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再会初恋~絶対オトす~  作者: 阿衣真衣


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8/14

けじめ

―涼子Side


「よし、一晩経っても大丈夫!」

鏡で昨日叩かれた頬をチェックして学校へ向かう。


「おはよ~」

「おはよ。昨日は楽しかったね。あの後どうだった?」

目をキラキラさせながら聞いてくる凜に、その後のことは言えず(勝手に言っていいことでもないし)

「普通に送ってもらっただけ」

「そうなんだ~飲みに行けばよかったのに」

(いや、もし行ったとしてそこを見られたら、もっと恐ろしいことになってたかも…)



◇


暁翔に会ってから三日。あれから一度も連絡は取っていない。

(レポートの提出が―)

課題について考えながらバイト先に向かっていると、

(さっきから視線を感じるような…?)

学校を出て少ししたあたりから、何となく視線を感じる。気のせいかなと思ったけど…付けられてるとしたら走った方がいい?

この前のことがあって、もう振り向かない。見るのはよくない。と頭の中では分かってるけど、そう考えれば考えるほど気になってしまうもので……

(な~んで無視できないんだろう…)

恐る恐る視線を感じる方を向くと、見覚えのあるような人が……


「あっ…」




―暁翔(あきと)Side


本当に顔が大丈夫か気になったのと、やっぱり直接謝りたくて涼子の学校へ。

あれから連絡もしていないし、もう顔も見たくないかもしれない。避けられてもしかたない。どう思われているのか不安で怖かった。


道路の向かい側から涼子を待っていると、涼子が一人で学校から出てきた。

(顔は大丈夫みたいだな…)

道路を渡り、涼子の後を追うように歩く。声をかけたいのに、声を出そうとすると喉に引っかかって出てこない。

じっとその背中を見ていると、ゆっくり涼子が振り向いた。


目にかかる前髪の間から、涼子の少し驚いている顔が見えた。

「―…涼子」

やっと出たのは、自分でも聞き取るのがやっとの小さい声。

(こんなんじゃ、聞こえるわけ…)


「暁翔?」




―涼子Side


見覚えがあるような顔を見ていたら、微かにだけどその人の口が動いて私の名前を呼んだ。

この一週間でよく聞くようになった声。

「…暁翔?」

立てられていた真っ赤な髪は黒く染まって下ろされ、たくさん着けていたアクセサリーも、今はピアスが左右に一つずつあるだけ。

いつもニコニコしていた顔は、眉が下がり口もキュッと閉ざされ、あの時に会った時とは雰囲気がガラリと変わっている。


「だいぶ雰囲気変わったね」

「…うん。その…この前は本当にごめん。顔大丈夫そうで安心した」

この前までしつこく私の目を見ていたのに、今は伏し目気味で私の顔も見ない。

「あぁ…うん。すぐ冷やしたし。 まあ、何回も謝ってくれたから、もういいよ。

 ただ、これからはちゃんとしないとね。そうじゃないと、いつか刺されるよ」

「…うん」

(そんなに気にしてたんだ。もしかして、わざわざ謝りに来た?)


声も弱々しい落ち込んでいる暁翔の顔を見ると、何か調子が狂う。

「……それじゃ、私これからバイトだから行くね。もう本当に気にしてないから。じゃあ」

この空気に耐えられなくて、私はそのまま逃げるように走り出した。




―暁翔Side


声も小さかったのに、見た目も変わったのに、俺だって気付いてくれて、それでも避けなかったし話してくれた。

それなのに、俺は顔もまともに見れなくて情けない。

走って行く後ろ姿を、まただた見つめるだけ……

(…いや、このままじゃダメだろ。こんな情けない姿じゃ)


かっこ悪いと思われても、嫌いと言われるまでは……。

そう決意して、走って涼子を追いかける。

……そこまではよかったけど…

中に入るか、入らないか考えながら、涼子が入っていったバイト先の喫茶店の前を行ったり来たり、周りを一周して、100メートル進んでは戻って……。

(完全に不審者だな…)


もう少しグイグイいけると思ったのに、俺は思っていたよりヘタレだったらしい。

(……いや、もういい加減入ろう)

覚悟を決めて振り返り、通り過ぎた喫茶店へ向かうと、前から歩いてきた女子高生たちが先に入っていった。


(かぶったぁ……いや、この流れで入った方が入りやすいか。よし)

お店のドアを開けると、カランとベルの音が鳴り、涼子が少し呆れたような顔で俺を見た。

「いらっしゃいませ。……やっと入ってきた」

「俺がいたの気付いてた?」

「そりゃあ、あんだけウロウロしてたら、普通に気付くよ。

 お好きな席にどうぞ」

(はずっ……。でも、嫌な顔はされてないし大丈夫そうだな)


どこに座るか迷ったけど、カウンターの一番端に座ることに。

店内には俺を合わせて五人の客。

同じカウンター席に俺の前に入った女子高生が二人と、テーブル席に大学生っぽい女の子、その隣のテーブル席に若い男。

店内には、涼子と女子高生の会話だけが聞こえる。


女子高生は涼子の知り合いらしく、カウンター内で皿を片づけている涼子に話しかけていた。

「ねぇ、成人式どうだった?」

思わず反応してしまう。

「久しぶりにみんなに会えて楽しかったよ」

「やっぱり、みんな変わってた? かっこよくなったなぁって思う人とか」

(どうなんだ? なんて答える?)

