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再会初恋~絶対オトす~  作者: 阿衣真衣


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14/14

5年前は想像もしなかった未来

―暁翔Side


けっ…きょく、昨日何もなかった……。

今日は仕事って言ったから、渡すものとか言うことあったら昨日だと思うじゃん?

なのに……


昨日、涼子のバイト終わり、いつも通り家まで送った。

「いつも、ありがとう」

「(ん?それだけ? …何か渡すのとか…)あのさ…」

「なに?」

「(まさか、忘れてるとかないよな? でも、ここで俺から聞くのも…)…いや、なんでもない」

「? じゃ、またね」

「……うん」

そうして、ニコッと笑う涼子に力なく手を振った。



いつもと変わらない。

朝ライン送ったときも何にもないし……。

あれー…バレンタインまでに落とすって言ったけどなぁー。無理だったのかなぁー。

反応からしてめっちゃ脈ありだと思ったんだけどなぁー。

どっちの結果でも言うっていってた気がするけどなぁー。

仕事確認してから期限決めるんだったなぁー。昨日にしとけばよかったなぁー。

自分でも感情が分からず、心の中で棒読み。


仕事の休憩中にも通知がないかチェックしたけど、なかった。

「おつかれさまです」

「おつかれ~。さすが大量だ。モテる男は違うね~」

お客さんから貰ったバレンタインのプレゼントが入っている袋を見た店長がニコッと笑って言ってきた。

「ハハ……全部義理ですよ」

(どんだけ貰っても、その一個がないと……。義理だとしても、もらいたかったな~…一応は)


「わかんないよ~。じゃ、また明日よろしく」

「はい」

(あぁー…もう電話して、もう一回俺から言おうかなー…)

車に乗り、涼子に電話をかけようか悩んでいると着信が鳴った。

涼子かと思い名前も見ず電話をとる。

「はい」

「あっ、暁翔?俺だけど」


(んだよ…)

電話に出ると、この前涼子と一緒にいたときに会ったやつだった。

「なあ、今から飲みに行かない?」

「いや、俺これから用事あるし」

(マジで俺の周りは空気読めないやつばっかだな)

イライラして電話を切ろうと、スマホを耳から離したとき、

「え~そうなの? この前お前といた子も一緒にいるけど?」

「……は?」



―涼子Side


「よし」

暁翔に渡すクッキーといつものコーヒーを紙袋に入れて、暁翔の働いているお店へ向かった。

本当は昨日、お店に来るから渡そうと思ったけど、いつも来てもらってばかりだし、たまには私から行って驚かせたかった。

(多分、暁翔もそう思って昨日ソワソワしてたんだろうな。ついとぼけちゃって悪いことしたかも)

暁翔が出てくるまでお店の向かいにあるカフェで待つことに。

(連絡も送ったし)


どんどん距離が縮められて、少しずつ自覚させられた。

本当は前から気付いていたかもしれないけど、素直になれなかった。初めてだったから怖かったってのもある。

喜んでくれる…とは思うけど、やっぱりちょっと怖い。


何て言って渡そうかなと考えながら、ゆっくり飲み物を飲んでいると、

コンコン。座っている席のガラス窓が叩かれた。

もしかしてと思い顔を上げると……

(誰?)

男の人二人が私を見てニヤニヤしながら手を振っていた。

はじめは分からなかったけど、前に暁翔と一緒にいたときに会った人たちだと気づき、一応会釈をした。


二人が手を振って歩き出したので帰ったと思ったけど、お店に入ってきて向かいの席に一人、横に一人立って話しかけてきた。

(げっ…)

「前、暁翔と一緒にいた子だよね?」「暁翔と待ち合わせ?」

「いや、別に…」

(勝手に座って話しかけるなよ…)


一刻も二人と離れたくて、残っていた飲み物を一気に飲み干して立ち上がる。

「えーもう帰るの?」「もうちょっと話そうよ」

(話すこととかないし)

「失礼します」


二人は後ろから「ねぇねぇ」と言って、私と一緒に店から出てきた。

無視していると二人が私の前に立ち塞がる。

「無視するのはひどくない?」

(無視してるのにしつこくない?)

