成人式
―麻琴Side
「久しぶり~」「懐かしい~」「えっ○○!? 雰囲気変わったね」「また可愛くなってるじゃん」「今何やってるの?」
華やかな振り袖姿に、ピシッと決めたスーツ姿。
五年ぶりに集まった同級生は、あまり変わらない人もいれば、背が伸びていたり、髪を染めていたり、メイクで印象が違ったりと変化を感じる人もいる。
声をかけたり、かけられりしながら式の開始まで、思い出話に花を咲かせたり近況を報告し合った。
それぞれで盛り上がっていると、急に違うざわめき方に。
一緒に話していた友だちも、そのことに気付いたのか、みんなの様子を伺い一点を見つめる。
「あれって、赤座くん?」「暁翔くん、かっこよくなってない?」
うっすらストライプの入った黒いスーツは彼のスタイルを際立たせ、中のシャツは髪と同じ赤で存在感抜群。黒いネクタイは緩められていて、全体的に着崩されているが妙に様になっている。
「チャラいけどいいね」「そこがいいんだよ~」
うちの地元はヤンチャ系もまあまあいて、そういう人に憧れる女子も少なくなかった。
(相変わらず、みんなチャラい系とか、ヤンキー系好きなのね~。 何がいいのか…)
今一緒に話している子たちも、暁翔に憧れていた時期があったらしい。
じーっと暁翔を見ながら、きゃっきゃっと楽しそうに笑って腕をばたつかせている。
「そういえば、昨日暁翔に会ったよ」
「え!マジで!?」「なんでそれを早く言わないの!」「いいなぁ どこで?」
肩を掴まれ思いっきり揺らされた。
「(え、それってそんな重要なこと?)ごめん、忘れてた。えっと―」
昨日のことを話すと、私の話にため息をつく三人。
「もったいない!」「飲みに行けばよかったのに!」「私も歩けばよかった」
(そんなこと言われても…)
「ホント。 こんなイケメンと一緒に飲めるチャンスだったのに」
急に後ろから声がして振り向くと、いつの間にか暁翔が私の真後ろに立っていた。
三人は両手で口を押さえて、キラキラした目で暁翔を見ている。
「びっくりした……。いつの間に…」
「それより、どう? 俺の格好?」
楽しそうに笑いながら両手を広げてクルッと回る暁翔。なんか、軽く拍手する音が聞こえる。
「うん。どっかのアイドルかホストみたい」
見たままの感想を伝えると、三人に腕を掴まれた。
「ちょっと、それは褒めてるの?」「かっこいいって言いなさいよ」「普通に「似合ってるね」でいいでしょ」
(? 具体的な例を出して褒めたつもりだったんだけど)
「それは、どういう意味?」
暁翔に聞かれて、私はもう一度上から下まで見た。
「(私は褒めたつもりだったんだけど…)そうだね、似合っててかっこいいよ」
二人の意見をまとめると、これが返事として正解なんだろう。
私がそう言うと、暁翔の顔がみるみるうちに赤くなっていった。
(もしかして…)
「あ、ありがと。涼子も―」
「暁翔!もしかして酔ってるんじゃない? 昨日、飲みに行ったから。回ったときに、酔いも回ったんじゃ…」
「「「「………え?」」」」
―暁翔Side
最初、アイドルかホストみたいって言われたときは褒め言葉なのか、何なのか分からなかった。
でもそのあと似合ってるって言ってもらえて…そこまではよかった。
ただ、問題はその次。
酔ってるって……。まあ、昨日飲んだこと知ってるからそう思ったんだろうけど……
(何でだろ。かっこいいなんて言われ慣れてるのに、涼子に言われると、なんか違う……)
「そろそろ式を始めるので座ってください。クラスのところだったら席は自由でいいから」
司会の言葉に、立ち話をしていたみんなが続々と座り出す。
涼子も、さっき話していた友だちと一緒に座っていた。
「涼子」
声をかけながらさりげなく隣に座ると、少し心配そうに俺の顔を見て
「暁翔、もう酔いは醒めた?」
と聞いてきた。隣では友だちがガックリ肩を落としている。
「……(酔ってねぇよ)ああ、大丈夫」