「髪染めたり、メイクで変わったなぁとは思ったけど、話したら変わってなかったかな。

 かっこいいは分かんないけど、男子はほとんど背が伸びてた」

(…そんだけ?)


「えぇ~それだけ?」

「そう言われても…」

その時、俺の注文したコーヒーを涼子が持ってきてくれた。

「お待たせしました」

「ありがと」


「じゃあさ、背伸びててキュンとしたとか、いいなって思った人はいなかった?」

(ナイス質問!中学メンバーだと俺が一番背伸びてたし。でも待てよ…高校でいいなと思った奴がいたり……)

「いない」

(即答かよ。でもよかった~いいと思ってる奴いなくて。……って、それ俺のことも何とも思ってないってことに……いや、今から挽回、挽回!)



女子高生二人は涼子と話したり、二人で話したりして二時間ほどすると帰って行った。

「天音、麻琴ちゃんありがと。また来てね」

「うん。ありがとう」「ありがとうございます」


俺より先に来ていた女の子と男も帰り、俺より後に来た客も帰って行く中、俺は、おかわりを繰り返し涼子のバイトが終わるまで居座り続けた。




―涼子Side


カウンターの端で、ただずっとコーヒーを飲んでいた暁翔。

(ずっと居たけど特に何も話さなかったな)

「お疲れ様でした」

扉を開けると、暁翔が立っていた。

「おつかれ。暗いから送る」

(…どうしよ)


また変な誤解をされないか心配だけど、何か言いたそうな暁翔の顔を見ると、断るのも少し気が引ける。

迷ったけど、早歩きをすればそんなに長い時間一緒にいる訳じゃないし、距離を保てば大丈夫だろうと、一緒に帰ることに。

これが最後だと思うし……。


歩き出しても、何も言ってこない。黙ったまま…。

その空気が何だか重くて、私が先に口を開いた。

「昨日、暁翔の元カノさんに会ったよ」

私がそう言うと、暁翔は驚いて立ち止まった。

「え?なんで? 何か言われた?何もされなかった?」

「謝ってくれた。あと、暁翔に好きな人ができたから別れたって聞いた」

私の言ったことに、暁翔は目を見開いて、顔を真っ赤にして慌てていた。


(別れた理由とか他人に知られたくないよね…)

「別に私が聞いたわけじゃないよ。あっちが話してきただけ。詳しくは聞いてないから安心して。そもそも私が聞いていい話でもないし」

「…そう……」

慌てたと思ったら、次はシュンとした暁翔…

(もしかして…)


「あのさ……、言いにくいかもしれないけど、もしかして……振られた?」

「………は?」

「いや、落ち込んでるように見えたし、イメチェンしてるからそうなのかなぁ…って」

そう言うと、暁翔は髪をぐしゃっと掴み、大きくため息をついた。

「まだ、振られてない」

「あ……その…変なこと言ってごめん…なさい」


しばらく変な沈黙が続いた。完全に私のせいだけど…。

すると、暁翔が私の顔を軽く覗き込んで、急にボソッとしゃべり出した。

「あのさ、どうすれば好かれると思う?」

「いや、急に聞かれても…。暁翔の好きな人がどんな子か分かんないし」

「涼子のでいいから」

?(そう言われてもなぁ……。とりあえず、一般的な話でいいのかな?)

「優しくする、笑顔で話す、感謝を言葉にするとか? とにかく、誠実に接したらいいんじゃない?

 あとは、髪とか爪を綺麗にして清潔感は大事だと思う」


「あとは? どんな人が好き? 見た目とか」

「それは人それぞれだから知らない。てか、その子が好きそうだから、そういう風にイメチェンしたとかじゃないの?」

「いや……うん。まあ、そうなんだけど……。涼子は、この髪型どう思う?」

「う~ん……似合ってると思うよ。ただ私的には前髪は目にかかってない方がいいかな。まあ、その子に聞けそうだったら聞いてみたら?」

「そっか……うん。ありがと」

暁翔は少し照れたように髪を触りながらブツブツ言っていたけど、何を言っているかは聞き取れなかった。


「ここで大丈夫。ありがと」

話している間に家の近くまで来ていてお礼を言うと、この日初めて暁翔の笑った顔を見た。

「俺も色々ありがと。頑張るよ」

(私に宣言されても…)

「あぁ…うん。頑張ってね。それじゃ」

(もう会うことないだろうから、どうなったか知ることもないだろうけど、好きな子を泣かせないようにね)




―暁翔Side


「全然気付いてねぇし」

涼子に手を振って、その背中には届かないようにボソッと呟く。

ここまで話して気付かないって、わざとか?

少しでも『もしかして私のことなんじゃ…』とか思わないのかな。

ってか、思えよ。察する能力!


え?これでもアピール届いてない?

めっちゃ誘ってるし、バイト終わるまで待ったし送ったのに?

あれ?でもよく考えたら、これは俺が勝手にやったことか。


「ハァー…」

いつも言われる側だったから、思う側がこんなに大変とは思わなかった。

軽く言えたら楽なんだろうけどな……

今のままじゃ、無理なの確実だし。てか、意識すらされてないし。


優しくする、笑顔で話す、感謝する。はできてるだろ(涼子相手には)

清潔感も大丈夫なはず。

ー誠実か…

どうすれば伝わるんだろ………


「とりあえず、前髪どうにかするか!」



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