『英雄』イベントのプロデュースは誰だ?
古来より『英雄』は、数百年に1度ヒトの世界で現れている。
その起源は、眷属が生まれる遥か昔、巨人族と戦ったヒト族の男までさかのぼる。
その後、数百年ごとに超人的な力を持つヒト族が現れ、
彼らが『英雄』と呼ばれた。
ある者はドラゴンと戦い、ある者は巨大化して宇宙人と戦ったという。
今から500年前は、勇者として悪の魔王と壮絶な戦闘を繰り返した
記録が残っている。
ヒトは本来、低俗でひ弱なものである。
そのヒトが、自分よりもはるかに強い敵を倒していく。
そんな絶対に在りえないイレギュラーな物語が、神々にとっては
新鮮であり魅力的に映った。
そもそも神の世界は単調な毎日である。
事件と言えば20,000年前に、神界を恐怖で染め上げた
ミアの大事件ぐらいなものだ。
長年平和な日々が続くと、神でなくとも刺激が欲しくなる。
永遠の命を持つとはいえ、20,000年間も平穏無事だと
さすがに刺激が欲しい。
かつて、ローマ帝国が栄華を極めた時、
市民達は刺激を求め、毎日闘技場や劇場へ足を運んだ。
神々にとって、ヒト世界で起こる事件や戦争は、
この闘技場の拳闘や演劇のようなものだ。
その意味で数百年に1度現れる『英雄誕生』は、
まさに絶好のエンタメだったのである。
しかし、そんな刺激的なエンタメも、毎回同じでは飽きてしまう。
最初の『英雄』は巨人と戦い、2度目の『英雄』はドラゴン、
3度目は迷宮のミノタウロスと戦った。
最初の内は、弱いヒトが上位の存在に勝つことは、感動こそあったが
さすがに3度目を過ぎたあたりから飽きられてきた。
そうなると次第に、神々からは、
「『英雄』の戦いをもっと面白くして欲しい」と
リクエストが上がるようになった。
毎日寄せられるリクエストに、
神界全般を取り仕切るゼノンは頭を悩ませた。
「本当に好き放題なことを言ってくれる。
俺は全知全能とはいえ、神々の雑用係ではないぞ」
ゼノンはストレスで朝食がのどを通らない。
そんな兄を見かねてユラが助け舟を出した。
「それなら眷族の神々に丸投げしちゃいなさいよ。
せっかくヒトの監視役で眷族を作ったんだから
何かしてくれるんじゃない?」
「ユラよ。そなたはまさに知恵の神だ。
そなたの知恵が更に育つように、図書館を1つ作ってあげよう」
そういうと、ゼノンはユラに携帯用の図書館作成キットを与え、
その日のうちに3眷族の担当神を呼び出した。
「3つの眷族を束ねる神よ。そなたちに新しい仕事を与える。
今後『英雄』が生まれたら、眷族達が『英雄』の成長と冒険をサポートせよ。
多くの神が喜ぶ『英雄』物語を期待しているぞ」
すぐさまイデアが手を挙げた。
「ゼノンよ、貴方の頼みを受けても良いのですが、
私たちに何か見返りはあるのかしら?」
「それでは、こういうのはどうだ?
毎回、最も神を喜ばせた眷族には、昇級の褒美をやろう。
そして、イデア、エマ、ヴィオラには、
100年に1度おこなっている神界対抗歌合戦のトリを
歌わせてあげよう」
この言葉に最初に反応したのはヴィオラだ。
「ほ、ほんとうか!
いつもゼノンとミアが独占していたトリを私たちに
譲ってくれると言うのか?」
「だけど、ミアがなんていうかしら?
あの子、ずっと家に引きこもっているけど、
歌合戦の時だけは欠かさず出てるわよ」
「エマ、任せておいてくれ。
あやつには、代わりのプレゼントを用意している」
「あら、歌合戦のトリに引き合うようなものってあるのかしら?」
「大丈夫だ、ヴィオラよ。
あやつは絶対に断らない。神の名に誓って約束は守る」
この言葉に、3柱の神たちは一斉に喜びの声を挙げた。
(バカ兄貴、また変な約束をしているわ。
ミアが簡単に「うん」という訳がないじゃないの)
話を傍で聞いていたユラが覚めた目で見ている。
しかし、そんな予想は簡単に崩された。
「ユラ、私、次回からの歌合戦には出ないことにしたわ」
「「 えーーーーー!? 」」
ミアの引きこもりハウスに食料を運んできたユラは、我が耳を疑った。
「どうしたの?毎回あんなに楽しみにしていたのに」
「代わりに私は自分の図書館を作ることにしたの。
だから歌合戦に出ている暇がないのよ」
「な、なんですってー。まさかその図書館って?」
「ユラ、あなた図書館作成キット持ってるでしょ?
ゼノンから聞いたわ。あれで私たちの図書館を作るのよ」
(しまった。バカ兄貴は最初からこのために私にキットをくれたのか。
ということは、これってミアのことは私に丸投げ?)
そう思うとユラはメラメラと怒りの炎が沸いてくるのであった。
その晩、ゼノンの夕食がお預けになったことは言うまでもない。
◆◆
『英雄』イベントで神が喜び評価をしたら、
担当した眷族は大出世のチャンスをつかむことができる。
そのプロデューサー候補とされた幸運の3名は以下である。
いずれも中級眷族、
ガーディアンからマリー、インスペクターからはドン・グルー、
そして死神は、クレアだ。
前回の『英雄』イベントでは、
勇者と魔王の戦いをプロデュースした
インスペクターのヒューイが最優秀賞を獲得し、
ヒト世界の支部No1まで飛び級で出世した。
ほか、魔王役を演じた死神の眷族も初級から中級へ出世している。
今回の英雄ロトの演出に与えられたコンセプトは「戦争」である。
担当者は部下の初級眷族を使いながら、各々の立場で『戦争』を盛り上げ、
神が求める「エンタメ」と「人口削減」を実現せねばならない。
まず、インスペクターのドン・グルーが隣国を部下に滅ぼさせ、
そのまま独裁王としてロトの国を侵略させた。
最初は最も弱い戦士をロトへ挑ませた。
そしてギリギリのところで英雄に勝ちを譲り、
徐々に戦いを盛り上げていく。
毎回、見るものをハラハラさせながら勝ち進む英雄。
ヒト界から送られてくる映像は神のお茶の間を沸かせ、
サロンの話題でも持ち切りだった。
ガーディアンのマリーも負けてはいない。
英雄の参謀役として、部下を潜り込ませ、
インスペクターの独裁王が勝ちすぎないように絶妙なバランスをとった。
英雄とその敵、双方の戦力均等させることは、
より多くの死者を生み出し世界の調整につなげることができる。
マリーは着実に、もう一つの使命を忠実にこなしていった。
その陰では、ソウルイーターたちが戦死者の魂を刈り取り、
均衡を乱す突出した戦士が現れると暗殺で削いでいった。
3つのグループは一糸乱れぬ動きで、英雄の物語を演出した。
過去一番の盛り上がりを見せ始めた、3つの眷族達の芸術的連携は
功績の独り占めを狙ったインスペクターのドン・グルーによって崩されてしまう。
後にゼノンを怒らせたドンの秘策とは?
そして、この舞台に意外な人物が登場する。
次回の展開をどうぞお楽しみに。
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