ブローチの色は!?
ユラが俺の胸につけたブローチは
卒業生が胸のにつけるようなリボン付きのブローチだった。
「ヒカルくん、さっそく測ってみましょう」
ユラが楽しそうに俺の顔を覗き込んできた。
「ユラさん、測るって何をですか?」
「このブローチは、ヒカルくんの身体に宿った
エーテルの量を測るアーティファクトなの」
俺はタイムリープのスキルを持っていることが
ばれたと思ったので、正直ほっとした。
エーテル量を測るぐらいなら大丈夫だろう。
自慢じゃないが、俺のエーテルは、
江良や三条が笑ってバカにするほど微量だ。
「分かりました。俺は何をすれば良いのですか?」
「ブローチをつけるだけで大丈夫よ」
俺は胸につけた紫色のブローチを見た。
ブローチは、1分間ぐらい経つと、ブルブルと小さく震え始めた。
そして、点滅したかと思うと徐々に色が変わり始めた。
「わ、わ、なんだこれ」
「あ、ヒカルくん動いちゃダメ。もう少し我慢してね」
ブローチは、最初、紫色に光っていたが、
徐々に赤と銀色のまだら模様になった。
「すごいわ、ヒカルくん!あなた本当にヒトなの?」
ユラがブローチを見ながら、驚きの声を挙げている。
正直、俺は何に興奮しているのか分からない。
続いて、ユラはエーテル通信機に向かって走って行った。
「ミア、聞いて聞いて!ヒカルくん、すごいのよ!」
通信の相手は江良らしい。
俺のエーテル量はミジンコレベルのはずなので
別に驚くことは何もない。
もしかして、ヒトの割に量が多いというのであれば
それは江良の増幅装置のお陰だ。
バタバタとスリッパの音を立ててユラが戻ってきた。
「ヒカルくんのエーテル量が多かったので、ミアに確認したわ」
( やっぱり、ヒトである俺がエーテルを持つのは変だよな )
そこで俺は江良の道具について説明することにした。
「これは江良の道具をつけているからで」
「聞いたわ。エーテル増幅装置をつけているんでしょ」
「え? そ、そうです」
「でもね、それを考慮してもキミの量は普通じゃないのよ。
眷族でも緑色がいいところなのよ」
「すみません、よく分かりません」
「あー、エーテルのことは分からないわよね。
キミには少し説明が必要ね」
◇◆・・・
ユラは少し落ち着きを取り戻したようだ。
お茶とクッキーをテーブルに置くと、俺を手招きして
鉛筆で何かを書き始めた。
「ヒカルくん、
ブローチがエーテル量を測る装置であることは、
さっき話したわね」
「はい」
「ブローチは、つけた者のエーテルの量に
よって色が変わっていくの。
蒼くなると1000テラ。
緑になると5000テラ。
赤く染まると10000テラ。
銀色になると50000テラ。
金色になると100,000テラ。
虹色になると無限大をあらわすの」
( 良かった。俺は真ん中だ )
俺は赤と銀色、せいぜい中間だろう。
ゲームでいうところの初級冒険者だろうか。
これなら、スキルを調べられることはない。
「ヒカルくんは、30,000テラぐらいね」
「はい。偏差値50の能力ということですね」
「何を言ってるの?
眷族はせいぜい頑張って蒼の1000テラよ。
緑の5000テラになると、眷属の戦士になれるわ」
「それじゃ、俺は…」
「そうよ。眷族の強さは知っているでしょ?
