近づく
―涼子Side
公園で話をした後、ファミレスで夕食を食べることに。
「食べ物何が好き?」「好きな色は?」「Haru意外には何聴くの?」
宣言通り、遠慮なく色々質問してきた。
とりあえず答えられるものは答えていく。
「ねぇ、俺の見た目はタイプ? どっか変えてほしいとかある?服装とか。
前に誠実な人がいいって言ってたけど、具体的にはどんな?他には?こんな人は絶対イヤとかある?」
「見た目は今のままでいいと思う。とりあえず、奇抜過ぎなければ…
というか、無理して私のタイプに合わせてほしいとも思わないし。逆に、私が暁翔のタイプに無理して合わせたら、どう思う?」
私がそう言うと、暁翔は少し考えて、
「別にタイプとかない。言ったら涼子がタイプだけど、無理はしてほしくない」
と平然と言った。
(っ…。よく平気でそんなこと…)
「…まっ、そういうこと」
とにかく、無理して合わせる必要はないということが伝わってくれてよかった。
今度は逆に私が同じような質問をしてみたけど、まともな答えは何も返ってこなかった…
暁翔はいつも嫌な顔せず送ってくれるけど大変じゃないか聞いた。そしたら、
「好きな子と長く一緒にいれるのに大変とか思わないし、そもそも送らないわけなくない?」
(すごっ…)
さらっと、そんなことを言う暁翔に不覚にも、ときめいてしまった。
◇
翌日から「おはよう」「おやすみ」のメッセージが届くようになり、毎日やりとりするように。
仕事が休みの日も変わらずお店に来てくれて、私のバイトが終わると一緒に帰ってくれるんだけど、前より距離が近い…気がする。
嫌ではないけど、落ち着かない。
そうして過ごしているうちに、あっという間にバレンタイン前日に。
お店に来ていた天音と麻琴ちゃんは、学校でのバレンタインの話をしていた。
友だちと交換し合った、こういうお菓子を作っている子がいた、ラッピングが可愛かったなどなど。
お客さんは二人の他に、よく来てくれる女子大生、最近来てくれる大学生の男の子、常連のご夫婦がいて、穏やかな空気が漂っていた。
(そういえば、あの大学生の二人、別々だけどいつも隣のテーブル席に座ってるなぁ…
…もしかして?)
自分がそういう状況にあるからか、ついそんなことを考えてしまった。
―カラン
「いらっしゃいませ」
―暁翔Side
バレンタインまでにって言ったけど…
気持ちも知ってるし、前より積極的にいっているから、距離はそれなりに縮まったかなとも思ったよ?
でも、前日になっても普通なんだけど…。
いつも通りカウンターに座り、コーヒーを注文する。
隣の女子高生は学校でのバレンタインの話で盛り上がっていた。
「なんで、直接渡さなかったの?」
「え?だって別にお返しとかいらないし、そういうコーナーがあったから」
「あれは―」
(なるほど、その男の子も苦労してそうだな)
会話から察するに、たぶん男の子はこの子のこと好きなんだろうけど、この子は想われてるとは思ってないな。
この子が涼子みたいな鈍感ちゃんになる前に、そいつはもっと頑張らないと。
勝手に応援してるから頑張れ。
自分と同じ状況の顔も名前も知らない男の子を応援していると、涼子がコーヒーを運んできてくれた。
「どうぞ」
「ありがと」
(高校か…涼子も誰かにあげたりしたのかな? いや、好きな人いなかったって言ってたし…)
「ねぇ、涼子ちゃんの高校でのバレンタインの思い出ってある?」
(ビビった…。声に出したのかと思った…。でもナイス!聞いてくれてありがと~。それで?どうなんだ?)
下げた食器を片付ける涼子をじっと見ると、涼子は俺の顔を見て少し苦笑いしながら話し始めた。
(え?何その顔。 もしかして、何かあんの!?)
「あー……一つだけ」
「どんなの?」
聞き逃さないように耳に意識を集中させる。
「一年の時、小さいクッキーをたくさん作ったんだけど、美味しいって思ってもらえるか分かんないし、ラッピングも大変だな~って思って、それなら弁当の時におやつであげたら楽じゃん!って思ったからタッパーで持ってったの」
「雑すぎない?」
「あはは~。まあ、いつも一緒にお弁当食べてるメンバーだから、いいかなって。
それで、みんな美味しいって気に入ってくれたんだけど、そしたらいつの間にかタッパーが教室で回されてて、その時教室にいたみんなに食べてもらったってのが思い出かな」
はにかみながら話した涼子は、出来た料理を運びに行った。
(よかった~。男に渡したとかじゃなくて。いいな~手作りか。……ん?ちょっと待てよ。教室にいたみんなってことは…もしかして……?)
「ねえ、さっきのって男子も食べたってこと?お返しは?」
(何この子、俺の聞きたいこと全部聞いてくれるじゃん)
「食べてたけど、お返しなんてないない。そもそも小さいクッキー一枚でそんなの図々しいでしょ」
(…誰だその食べたやつ。一枚だとしても小さいチョコとか駄菓子とかあるだろ)
「どさくさに紛れて、十枚食べた人がいたかもよ~」
(許せん)
「それは分かんないけど、気に入ってくれたならよかったかな。完食してもらえないと持ち帰らないと行けなかったし。ま、二年からはちゃんと袋に入れたけどね」
「じゃあ、特定の男子にあげたとかはないの?」
「それはない。麻琴ちゃんみたいに、お世話になった男子もいないしね~」
「え!? あ…その……」
鈍感ちゃんは涼子に言われて、少し慌てていた。
(なんで人のには気付いてるんだよ……)
涼子が男にはあげたことないことと、思い出話は聞けたけど……今年は?そのことも聞いて欲しかった。
いや、俺が来る前にその話は終わってたのかも…
(というか俺、もらえんのか?)
―涼子Side
「おつかれさまでした」
扉を開けようとすると、外で待ってくれている暁翔が女性二人から声をかけられているのが見えた。
(またか…こんなに毎回声かけられる人っているんだ)
クラス会の時も、学校の門にいた時も、お店でコーヒーを飲んでいる時も、こうして私を待っている時も何度か声をかけられていた。
最初はすごいなって感心していたけど、いつからかモヤっとするように。
暁翔はまったく相手にしていないけど…それでも…
―カラン
扉を開けると、暁翔がすぐに笑顔で声をかけてくれた。
「おつかれ」
「…ありがと」
(さすがに自分でもわかる。気付いてる。だから…)
中学の自分に、こんな未来が待ってるって知ったら驚くだろうな~
「あり得ない!」って笑うかも。それか意外と「そうなの?」って嬉しそうにするかな?
「いつもありがとう」
家まで送ってくれた暁翔は、何だかソワソワしている。
「あのさ…」
「なに?」
聞くと、暁翔がシュンとした顔になった。
「…いや、なんでもない」
「そう?じゃ、またね」
「……うん」
暁翔が何を言いたかったか分かってたけど…ごめん。
―暁翔には、いつもしてもらってばかりだから、明日は自分から勇気を出して伝えたい。




