はっきりさせたい
―暁翔Side
(よかった)
涼子が俺と二人なのが嫌なわけではなくて安心した。
食べてるときは、わりと普通だったし。
涼子を待っている間、この後何しようか考えていた。
(見たい店とかあるかな。 このあと時間あったらドライブとか…)
初めて二人で出かけられたことが嬉しくて、完全に浮かれていた。
「あれ?暁翔じゃん!」
(げっ…)
名前を呼ばれ顔を上げると、中学卒業してからよく遊んでいたやつらが手を振って近づいてきた。
男三人、女二人。男二人は知ってるけど、あとは知らない。
「めっちゃ雰囲気変わったな。イメチェン?」「最近、誘っても全然来ないじゃん」「何してんの?一人?」「え、友だち?イケメンだね」
成人式の前までよく飲んだり、休みの日は遊んだりしていたけど、涼子と会ってからは全く行かなくなって、顔を見るのも久しぶり。
「俺ら今から飲みに行くから、暁翔も来いよ」「行こ行こ!彼女もいるんだったら一緒でいいしさ」
前までだったら、その場で誘われたら行ってたし、彼女も連れて行ってたけど、涼子と二人の時間を邪魔されたくないし、会わせたくもない。
俺が無視していると、女二人が腕にぴったりくっついて、初対面の俺の顔をジロジロ見てきた。
「えぇー 彼女いるの?」「いなかったら付き合おー」
と、馴れ馴れしく言ってくる。
(あぁ……これが涼子だったらな~)
一緒に歩くときも少し後ろだったり、カバンとかで距離とるし。
正面で俺が見てても涼子はチラッとしか見ない。たまに見過ぎて怒られた。
ちょっとぶつかっただけでも謝るし、俺が近いとビビるし。
涼子のことを考えると、自然と笑いがこぼれた。
「えっ、笑った顔意外とかわいいんだけど」「行くってこと?」
(まだいたのかよ…)
何を勘違いしたのか、俺も行くと思い込んで、どこに飲みに行くか勝手に話し始めた。
(早く涼子戻ってこないかな…)
俯いていた顔をあげると、柱から顔だけ出してこっちをチラチラ見ている涼子が。
(え?何それ。かわいいんだけど。いつからいたんだろ。
まぁ、この状況じゃ声かけられないよな~ 迎えに行ってあげよっ!)
涼子の所に行こうと動き出すと、それに気付いた涼子が俺を制止するように手を前に伸ばした。
?(なんだ?)
涼子がスマホを操作し始めた。
通知音が鳴って画面を見ると、涼子からメッセージが
〈友だち?〉
(あぁ。まあ、一応そうか)涼子の顔を見て頷く。
また涼子がスマホを操作する。
(何送ってくるんだろ)
と思いながら、勝手に盛り上がっているやつらから抜け出して、涼子のいる柱に近づいていく。
静かに近づいたから全く気が付いていない。
「涼子」
声をかけると、涼子の肩がビクッと上がった。
「びっくりした……あれ?友だちはいいの?」
「うん。 次は何て送ろうとしたの?」
「いや、私は電車で帰れるから気にしなくていいよって。あと、食事代も後日返すからって」
(ったく、そんなこと考えなくていいのに)
「俺が連れてきたのに一人で帰すわけないじゃん。 誠実にしないとね」
そう言うと、涼子の顔がだんだん赤くなり、俯いてしまった。
(ん? 何その反応)
「りょ―」
「暁翔!無視すんなよ」
(げっ…来んなよ。ってか、空気読め)
ぞろぞろと、さっきのやつらがまた集まってきて、涼子の顔が嫌そうに引きつった。
柱を背にしている俺たちを囲むようにしてジロジロ顔を見ながら、また勝手に話し始める。
「もしかして、待ってたのこの子?」「意外。地味だね」「もしかして妹?」
(は?)
「からかうのも大概にしとけよ。遊ぶ相手は選ばないと」「男慣れしてなさそ~」「勘違いされたら大変だよ~」
(最悪。余計なこと言うなよ)
「ね、飲みに行こうよ」
一人が涼子に声をかけてきた。
(勝手に誘うな)
好き勝手言われてイライラしていると、涼子が口を開く。
「あの、私…」
ハッ(この流れだと「じゃ」って言って帰るんじゃ……)
「妹じゃないです」
(…あれ?そっち?)
「そうなんだぁ。ごめんね。まさか彼女?」
「違います」
(まさかって何だ。まあ、そうだけど違うけど、そんなハッキリと…)
「悪いけど俺らお前らとは行かないから。じゃあな。ついてくんなよ」
これ以上余計な事を言われる前に涼子の手を引き歩き出す。
(あー最悪!あいつらのせいで涼子との時間が減った!)
本当は色々店を見て回ったりとかして、どんなのが好きとか知りたかったし、もっとゆっくりこの後どうするとか話したかったのに。
「うぉっ」
グッと後ろに引っ張られて振り向く。
「あ、ごめん(やっちまったぁ…)」
ついイライラして後ろの涼子を気にかけず歩いてしまい、気付くと駐車場まで早足でノンストップで来てしまった。
「……いや、いいけど」
(あれ?てっきり手離してって言うかと思った。そのままでいいかな?)
「あのさ、聞きたいことあるんだけど…」
「(さっきのやつらのことか?)いいよ。なに?」
掴んでいた涼子の手にグッと力が入った気がした。
「暁翔って……もしかして、いや、勘違いかもしれないんだけど…」
(珍しく歯切れ悪く話すな…)
「……その…私のこと好き…って、思ってたり…」
―涼子Side
「…………」
(あー!何だその聞き方! 考えてたのと違うし、タイミングも変だし。
あぁ、せめて手離してもらってから言えばよかった…てか、早く何か言って…)
何も言わない暁翔の顔を見るのが怖くて、私は俯いたままギュッと目を閉じる。
暁翔に追い付こうと軽く走ったからか、それとも緊張しているからなのか、ドキドキと心臓の音を体で感じる。
「そうだって言ったら?」
ッ!(そうだっていうのは、つまりその…)
黙ったまま顔をゆっくり上げると、真っ直ぐ私を見つめている暁翔の少し赤い顔が目に映った。
「好きだよ」
暁翔の手がギュッと、私の手を握り直した。
ドクン、ドクン。心臓が今までにないくらい大きく脈を打つ。
あぁ…もしかしてだったんだ…
聞いたくせに心の準備ができてなかった…
どうしよ…
何か言いたいけど言葉は思いつかないし、喉に引っかかって声も出せそうにない。
私が黙っていると、暁翔が優しく声をかけた。
「とりあえず車乗って? 寒いし」




