2
……なんて格好つけて飛び出した私だけれど、所持品は、登校するつもりで着用していた制服と、そのスカートのポケットに入って
いたマッシュルームだけ。ケータイも、財布も、持ってないぜ。どうだ羨ましいだろう。
それと、十一月の朝は寒い。寒い上に、急に飛び出して来たからコートも何も羽織っていない。つまりクソ寒い。メロスは激怒した、そして私は震えた、ぶるぶるとケータイのバイヴレーターのように。このまま震えてたらその内ケータイに返信しかねないしそんなの嫌だからいつまでも震えているわけにはいかないんだけれど、上着を買おうにもまだ服屋は開いていないしそれ以前に財布を持っていないから、結局のところ震えるしか無い。
辺りはまだ薄暗くて、人通りもほとんど無い。一日は始まったばかりなのに、思い切り吸い込んだ空気は何だか疲れ切ったような匂いがした。
そのままあても無くふらふらと歩く内に、小さな公園の前へと辿り着いた。幼い頃姉と二人でよく遊んだ公園。私は何となく懐かしくなって、石段を上ってその公園の中へと入ってゆく。
早朝の公園には、ホームレスの人が数人と、昨日酔い潰れて寝たらしい乱れたスーツ姿のサラリーマンが一人いた。そしてホームレスの人が気づかれないようにそろそろとした動きで、サラリーマンのズボンのポケットからはみ出している財布を盗んでいた、のを私は無視した。知ったこっちゃねえや。
「あ、そうだ。」
私はふと思い立って、学校の友達に貰ってからスカートのポケットに入れたままにしていたマッシュルームの粉末を取り出した。マッシュルームと言っても勿論、カレーとかに入れるあのマッシュルームを持って「マッシュルーム系女子です☆」とかファッションの最先端を歩いているわけじゃ無い。……マッシュルームファッションが世間で流行してる光景とかシュール過ぎるだろ。
って言うか持ち歩いているのはマッシュルームの「粉末」なわけで、粉末にするマッシュルームって言ったらもうアレしか無い。魔法のマッシュルーム、つまりはマジックマッシュルームだ。個人的にはマジックマッシュルームと言うよりミラクルマッシュルームと言うイメージなのだけれど、こればっかりは昔誰かが決めた名前なわけだからどうしようも無い。と言うかそんなことはどうでもいい。
大事なのは、何故そんなものを今このタイミングで取り出したのか。それは、この魔法きのこを飲めば寒さなんて気にならなくなるんじゃねーの、と思ったからなのである。私ったら本当に天才! 丁度すぐ近くに公園もあるから、そこの水道の水で飲めばいいし。私ったら本当に超天才!