「よかった」
安心したように微笑むと、前を向く。
俺は涼子の横顔を眺めた。
(昨日より化粧濃いな… なんか、大人っぽい。振り袖似合ってる。
パーティーはどんな格好で来るのかな楽しみだなぁ)
式典が終わって、中学時代のスライドショーを見ることに。
みんな近くで見ようと移動し、床に座ったり椅子を前に持って行ったりしてバラバラ状態に。
「じゃあ、みんなが見える位置に着いたってことで、再生します」
その瞬間、涼子の椅子にピッタリと自分の椅子をくっつける。
急に俺が近づいたからか、驚いていた。
「なんか、変に反射して見えなかったから。いいよね?」
たった数㎝で変わるか?と変に思われたかもしれないけど、涼子は「ああ…うん」と、特に気にしていなかった。
中学時代の写真を見ながら、みんなで懐かしんでたくさん笑い声が聞こえる。
涼子も隣で楽しそうに、時折友だちと話しながら笑っていた。
「かわいいな…」
思わず口から出てしまった。
声が聞こえたのか、涼子がチラッと俺を見た。その瞬間、カーッと身体が熱くなった。
なんか恥ずい……
「ホント、みんな可愛いね~」
ニコッと笑いながら俺に言うと、また目線をスライドショーに戻して笑顔で見る涼子。
俺が写真を見て言ったと思ったらしい。
(そうじゃないけど……まあ、いいか)
―涼子Side
全部のプログラムが終わって、クラスごとに集合写真を撮って片付けへ。
準備に関われなかったので、せめて片づけだけはと、パイプ椅子を片づけたり、床に敷いていたシートを折りたたんだり、軽くモップで拭いたり。
振り袖が汚れないように、間違って破ったりしないように気を付けながら、自分にできることを考えて動いた。
(しゃがみづらいし、足袋で滑りそうになるし…今だけ振り袖脱いで裸足になりたい)
このあと部活で体育館を使うということなので後輩に迷惑はかけられない。
写真を撮っている同級生に「ごめんね…」と言いながら、片付けを進める。
片づけも終わり、外を出るとみんな集まっていた。
「涼子おつかれ~。 めっちゃ動いてたけど大丈夫?」
「うん。結構動けるもんだね。みんなはたくさん写真撮れた?」
「撮れたよ~。涼子も撮ればよかったのに」
「私はいいよ。どうせ、一緒に撮る人もいないし。あ、あとで写真送ってー」
(仲いいメンバーの写真さえ撮れれば、後は見るだけでいいし)
私もそうだけど、みんなも名残惜しくて、外でも少し写真を撮る。すると、あちこちからパーティーの話が聞こえてきた。
「涼子、パーティー来ないんだっけ?」
「うん。高校のクラス会に参加するから」
「そっか~。パーティーの写真たくさん送るね」
「よろしくお願いし―」
「それってどこ?」
さっきまで前の方で女の子に囲まれていた暁翔が話に割り込んできた。
「何が?」
「高校のクラス会」
「なんで?」
なんか真剣…というか、さっきまでずっとヘラヘラしていたのに、今はそれがなくて、少し変な感じがする。
「……いや…、近かったら会うかもしれないじゃん?」
「ああ、それなら心配しなくて大丈夫。パーティーの場所とは離れてるから」
「それでも、どこ?何時まで?」
?(何が気になるんだろう…。よく分からんけど、さっさと言って終わらせよ)
周りからの視線に耐えられなくて、とりあえず暁翔に場所と時間を伝えた。
「わかった」
聞けて満足したのか、ニコッと笑うとそのまま元いた場所に戻って行った。
「暁翔くん、何だったんだろうね?」
「涼子のこと気にしてるんじゃない?」
「まさか~ないない。そうやってすぐ変な勘違いしないの」
(あんなにモテてるのに。たまたま聞こえて気になっただけでしょ。 それか…)
「ねぇ、もしかしてだけどさ……。暁翔、私の高校の時の同級生狙ってるってことない?」
そう言うと、さっきまでニヤニヤしていた二人は目をぱちくりさせながら「へ?」と素っ頓狂な声を出した。




