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再会初恋~絶対オトす~  作者: 阿衣真衣


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7/14

人生初…

―涼子Side


暁翔(あきと)が食事代は俺が出すからと言ってくれたけど、車に乗せてもらってるし、それでは私達の気が済まないと、それぞれ食事代はしっかり渡した。

先に凜を送って、私は家の近くのコンビニで降ろしてもらうことに。

「本当にここでいいの?」

「うん。すぐ近くだから。送ってくれてありがとね。それじゃ」

暁翔にお礼を言って、車を降りる。


車の中から顔を出した暁翔は、ニカッと笑いながら

「押しかけてごめんね。 でも、楽しかった」

「(謝るとは意外な…)うん。まあ、楽しかったね」

「また行こうね?」

「その手にはのらない」

「流れでうんって言うと思ったのに」


暁翔に手を振り、家に向かおうと振り向くと、こちらをじっと見ている女の人がいた。

(? 知り合いかな?)

チラッと見ると、女性は怒っているような顔をしている。

(え? なんかヤバい人? 目合わさないようにしないと…武器は持ってなさそうだけど…)

女性の行動に注意しながら、なるべく距離をとって歩こうと少し体の向きを変えた。


すると突然女性が走り出し、私のところへ。

(やばっ…)咄嗟にカバンを抱きしめ、体を守る。これなら、もし刺されても……

―バチン 

すぐ近くで音がするなと思うと、前を向いていたはずの顔が右を向いていた。

(……は?)

ゆっくり顔の位置を戻すと、さっきの女性が今度は泣きそうな顔で私を睨んでいた。


ヒリヒリ、左頬に痛みを感じる…。

(は?何が起きた? これは、いわゆるビンタってやつ?でも何でこの人に叩かれないといけないの? 

 通り魔? 怖っ… それか、知らないうちに恨まれてた? だとしても、いきなり叩く?)

状況が飲み込めず、怖いのか、苛ついているのか自分でも分からなくなった。

ただ、自分の心臓がドッドッドと脈を打っているのだけは感じた。


「あんたが…暁翔の浮気相手?」


(…………はい? 誰の何て?)

「あの―」

「涼子!大丈夫か!? おい!何してんだよ!」

震える声で言われて、聞き間違いかと聞き直そうとすると、車から暁翔が出てきていた。

女性は私の横を通り過ぎると、暁翔の元へ。

「暁翔! 急に別れるって言ったのは、こいつのせい? 私、別れたつもりないけど!」

「俺は…」


二人のやりとりを聞いて、なんとなく状況がつかめてきた

(あぁ…なるほど。この人は勘違いして、それで私は叩かれたという訳か。私は、巻き込まれたのか… 

 うん。納得いかん!)

後ろで修羅場を繰り広げる二人に、振り向いて声をかける。

「あの、私はただの同級生で、たまたま会ってご飯に行っただけです。

 私の友人も一緒で三人で行きました。それで彼が送ってくれたんです。

 だけど、私も彼に彼女さんがいないか、きちんと確認すべきでした。誤解を与えてすみません。

 余計なお世話かもしれませんが、お二人でゆっくりお話してください。

 それでは、私はここで失礼します」


正直、勘違いで叩かれたのでキレそうだったけど、それだとさらに状況が悪化しそうだったので、必死に押さえた。

私の淡々とした態度に二人が驚いているうちに、ダッシュで帰る。

(ビンタなんて一生されないと思ってたのに! ビンタされた後って、どう対処すれば良いの? とりあえず冷やす? グーじゃなくてよかったぁ。それにしても、よく冷静に対応できたなぁ……)

家に向かいながら、意外にも冷静に振る舞えた自分を賞賛していた。


その後、家に帰ってすぐ冷やした。

(ドラマとかでビンタされた後って、こんなって冷やしてるのかなぁ)

自分には無縁だと思っていた修羅場に巻き込まれ、くだらないことを考えてしまう。



家に着いて1時間後、着信音が鳴った。見ると、暁翔からだ。

(電話に出る元気はないかな…)

しばらく鳴っていたけど、取らずにいると鳴り止んだ。

ピロン。

今度は、暁翔からメッセージが来た。


「こんな文章送れるんだ…」


そこには、私を心配する言葉と謝罪の言。そして、どうして彼女が私を叩いたのか。それから、彼女としっかり話をして、別れることに納得してくれたことが丁寧に書いてあった。

「うん、これは完全に暁翔が悪い」

自分が別れるって言ったら、それで終わり?それは、彼女も納得しないでしょ。

まあ、話を聞きもせずに私のことを叩いた彼女もどうかと思うけど…。


メッセージの中で何度も繰り返される謝罪の言葉を見ていると、落ち込んでいる暁翔の顔が浮かんだ…。

「さて…」

…この場合、返信する?それともしない?

もう会うこともないだろうけど、無視するのは何か引っかかるし……。

とりあえず、腫れていないことは言った方がいいかな?


