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水道の蛇口をきゅいきゅいと捻るとじゃばじゃばと出てくる冷たい水。きのこ粉末をさらさらと口の中に入れて、手で掬った水でごきゅごきゅと流し込む。初めて飲むマジックマッシュルームの味は、実に微妙だった。それ程不味くも無いような。でもくれた友達は舌噛んで死にそうになる程不味いとか言ってたような。はて、私の味覚は狂っているのだろうか。まああんな淫売女の肛門から生まれたんだから狂っててもおかしくは無いような。ああ、自分で言ってて悲しくなってきたぜ、ららら、ららら。って言うか寒くて手が凍ってしまいそうだけどまあ凍ったら凍ったでそれでいいか。いやよく無いけど。
飲んですぐに効くわけも無いので、私はしばらく滑り台に寝そべってきのこ君がキマってくるのを待つことにした。
仰向けになったところで夜じゃないから星は一つも見えない。どうせ夜だったとしても見えないんだけど。だってここ、都会のど真ん中だし。溜め息を吐いて目を瞑った。星が見えた。ファック、私の狂った脳め。ああ、このまま通りかかったレイプ魔に犯されてしまえば満たされるのかな。ろんりーろんりーれいぷみー。
そう、レイプミー。きっと誰もが心の中に秘めている願望だと思
う。人は皆、誰かに犯されたいといつでも願っているのだ。男でも、女でも。本人がその思いに気づいていても、いなくても。何処か心の奥の奥、隅っこの隅っこ、埃が溜まったままずっと触れられていない場所で。ただ、私の場合はその願いが心の床を覆い尽くしているだけ。別に特別変わった性癖を持っているわけでは無いさ。穢されたいだけ。めちゃくちゃにされてしまいたいだけ。
けれどもそれと同じように、私は「犯されたくない」とも願ってる。怖いんだ。私と言う存在が、触れられたその場所から腐り落ちてゾンビのようになってしまうんじゃ無いかって。腐り落ちたその先で、私はあの母親のような屑になってしまうんじゃ無いかって。
……とかちょっと高尚っぽいこと考えてる私今カッコよかっただろ? なんて悦に入っている内に辺りはどんどん明るくなってくる。けれど効かない、マッシュルームが全然効かない。全くうひゃうひゃ出来無い。テンション低いままだし。味だってそこまで不味く無かったから、もしかしたら偽物を掴まれたのかも知れない。あんにゃろー、レイプ魔に犯されてしまえ。そして私は諦めて帰るしかねえ。
でも、帰りたく無いなぁ。あのビッチのいる家になんて、戻りたく無い。戻ってしまえば私はどうしようも無くあいつの娘なんだ、あの最低に美しい売春婦の、娘。
私は私、あいつはあいつ、なんて言ってみたところで私はあいつのディーエヌエーを死ぬ程受け継いで生まれてきたわけで、おそらく私の身体を流れる血の半分どころじゃなく十分の九くらいはあいつの血で、いやもっと多いかも知れないな、とかまあ細かい話はどうでもいいけれど私は要するにあいつと同じ、卑しい存在なのだ。もしかしたら私があいつを嫌いなのは同族嫌悪だったりするのかも知れない。そうは思いたくないけれど、多分そう。と言うかそれ以外に思いつかないし。
だけど、だけど。外にいれば、私はただのキリ、単なる女子高生のキリになれる。あいつとは何の関係も無い私になれる。だから帰
りたくは無いんだ。
それでも帰らないわけにはいかない。ケータイも無い、財布も無い、身体に染みる寒さを防ぐ上着も無い。そんな私がどうやって生きて行く?
「エンコーだけは絶対にしたく無い。」
それをしてしまえば私は本当にあいつと同じになってしまうから。いっそのこと一生セックスしないまま死んでしまえばもしかするとあいつとは違う存在になれるかも知れない。
数分後、結局諦めて家に帰るべく公園を後にした私が目撃したのは、車に轢かれかけて照れ笑いしている包帯だらけの女子高生だった。その顔は、限りなく私の顔に等しかった。