キミはその彼らを遥かに上回っているの」
「まさか三条やカレンさんよりも上なのでしょうか?」
「あの子たちはブローチが紅くなると聞いたわ。
つまり10,000テラ。キミは彼女たちすら超えているわ」
「それは増幅装置が・・・」
「ミアから聞いたわ。
でも、さすがにこの数値はおかしいわ。
普通なら緑色のレベルが良い所よ。」
「なんか、すみません」
「いえ、ヒカルくんのせいじゃないわ。
多分、ミアの道具だから、規格外の効果があるのよ。
それをミアから説明してもらおうと思ったんだけど、断られたわ」
「とんでもない秘密があるのでしょうか?」
「いいえ、今、大切なテレビ番組を見てるからダメだって」
「あーーー、本当にすみません」
江良に振り回されているユラを見ていると
なんだか謝りたい気分になった。
そんな俺の真剣な顔を見て、ユラが笑いだした。
「それと、さっきのヒカルくんの魔術ね。
あれは多分『イミテーション』というスキルよ。
『再生』スキルは、発動条件がレアすぎて神でも難しいの。
キミのエーテル量からみて、おそらく『イミテーション』ね」
「『イミテーション』?」
「『イミテーション』は、模倣能力で『再生』の劣化版なの。
例えば、大けがをした者を治癒するとき、
『再生』を使うと、怪我が完全に治癒してしまうわ。
だけど、『イミテーション』で治癒させると、
目に見える表面だけが元通りになって、
内部の細胞までは治癒されないのよ」
ユラの話を要約するとこうだ。
『イミテーション』スキルを使うと、
壊れてしまった物体の見た目、表面の元素が
元の形に組み替えられ、あたかも再生したように見える。
対象は生物、機械、自然、万物の全てだ。
しかし、見た目だけの修復なので中身、内部は壊れたままだ。
なにか衝撃があると、すぐに壊れてしまう。
怪我を『イミテーション』で治した場合、
表面の細胞は治癒されるが、体内の細胞は壊れたままだ。
放置しておくと、死に至ってしまう。
さらに、一見便利そうなスキルだが、
『イミテーション』の発動条件は膨大なエーテル量を
必要とする。その量は10,000テラだ。
エーテルを爆食いする割に効果が薄いことから、
神々の間ではゴミスキルとされてきた。
つまり、かなりマニアックな能力なのである。
ユラも初めて見たらそうだ。
「ヒカルくんは、だいたい20,000テラぐらいだから、
今日はもう『コピー』は使わない方がいいわよ」
「もし、エーテルが枯渇するとどうなるんですか?」
「その場で死ぬわ」
「分かりました。1日1度にしておきますす」
自分のエーテルがどれくらいか?分からないのに、
使いすぎに注意と言われても困る。
眷族や神たちは、どうやって残りのエーテル量を知るのだろうか?
「ところで、残りのエーテル量が分かるアーティファクトは
ないのでしょうか?」
「そんな道具、聞いたことがないわ。
だから私たちは、子供の頃から定期検診を受けて
自分のエーテル量を知っておくの。
それなのに、あの子はいつもいつも」
( たしかに江良のやつ、健康診断とか嫌がりそうだな。)
「江良のそばにいると、ユラさんも、いろいろ大変なんですね」
そうだ、今度三条を入れて、『江良みあ被害者の会』の
集いをしよう。きっと、友情が深まるに違いない。
「ねー、ところでヒカルくん、
最後に増幅装置を外して測ってほしいけど、だめ?」
「え?」
「ミアは外しちゃだめっていうんだけど、
少しくらいなら大丈夫よね」
ユラが研究者の目に戻り、モルモットの俺を
手術台に運ぼうとしている。
「いえ、さすがに江良を怒らせると面倒だし。
やめておきましょう」
「惜しいわね。こんな実験材料は久しぶりなのに」
「実験材料ですか・・・」
「あっ、違うの。ミアには内緒ね。
キミの力は、あの天才、三条姉妹にも引けを取らない
可能性を秘めているのよ。あー、もったいない」
なにが「もったいない」のか分からない。
ヤバそうな話になる前に、話題をそらそう。
「あのー、ユラさん。
俺が、そんな力を持っているのなら、
準市民も夢ではないということでしょうか?」
「そうね。三条姉妹とは良い勝負になるかもしれないわ。
でも3つの眷族のTOPは、更に強いのよ。
今のままでは、まだ無理ね。」
そういうと、ユラは俺に1冊の本を渡した。
「これを読むと何か参考になるかもしれないわ」
それは、英雄と呼ばれたヒトの物語だった。
裏表紙を見ると、今から10,000年前、
カレンの物語の2000年後の話らしい。
゜*。,。*゜*。,。*゜*。,。*゜*。,
今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
久しぶりの投稿です。
仕事がひと段落付いたので、また執筆を再開いたします。
どうぞ、よろしくお願いします。
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