暁翔からのメッセージを読み返しながら、返信の文字を打つ。

(何で私がこんなに気を遣わないといけないんだろう)

「これでいいかな」

自分の打った文を読んで、こいついい子ぶってるな~と思ったけど、何も送らないでモヤモヤするよりは、ましだと送信を押した。


「よし、これでスッキリ!」




―暁翔Side


(最悪だ…最低だ…)

自分のいいかげんさに、こんなに呆れたことはない。

自分で自分を本気で殴りたいと思ったのは、人生初かもしれない…。


◆


さっきまでの楽しい時間は夢だったんじゃないかと思いながら、家に向かう涼子の後ろ姿を見ていた。

すると、涼子の進行方向から見覚えある女が歩いてきた…

(あれは…)そう思ったとき…


(イマ、なにがおこった? りょうこがタタカレタ?)

突然の出来事に、ドクンと心臓はじめ全身の血管の脈を感じるような、そして血の気が引いていくような気持ち悪い感覚。頭は真っ白。 

慌てて車を飛び出し、涼子の元へ駆け寄る。

「涼子!大丈夫か!? おい!何してんだよ!」

近寄ると、涼子を叩いたのは昨日別れたはずの元カノだった…


「暁翔! 急に別れるって言ったのは、こいつのせい? 私、別れたつもりないけど!」

「俺は…」

昨日メッセージで一方的に別れることを伝えた。

納得してなかったみたいだったけど、時間が経てば大丈夫だろう。もう会わないし、連絡もしなかったら俺のことは忘れるだろうと思ってた。

俺も、これまで元カノから「別れたい」と言われたときは「了解」って感じで何とも思わなかった。

そういう軽いノリでしか付き合ったことなかったし、軽そうな子としか付き合わなかった。


涼子に声をかけたいけど、彼女の前でそんなことをしたら、また涼子に怒りが向けられるかもしれない。

どうにか落ち着けようとしていると、涼子が深呼吸をして淡々と話し始めた。


俺はそれをただ聞くしか出来なかった。

(急に叩かれて驚いて、怖かったかもしれないのに…)

言い終えると、涼子は顔を上げることなく走って行ってしまった……。


涼子の話を聞いていた彼女も落ち着きを取り戻したようで、二人で話し合うことに。


「別れる言えば、それで終わりだと思ってた。

 納得してなかったのに、自分一人で解決して、身勝手だった。ごめんなさい」

「……暁翔が真剣に謝るの初めて聞いた。

 デートに遅刻したときも、約束破って私が怒っても、こんな真剣に謝らなかった…」

確かに。今まで、とりあえず「ごめん」って言ってモノを渡したり、埋め合わせをして機嫌を取ればいいと思ってた。

(最低だな…)

彼女に言われるまで気が付かなかった。


「本当にごめん…」

静かな車内に自分の情けない声だけが聞こえる。

「一応、聞いときたいんだけど、何で別れたいの?」

「…好きな人がいる」

「そっか…(多分、私が叩いちゃった子だよね…) もしその人に振られたら、私とより戻す?」

「いや、付き合うまで粘る」


「(こんな顔見たことない…ガチじゃん)……わかった。より戻したくても無理だね。

 ……あー!ガチで振られて、嫌われればいいのに!その子に付き合わない方がいいって言おうかな!

 (固まってるし…)暁翔が悪いから!私の分まで、あの子に謝ってね! じゃ、応援しないから」

捨てセリフを吐きながら、車のドアをバンっと閉じて彼女は帰っていったけど、その姿を見送ることはしなかった。


正直、彼女と話をしていても頭の中は涼子のことでいっぱいだった。

ビンタなんてされたことないだろ。腫れてないかな。ちゃんと家に帰れたかな。

勘違いされて、怒って泣いてないかな。 


もう一緒にご飯行ってくれないかもな。飲みに行ってみたかったな。

もう顔も見たくないとか、話もしたくないとか、すでにブロックしてたりとか…

画面に映し出されている『青井涼子』の文字を見て、躊躇う。

(電話するか…メッセージにするか…。謝るんだから、やっぱ電話だよな…)

呼び出し音は鳴るが、電話は取ってもらえなかった…。


「やっぱ嫌われたかぁ…」

それでも、気持ちが伝わるようにメッセージを送った。何度も「ごめん」と思いながら…

「これで読まれなかったら、ブロックされてるよなぁ…」

送って時間が経つごとに、消えたくなった……。

ピロン 

通知音に反応して、体を起こす。


ドッドッドッ…

シンとした部屋に、自分の心臓の音だけがハッキリ聞こえた。

「ふぅ…」小さく息を吐き、震える手でメッセージを開く―


〈さっきの彼女は大丈夫だった?

 きちんと話し合って解決したならよかったけど、これからは、自分のためにも相手のためにも気を付けないとね。

 相手が私だったからまだよかったけど、大切な人の時だったら一生後悔するよ。

 あと、顔も腫れていないのでご心配なく〉


涼子からのメッセージを読んで、何度も刺された気持ちになった。

叩いた相手のことを気にかけて、俺の身の振り方を諭す。

元カノみたいに怒鳴って罵られていた方が何百倍もマシだ…


“大切な人”だったら……

「マジでそれな…」



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