔力の脱力感と共に身体の緊張が解け、へたり込んでしまう。


 その瞬間、フロア全体の氷が砕け散り、キラキラと空中を舞った。


 …あと少しでも魔力を使ったら、気絶する。


「ハァ…ハァ…」


「スバらしィね!実ニィっ!マっサカ本当に、ジャックを殺シてしマゥナんテェ…」


 俺は何か言葉を発そうとしたが、何も言葉に出来なかった。


「実ニ不愉快だ、死ンデ償ェ」


「………っは?」


 …心が震え上がった。


「如何ニモ!話が違ゥッて顔シテルねぇ?僕ガソンなバカ正直ニ約束を守ルトでモ思ッたノカィ?そゥだトシタら光栄ダぁ!ソレホどまデニ心ガ綺麗ダと思ワレティたナンテね!…僕を誰ダト思ッてィルンだイ?…魔王軍第十三部隊隊長、マリア・ライリーンダ」


 マリアは、一歩一歩、俺に歩み寄ってくる。


 そして、ついに目の前に立った。


「グッバイ!名も知ラヌ人間!」



 …そこで、俺の意識は途切れていた。




───

──


 第九層。衝撃波と共にとんでもない爆発音が鋭く響いた。


「…何なんだ一体?」


 先ほどから度々起こる異変に違和感を抱きながらも、頭に入ったこの層のマップを基に最短ルートを駆けていく。


 …十層への階段を見つけた。

 動きは止めず、そのまま下って行く。

 …ダンジョンでは温度の変化は起こらない筈なのに空気が冷たい。


 動きを止めず階段を進んでいくとやがて十層が見えて来た。


 俺が十層に足を踏み入れると、其処ではそこにいた少年を赤いマントを身にまとった男が今にも殺しそうな状況になっていた。


「…僕を誰ダト思ッてィルンだイ?…魔王軍第十三部隊隊長、マリア・ライリーンダ!グッバイ!名も知ラヌ人間!」


 そう言って赤マントは自分の手を振り下ろした。

 俺は咄嗟に赤マントを止めた。


「グッ、誰ダオ前はァ!」


「俺は赫灼のギルバート!俺の名において貴様を殺す!」


 赤マントが顔を歪ませ、叩きつけるように叫ぶ。


「僕ガ魔王軍第十三部隊隊長ダト分かッテ言っテイルのカィ?コの下等生物ガッ!!」


 俺は自分の剣を抜き、構えを取った。

 そして、赤マントを斬りつける。


「ゲギャァアアア!!!」


 …その一閃は赤マントに肩から腰までの深い傷を負わせ戦意を喪失させた。


「クソっコノ傷デハモう…いズレ殺ス!殺しテヤる!ギルバート!名前ハ覚えタカラなァ!首を洗ッて待っテロ!」


 そう言って、赤マントは闇に潜り込み消えた。


「ッッ!待てっ!!…逃がしたか」


 俺は少年の方へ振り向き、安否を確認する。


「大丈夫か?少年」


 …どうやら気絶しているようだ。

 この少年が彼女の仲間かどうかは聞かないと分からないが、いまこの層にいるのは少年と俺だけ。

 心当たるのはこの少年だけである。


 どうかこの少年が彼女の仲間であれと思いながら、俺は少年を肩に担ぎ上げ、九層の石碑へと向かった。



───

──


 …ダンジョン前で、私は佐倉くんを待っていた。

 まだ彼と話し始めて少ししか経っていないけれど、絶対に死んで欲しくない。



 ダンジョン前にワープしてくる人が現れる度、私が佐倉くんを頼んだ人ではないか、佐倉くんではないかと目を向けるが一向に私が求める人物はやって来ない。


 そんな速くやってくる筈はないとわかっているのにワープしてきた人物に目を走らせるのを止められない。


 まだかまだかと待ち望み、もう何度目かも分からないワープしてきた人物を見つめ、…そして、走り出す。

 ついにやってきた!


「佐倉くんっ!」


「……」


 佐倉くんは何も言わない。もしかして…


「安心しろ、気絶しているだけだ。その様子じゃあ仲間はこの少年で合っていたたんだな」


「はいっ!ありがとう御座います!」


 良かった…


「この少年はお前が連れて帰れ。用事が出来たから依頼額はまた後日に話そう。俺の名はギルバート…君の名前はなんて言う?」


「私、渡辺美織って言います。本当に、ありがとう御座いました!」


「その気持ち、ありがたく受け取って置こう。じゃあ、またな」


「はいっ!」


 ギルバートさんは、佐倉くんを地面に下ろし去っていった。


 はぁ、佐倉くんが生きていて本当に良かった…。


 …ん?佐倉くんのことどうやって運べばいいんだろう?


 とりあえず引っ張ってみる。


「ぐぅ、重い…」


 運べない…!一体どうすれば??



 その後も試行錯誤をしたが、結局騎士団長のアルベルトさんが駆けつけるまでの二十分間、私は佐倉くんを全く動かせなかった。

 初めてのバトルシーン執筆。今回は文字数が多めになっております。

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