直接言えるほどの度胸はないけど、心の中では二人に対して強気だった。


「俺、暁翔に電話するね」

そう言って二人が目を離した隙に振り返ってダッシュした。

二人は、私が逃げても追いかけるつもりはなかったみたいで、「逃げられた~」と笑うと、反対方向へ向かって歩いて行った。

(よかった~……追いかけるほどしつこくなくて)

そのまま走って、反対側の暁翔のお店に向かうと、ちょうどお店の前に暁翔がスマホを握って立っていた。


「暁翔!」

声をかけると、ビクッと肩を上げて、目をこれでもかというほど見開いていた。

(そんな驚く?連絡したけど見てないのかな…)

「おつかれ」

「あ…あぁ…」

戸惑ったような表情に、何だか胸がズキッと痛んだ。

(仕事終わりに来るの迷惑だったかな。やっぱ、昨日の方がよかった?)


「仕事終わりに来てごめんね。一応連絡したんだけど…」

「いや、それは全然…嬉しいんだけど……え?連絡…? あ、仕事終わってから確認してなかった…ごめん」

「いや、こっちも急に来たし…」

少し気まずい空気が流れて、どうしようと思ったけど、私が話したいと言うと、近くのちょっとした広場に暁翔が案内してくれた。


「あいつらに何か言われたり、されなかった?」

「別に」

あの二人からの電話で私が一緒にいることを聞いて心配になった暁翔は、二人にどこにいるか聞いたけど、その隙に私が逃げたと聞いて、何かされたんじゃないかって余計に心配になったみたい。

だから、私が声をかけた時あんな表情をしてたんだ…

一応、カフェで二人に会った流れと逃げたことを話した。


「嫌すぎてダッシュした。 追いかけてこなくて助かったけど」

「それはよかった」

暁翔が私の頭をポンポンと撫でた。

ドキドキ。鼓動が速くなる。顔も噴火しそうなくらい熱い。

(わかってる。ちゃんと伝える)


目を軽く閉じて深呼吸すると、持っていた紙袋をそっと差し出した。

「これ、渡したくて」

「……あ、ありがとう」

暁翔はそれを戸惑いながら受け取る。

(渡したら喜んでくれるって自惚れてたかも。 それか、昨日渡さない時点で呆れられたんじゃ…)

「…嬉しくなかった?」


そう聞くと、暁翔は息が止まったような音を出してしゃがみ込んだ。

「…―っ。よかったぁ~。もらえないのかと思ってた」

急にしゃがみ込んだ暁翔に驚いたけど、同じ目線になるように、そっとしゃがんで顔を見る。

すると、幸せだと言わんばかりのいつも以上にニコニコの笑顔だった。


ドクン

(あれ、言いたいこと色々考えてたんだけどな… 何だっけ…)

返事遅くなってごめん、思ってくれてありがとう、私も同じ気持ち、付き合ってください…色々考えていた言葉が全部吹き飛んだ。

「……好きだよ」



―暁翔Side


「…………え?」

涼子からバレンタインをもらえて感激していると、同じ目線になった涼子がふわっと笑いながら言った言葉に、これは全部夢かなと思った。

「喜んでくれてよかった。あのさ…私―」

目の前で笑う顔を見ると、自然と手が涼子の頬に伸びていき――


「………これは?」

何かに当たったと思い目を開けると、視界には涼子の持っていたカバンだけが映っていた。

「いやいやいや、急に何!?」

涼子の焦っている声が聞こえる。

「そういう雰囲気だったから」

視界からカバンが消えると、顔が埋まる勢いで涼子が縮こまって震えていた。

(これは…恥ずかしがってるのか、怒っているのか……まさか、泣いてる?やらかしたー……)


「今、泣いてる?」

首を振っている。

「怒ってる?」

フルフル

「…恥ずかしい?」

少し間を置いてコクンと頷いて、さっきよりも顔が埋まった。

(何その反応!可愛いんだけど!)


「…あのさ、聞き間違いじゃなかったら、さっき俺のこと好きって言ってくれた?」

顔は埋まっているものの、頷いているのはわかった。

「それは、付き合ってくれるってこと?」

コクコクコク。

(…可愛すぎる! でも、このまま顔が見れないってのも)

グッと涼子の腕を引っ張り立ち上がる。

驚いた涼子の顔は、今まで見たことないくらい真っ赤だった。

「ありがと!めっちゃ嬉しい!あと可愛すぎ!」



そのまま手を繋いで駐車場に向かう。

「それで?俺のどこが好きなの?」

「…素直なとこ、優しいとこ、笑うとこ、覚えていてくれるとこ? あとは…」

俺がうんうんと聞くと、照れながらもポツリ、ポツリと言ってくれる。

「あとは?」

「……好きって言ってくれたところ」

恥ずかしいのか声はすごく小さかったけど、ちゃんと聞こえた。

「…―っ、ありがと!」

嬉しすぎて顔はずっとニヤけている、それくらい本当に嬉しい。


「こちらこそ。そして、よろしくお願いします」

「よろしく!」

ギュッと抱きしめると、驚いた涼子が「わっ」とあまり可愛くない声を出したけど、それが可愛かった。

そして、恐る恐るだけど背中に手を回してキュッと洋服を掴んだ。

(幸せってこういうことか~)


