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再会初恋~絶対オトす~  作者: 阿衣真衣


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2/14

隣の席

中学時代、俺はいわゆる”ヤンキー”だった。

一、二年は、まあちょこちょこって感じだったけど、三年になると授業もサボりまくって、ただ遊ぶためだけに学校に行っていた。

学校に行かないで、外で遊ぶなんてこともしょっちゅう。


みんな外に遊びに行ってたけど、その日は何となくみんなといる気分じゃなくて、学校で一人フラフラしてた。

でも、そのうちそれも飽きてきて、たまには授業に出てみるかと、気まぐれに教室に行ってみた。

授業中だったし、二週間ぶりに教室に入ったから、みんな驚いて一斉に俺を見た。


久しぶりすぎて自分がどの席か分かんなかったけど、一つだけ席が空いててそこに座った。

隣は涼子(りょうこ)だった。

何をしていたか聞くと、教科書の英単語を辞書で調べて、ペアで翻訳をしていたと。

だけど、俺がいなかったから涼子は一人でやっていたらしい。

(面倒くさそ~。どうせ英語とか知らないし。やっぱりサボろ)


椅子に座って一分もしないうちに立とうとすると、

「ちょっと待った」

涼子に腕を掴まれた。なんか逆らえなくてまた椅子に腰を下ろす。

「私が調べた単語の意味をここにメモして」

何も持ってきていない俺に、涼子は自分のルーズリーフとペンを俺の机に置いた。


(まあ、どうせ暇だしいっか)

言われた通り書いたのに、字が汚くて読めないと言われた。

(書いた俺もわかんない)

やる気のない俺に、涼子は辞書を渡して、単語を探してみてと言った。

「どうやって探せばいいか分かんない」

そういう俺に涼子は嫌な顔一つせず教えてくれ、俺が意味を読むと

「ありがとう」と一回、一回お礼を言ってくれて、それがめっちゃ嬉しかった。


一人でやった方が早いのに、俺が出来ることをさせてくれて、お礼も言ってくれて…

(一人でふらふら遊ぶより、よかったな)

初めて授業に出て楽しいと思った。


それから、たまに授業に参加するように。

音読の時は一緒に教科書を見て、今どこを読んでいるのか指でなぞってくれて、漢字の読みで止まったときも一つ一つ教えてくれた。

歴史の授業で写真を見てくだらないことを言ったり、描いた絵を見せると、「馬鹿じゃないの」と言いながら笑ってくれた。


どれだけちょっかいを出しても、怒ったり無視したりしないで反応してくれたことが、なんだか嬉しくて。

面倒見がいいっていうか、俺みたいな奴にも普通に接してくれた。

周りから見たら正反対だけど、意外にも気が合うというか……不思議と居心地がよくて、小言も言われたけど別に苛つくことはなかった。

そして、次第に授業に参加する頻度が増えていった。



いつもより早めに教室に入ると、みんなが姿勢を正して目をつぶっている。

そんな中席に座ると、「赤座(あかざ)も黙想しなさい」って言われたけど普通に無視。

目をつぶっている涼子の前で手を振ってみたり、肩をちょんちょんと触ったりしたけど無反応。

(そうだ!目開けたらどんな反応するかな~)


「黙想止め」

そっと目を開けた涼子は、俺の顔が目の前にあったのに驚いたのか、ビクッてなって、目を丸くして顔を後ろに引いた。

「びっくりした?」

何て言うかな~と顔を覗き込んでいると、

「何してんの?」

眉をひそめて、少し怒っているような声だった。

「(あれ?)怒った?」


涼子はフイッと顔をそらして「普通に恥ずいわ」とボソッと呟いた。

(あの顔と声は恥ずかしさを隠してたのか…)

きゅん(あれ?なんだこれ…)


次の授業で同じ事をすると、涼子は目を開ける前に横を向いた。

(あれ?)

