天才少女 葵 と 少年ロト の出会い
物語は意外なことに三条の姉、葵の話から始まった。
葵は、生まれた時から天才少女として、
担当神イデアに見いだされ、常にエリート街道を歩いてきた
眷族間で定期的に行われる模擬戦では
常に圧倒的強さを見せ、無敗を誇った。
間違いなく次世代のガーディアンを背負って立つ
存在と見られている。
その葵が、
初めて模擬戦で苦戦した。
勝負には勝ったが、どちらが勝っても不思議ではなかった。
相手は初級伝習所上がりの無名の学生だ。
『天才少女を苦しめる眷族が現れた』
この噂は眷族だけではなく、神の間でも一瞬で広まった。
葵の凄い所は、自分の戦いを全て脳裏に焼き付ける
記憶力の高さだった。
今でも目を瞑れば、カレンの動きを全部イメージできる。
葵はカレン戦のあと、10年間、自分の弱点を分析した。
そして、自分に足りないものは実戦経験であることが分かった。
エリートが故に、模擬戦を避けられ続けた結果だ。
カレン戦から100年が経つが、いまだにヴィオラもエマも、
眷属が壊されることを怖がり、対戦相手を出してくれない。
イデアの話によると、
唯一、エマのところにいる氷属性の少女が葵の相手になれるのだそうだ。
少女は、神レベルのエーテル量を持ち、
体術もけた外れのセンスを持っている。
インスペクターの中では既に敵なしの強さという
ただ、今は恐ろしい女神の家に閉じ込められてしまい、
監禁状態になっているのだそうだ。
◇◆
「おい、待てよ。この少女ってフレッダのことじゃないのか?
まさか監禁した恐ろしい女神って…」
いきなり知っていそうな登場人物が描かれていたので
ついつい声を出してしまった。
「あ、それミアよ」
後ろで本の整理をしていたユラが答えた。
「やっぱり」
「でも、そこは嘘だから気にしないで読んで良いわよ。
たまにいるのよね。思い込みだけで書くんだから。
この作者には、しっかりとクレームを入れておいたから」
「そうなんですか。あいつ性格は悪いけど、
犯罪を犯すような奴じゃないですから」
「そうよね、ほんと性格悪いわよね」
ユラが大笑いをしている。
◇◆
眷族の間で実戦経験を積めないと分かった葵は
オーガドラゴンを相手に自己鍛錬をすることにした。
オーガドラゴンとは、ヒト世界にある火山で暮らす
ドラゴンの頂点に君臨する最強の存在。
眷族では上級でもTOPクラスしか相手をすることができない。
( もっと、もっと強くなりたい! )
彼女はドラゴンの動きとカレンを重ね合わせ、
2000年間、一度も休むことなく戦い続けた。
最初は1匹相手でも苦戦したが、年を重ねるたびに
葵のレベルはドラゴンでも相手にならなくなった。
今では数十匹のドラゴンも一瞬で倒してしまう力を身に着けた。
そして2001年後、
いつのように葵とドラゴンが戦っていると
偶然、ヒトが通りかかり、葵の姿が見られてしまう。
葵にとってヒトは、あくまでも下等生物で、
バッタかコオロギが、足元に来たぐらいにしか感じていない。
ヒトの目を気にせずに、その後も戦いを続けた。
葵の姿を見たのは幼い少年で名をロトという。
ロトは羊飼いの息子。
その日、彼は羊を追っているうちに山に迷い込み
少女が剣を振るう姿を見つけた。
自分と同い年、7歳ぐらいの少女が、ドラゴンと戦っていた。
しかも圧倒的な強さで押し続けている。
ロトは自分の目を疑った。
少女の剣が、1匹、また1匹と倒していく。
10メートルを超える地上最強の生き物が、
自分より小さな少女の前になすすべもない。
「す、すげー」
思わずロトからため息が漏れる。
少女は青いカチューシャがずれたらしく、
ぴょこんと岩場に座り、ブルーの髪を整えた。
その姿は、普通の女の子だ。
( 何をしたら、あんなに強くなれるんだ? )
『俺も強くなりたい』、
『強くなったら友達になれるかな?』
そう思うと胸がドキドキした。
その後1週間、ロトは毎日、山で葵の特訓を覗き続けた。
最初は強さの秘密を知るためだったが、
次第に少女を見る事が楽しみになっていった。
1週間後、突然葵の姿が見えなくなった。
休暇が終わり、再びイデアの元へ戻ってしまったのだ。
少年ロトは数週間、謎の少女を探し山々を歩いた。
しかし、彼女は見つからなかった。
「もう一度、あの子に会いたい。
剣が強くなれば、きっとどこかで会えるだろう」
とにかく強くなるんだ」
ロトは自分に言い聞かせた。
そして、羊を放牧している間、脇目も振らず剣の修行を始めたのである。
ロトは羊飼いの子だから剣の師匠にはついていない。
代わりにあの日見た葵の修行を、ひたすら真似し続けた。
雨の日も、雪の日も、お手製の木刀を振り続けた。
そして、1万日目を超えたころ、剣だけではなく
少しだが魔術が使えるようになった。
10歳になったばかりの春、
ロトは放牧の帰りに、山賊に襲われていた隣村の商人を助けた。
生まれて初めての戦いだった。
緊張はない。
それよりも自分の力を試してみたかった。
山賊の前に出ると、ニコリと笑い、大人を挑発した。
5人の山賊たちは血相を変えて少年に打ちかかった。
しかし、戦いは一瞬で終わる。
3年前に見た葵のスピードを追い続けてきたロトにとって、
山賊たちの動きは止まって見えたのだ。
小さな英雄の話は、村中で有名となった。
ロトの名前が近隣の町まで広がったのは15歳の時、
傭兵崩れの盗賊団を、たった1人で跳ねのけた時である。
彼らは北国から流れてきた傭兵崩れの集団で
村々を襲っては、金品を奪い焼き払っていた。
3日前には隣村が滅ぼされた。次はロトの村の番だ。
盗賊団は、傭兵崩れとはいえ戦いのプロだ。
しかも戦力は100人以上もいる。
とても村の素人達では歯が立たない。
「降伏」か「夜逃げ」か?