「もういっぱい、いっぱいです!」

そう言って三秒で逃げられたけど、今までのどんな時間よりも最高に幸せだった。


車に乗ると、早速涼子から貰ったバレンタインのプレゼントを開けた。

「クッキーだ!作ったの?」

「一応…。昨日、食べたそうにしてたから…」

「嬉しい~。今一枚食べよ……。 うまっ!」

「よかった」


俺がクッキーを食べて車を発進させると、涼子が後部座席に置かれたプレゼントを見た。

「それにしても、たくさん貰ったね。すごい…」

「彼氏がモテて嫉妬した?」

(まあ、そんなのは、まだ無さそうだよな)

「…そうだね。全くない訳ではない」

「え!?そうなの? マジで?」

「うん。暁翔が声かけられるたび、すごいなぁって思うけど、嫉妬…もしてたよ」


(素直過ぎない? 照れてそんなこと言わないと思ってた)

「俺も嫉妬するよ」

「? そんな場面は一生ないと思うけど」

「あるよ!つーか、してたよ!」

「?」

(マジで分かってなさそう)

「まず、成人式の日に高校のクラス会に参加して二次会誘ってきたやつに。俺の勘違いだったけど、お姉さんの旦那さんと歩いてるのを見たとき、高校の時クッキーを食べたやつ。さっきのだって、あいつらと一緒にいるって聞いて嫉妬っていうか…心配した」

(中学の時もあったけど、かっこ悪いからそれは黙っておこう)


「あと、好きって言ってるアニメのキャラ!あの男が一番だな」

俺の言ったことにため息をつきながらコテンと首を傾げる。

「推しだよ?あくまでキャラクターだよ?」

「それでも! 好きなのは…まあ、いいけど嫉妬はする」

「わかった。暁翔の前ではなるべく見ないよう、話さないよう心がける」

(それは俺を優先してくれたってことだよな! よし、勝った!)


「で、さっきカバンで塞がれた件だけど」

「! 忘れてよ!」

「いや、忘れない。キスしようとして嫌がられた俺は傷ついた」

「それはごめんだけど…初心者の私にはいきなり過ぎる!本当は告白するのでいっぱい、いっぱいだったのに…だ、抱きしめられて…もうキャパオーバー!」

(仕方ないか)「じゃあ、いつになったらいいの?」

(付き合うまでに一ヶ月待ったんだから、キスなんて三日でも、一週間でも待ちますよ)


「……ホワイトデー?」

「ダメ、長い! 一ヶ月なんて……ああ、でもそれまで我慢したら今日みたいに涼子から来てくれるのか~。それは悩むな~」

「…………あ、家着いた。送ってくれてありがと」

(逃げたか)

わざとらしく指さし、車から出て軽く走る涼子の後ろ姿に満面の笑みで言う。

「涼子!またね」

「うん。ま(・)た(・)ね(・)」



◆◇


「ここから飛び降りるから見といて」

「は?ちょっ…」

そう言って彼は小さくて身軽な体で、ひょいっと窓から飛び降りた。

この場には私と彼だけ。もし、彼が着地に失敗して骨折したり、頭を打ったり、血を流したら……

ドクドクと不吉な音をたてる心臓を押さえて、下を見るとニカッと笑って手を振っていた。

「どう?すごくない?」

(成功したからいいけど、あれで骨折とか頭打ったりしたらどうすんの!?もう二度とやらないでほしい)


戸惑う彼女を無視して、俺は二階くらいの高さから飛び降りて無事着地成功。

すごいって笑ってるかな。驚いてるかな。反応が気になって、上から見ていた彼女に手を振った。

でも彼女は、焦っているような、怒っているような…でも、安心しているような。とにかく、思っていた顔じゃなかった。

「……すごいけど、目の前で怪我されたらトラウマなるから!やるのは勝手だけど、私の前では二度とやらないで!」

(………俺を心配してたんだ。てか、やるのはいいんだ)



5年後に再会した相手と初恋を知ることになって、こんな未来が待っているなんて、この時の二人は微塵も思ってないだろう。


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