そして横目で、俺を見て「またやると思った」とドヤ顔。

「クソッ(やられた)」



◆


(あれ? 席が違う)

三日ぶりに教室に入ると、席が替わっていた。

月が変わったから席替えをしたらしい。


俺の隣は、涼子からギャルっぽいグループにいる女子に。

(まあ、俺にはこっちの方が合ってるかも)

席に座って、涼子の席を見た。

(涼子の隣は、啓太(けいた)か…)

啓太は、俺たちのグループにいたけど、その内の一人と喧嘩して最近はつるんでいない。

別に俺は仲が悪いとかはないけど。


「5分時間をあげるので、問い1~3まで解いてみてください。」

みんなが一斉にノートに書き出す。

「ねぇ、紙とペン貸して~」

隣の女子に言うと、一瞬ポカンとして

「え~暁翔(あきと)、問題解くつもりなの?」

と笑って言ってきた。

「あげても落書きするだけでしょ~」


確かに、問題を解くつもりはさらさらない。でも涼子はいつも何も言わずくれた。

何も持ってきていない俺に「何しに学校来てんだ…」って呆れながらも、教科書を見せてくれたり、俺が「貸して」って言ったら「一枚だけならあげる」と言って渡してくれた。


一度も「どうせ落書きでしょ」とかは言わなかった。(思ってたかもしれないけど)

俺が一回、休み時間に「落書きするからもう一枚ちょうだい」って言った時は、「落書きする人にあげる紙はない」とさすがに断られたけど、その時だって、

「さっきの紙、まだ裏に書けるでしょ」「まだここに書ける」「せっかくあげたんだから、無駄なく使ってよ」と突き放しはしなかった。


(だよな…。これが普通の反応だ)

「まあ、暁翔だったらいいよ~。 はい、どうぞ」

「やっぱいいや」

「え?いいの? もしかして怒った?」

「別に~」


チラッと通路を挟んで隣の斜め前にいる涼子の席を見ると、啓太にペンを渡していた。

「サンキュ。シャー芯切らしちゃってさ」

「シャー芯0.7でしょ? 私0.5しか持ってないからさ。一日これ使っていいよ。けど、なくさないでね」

「ありがと。助かる」

イラッ(…面白くない)

二人のやりとりを見ると、無性に苛ついて教室を出た。


それからまた、授業に出る頻度が減った。



◆


「6時間目、席替えだよ~。 誰の隣なれるかな~」

「えー…私、今の席気に入ってるのにな~」

同じクラスの女子が話しているのが聞こえた。

(席替えか…)

席なんてどうでもいいと思っていたのに、気になって仕方なかった。


「なぁ、暁翔も帰るだろ?」

一緒にいた拓也(たくや)が、ダルそうな声で言ってくる。

「いや、ちょっと教室行ってくる」

「はぁ?どうしたんだよ。 俺は帰るからな!」

後ろで騒いでいる拓也に、振り向きはせず「おう」と言って手を振る。


ワイワイ教室が騒がしい中、席替えのくじ引きが始まった。

(俺は13番…真ん中らへんの席か。 まあ、場所はどうでもいいや。問題は…)

「じゃあ、くじで引いた番号の場所に机を移動してください」

みんなが机を持って移動しはじめる中、俺は涼子の移動する場所を見ていた。


(後ろのドアの所か。よし)

ガタッ「お、隣涼子か~。 またよろしくな」

涼子の隣の奴が来る前に机を置いた。涼子は少し驚いていたけど、ニコッと笑ってくれた。

「うん。よろしく」


「あの、赤座くん……そこは…」

俺の後ろで机を持って戸惑っている男子。本当はこいつがここの席だったんだろう。

「ここは俺の席。お前は13番に座れ」

本当は俺が座るはずだった場所を指さす。


やりとりを見ていた涼子が、じとーっと俺に疑いの目を向けて来た。

「? もしかして、本当は席違うんじゃない?暁翔見間違えてない?」

「何言ってんだよ。俺はくじでここになったの! な?」

(言ってる意味分かるよな? 空気読めよ)

「あっ、うん。 俺が勘違いしてたみたい…」

俺の訴えに気付いたか、ビビったか、そいつは大人しく13番の席に移動していった。


涼子は首を傾げて、俺とそいつの顔を交互に見ていたけど、「まあ、いいか」と椅子を下ろして座った。

俺も椅子に座って、机に頬杖をつきながら涼子の横顔を見る。

(なんで俺、こんなに必死になったんだろ)

今まで座りもしない席のことなんて、どうでもよかったのに。よく分からなかったけど、隣に座る涼子の顔を見ると気分がよかった。


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