村人たちが諦め、逃げる準備に入ったころ、
ロトは1人で剣を担ぎ、盗賊団の野営地へ赴いた。
野営地につくと、すぐに盗賊団に囲まれ、
首領の前に引き出された。
首領は2メートル以上ある大男、
服の上からでも筋肉が無駄なくついていることがわかる。
ロトはその前に出ると、目の前に剣を突き付けられた。
「おい、小僧、
もし、お前が村のものなら大人たちに伝えろ。
有り金を渡すか?命を渡すか? 今夜中に決めろ。
俺様は寛大だから金を渡すなら、命は奪わない、とな」
「うーひっひっひ。そんなこと言って、
この前も金と命、両方奪ったじゃないですか」
首領の後ろで部下たちが酒を飲みながら笑っている。
「まあ、そういうな。楽して金が手に入るなら
それに越したことはない」
ロトは何も答えず、声の主をニコニコと見ているだけだった。
「気持ち悪い小僧だな。返事もできないのか。
口がきけないなら、ここで死んでもらうしかないな」
そういうと、部下の2人に首を跳ねろを命じ、
テントに戻って、戦いの準備をし始めた。
「ひゃっはーっ。お前があの世一番乗りだ。
家族をそこで待ちやがれ」
首領の後ろから部下の1人が前に出て、
ロトの前で剣を構えた。
その直後、鋭い音があたりに響いた。
<< シャキーン >>
「さて、そろそろ村へ攻め込むか。
小僧も口さえきければ1日長生きできたのにな」
首領がテントから出てくると、部下の2人がいない。
不思議に思い、あたりを見渡すと2人は地面に倒れていた。
「お前らどうした?」
そう首領が言い終わらないうちに、あちこちから悲鳴が聞こえる。
「うー」
「やばい」
「化け物」
気が付くと、近辺一面が部下の死体で覆われていた。
今、立っているのは少年と首領だけだ。
「ま、まさか。俺たちは100人以上の兵士だぞ。
たった1人で、しかも、こんなガキが・・・(のか?)」
首領はセリフを最後まで言うことができずに、
首が胴体と離れてしまった。
次の朝、村人の1人が、
森の奥で盗賊団と思われる100人以上の骸が転がっている光景を見た。
こんなことが可能なのは、あの少年、ロトだけだ。
この噂は、ヒト伝いに100キロ離れた町まで伝わった。
すると事あるごとに、助けを求める使者が村を訪れるようになった。
ロトの名声は、17歳になると国中に広がり
民衆は彼を『英雄』と呼び、敬い、そして称え始めた。
英雄の出現情報は、影の管理者の3眷族にも、もたらされた。
500年ぶりの『英雄誕生』に神がざわめき、眷属界に緊張が走った。
この『英雄誕生』が、かつてない眷族同士の争いの火種になるとは、
この時、誰も想像だにしなかったのである。
◇◆
「英雄ロトか。
この本では必殺技か何かが書かれているんですか」
「もうっ、ヒカルくんは、我慢ができない性格なのかしら?
すぐに答えを欲しがるのは、ミアとそっくりよ!」
「「 えーーー? 江良と同じですか? 」」
「すみません。もう少し我慢して先の方まで読んでみます」
「分かれば良いのよ。キミに必要なことが書かれてあるわ。
私に言えることはそれだけなの」
やばいやばい。でも、この先に重要なことが書かれてあるのは事実だ。
もう少し、読み進めてみよう。
゜*。,。*゜*。,。*゜*。,。*゜*。,
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
『英雄』ロトの誕生物語。
これまでと少し路線の違う『英雄物語』風の話になっていますが、
後々で重要な役割を果たしていきます。たぶん。( ;∀;)
少しだけお付き合いくださいね。
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