表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/38

ミアとユラの秘密図書館

「おはよう、男爵!」


翌朝、教室に入ると部屋の奥から大声で挨拶が聞こえた。


「誰が、男爵だよ?」


「え、私の目の前にいるロリコン男よ」


江良がニヤニヤしながら近づいてきた。

こいつのしつこさは面倒くさい。


「昨日、誤解だって話をしただろ?」


「ミア様、もうその辺で…」


「えー、なんでー?

 男爵がいやなら正式な呼び方の方が良いかしら?」


「ミア様、もうその辺で…」


「三条さん、ここは好機なのです。

 攻める時には、とことんです。

 では正式な名称で、ろ…」


「おい、これが目に入らないか?」


俺は 江良みあ の性格はよく知っている。

そもそも、俺が丸腰で来るわけがないのだ。


「う、」


「今週いっぱい使える たこ焼き券だ。

 ここのネギ塩たこ焼き、美味しいって有名だったよな。」


昨日、俺は南極からの帰宅後、

自転車を飛ばして、金のたこ焼き屋の

『ネギ塩たこ焼き券』を5枚買ってきた。


江良に頼みごとをする時は、

千の言葉より、1玉のたこ焼きが有効なのだ。


その中の1枚を掴み、江良の目の前でヒラヒラと見せた。


「はっ、それは!」


江良のニヤけた顔が、わざとらしく真顔になった。


「ヒカル、おはよう。今日はとても良い天気ね。」

「その券は、私にくれるっていうのかしら?」


目線はたこ焼き券に、ロックオンされている。


「聞きたいことに答えてくれたら、

 誰かさんに、この券をプレゼントしたいなーって

 思ってるんだ」


俺はそう言いながら、

手を伸ばして、『たこ焼き券』を江良の頭上高くに掲げた。


江良が素早く、券に飛びつくが、背が小さいので、手が届かない。


「答える、答える、何でも聞いてー」


( お前は腹を空かした子犬か? )


思った通りだ。

『たこ焼き券』の下でぴょんぴょん跳ねている

江良を見ながら、俺は勝利を確信した。


「ミア様、そのお姿は…」


三条は江良の隣で頭を抱えている。


いまだ!



「3年後のリセットを止めさせたいんだけど、

 何か方法はあるか?」


「ゼノンのリセットのこと?」

「あいつ、時間にうるさいのよ」


江良はたこ焼き券にロックオンしたまま、

俺の質問に答え始めた。


「あいつさぁ、町内会が一緒なんだけど、

 ちょっと遅れただけで、いつまでも嫌味を言うのよね。」


「それじゃ、3年後のリセットは確実ってことか」


「まぁ、今のところはね」


「やっぱり」


ここまではフレッダから聞いた通りだ。

3年間で何ができるのだろうか?


「ん?いまなんていった?

 今のところって言ったよな」


「もー。早くちょーだいよ。」


「今のところってことは、変わる可能性があるってことか?」


俺は、残りの『たこ焼き券』を江良の机に並べ始めた。

一枚並べるごとに、江良の目が大きく見開かれる。


「そ、そうよ、ないことはないわ」


「教えてくれよ。俺は何をすればいいんだ?」


「知ってると思うけど、相手は全能の神よ。

 ヒトが動いて何とかなる話じゃないのよ。」


「じゃあ、お前が動けば何とかなるのか?」


「さすがに無理ね。

 だいぶ前だけど、あいつと喧嘩したから、私のこと避けてるみたいだし」


「誰か、ヒトを助けてくれる神はいないのか?」


「いないわ。だって、神は神だもん。ヒトに関心がないわ。」


なんてことだ。

俺が考えていたのは、

江良の知り合いの神に助けを請うという作戦だった。



俺が肩を落とした瞬間を狙い、

江良が<ササッ>と、「たこ焼き券」を奪い取った。


券を握り、頬ずりした後、

江良は財布から1枚カードを取り出して、俺に渡してきた。


「何かのヒントになるかもしれないから、

 ここに行ってみなさい。」




放課後、俺は江良に教えられた場所に向かった。

渡されたカードは、学校から電車で30分ぐらいの

ところにある県立図書館のものだっだ。


( 図書館にどんなヒントがあるんだ? )


放課後、俺は図書館につくと半信半疑で玄関をくぐった。

ぱっと見て、普通の県立図書館である。


江良は性格が悪いが、嘘をつく奴ではない。

奴を信じよう。


俺は江良に言われた通り、受付で図書カードを見せてみた。

すると『暮らし生活』のコーナーに行くように案内された。


コーナーにつくと、

俺は再び司書にカードを見せた。


すると、司書が閉架図書室の扉を開けて、

中に入るように案内された。


初めて図書館の閉架図書室。

部屋の中は、本がぎっしりと並んでいる。


「ここでしばらくお待ちください」


俺を案内してくれた司書は、小さな扉に入っていった。


この中に神界の秘密の文書があるのだろうか?

5分程して、扉から司書が出てきた。


「大変、お待たせいたしました。

 準備ができましたので、こちらにお入りください」


やはり、この扉の向こうに神の文書があるのだろう。

希望が出てきた。


小さな扉なので、かがんで中に入った。

押入れのような広さだ。本どころか、何もない。


一瞬、部屋が暗くなったかと思うと、次の瞬間には明るくなった。

どこかに転送されたのだろう。


目の前に草原が広がっている。

100メートルぐらい先に小さな家が建っていた。


近づいていくと、その建物には『図書館』という看板が掲げられていた。


( ここまで来たんだ、とにかく入ってみよう )


<< チリンチリン >>


俺は、扉にある呼び鈴を鳴らしてみた。

すると、眼鏡をかけたおさげ髪の少女が出てきた。


「あのう、江良みあさんに紹介されて来たのですが」


「はい。こちらに来ることは聞いています。

 どうぞお入りください」


俺は少女に続いて、家の中に入っていく。

中は、外観とは大違いで体育館ほどの広さがあった。


書棚は3階建ての構造になっていて、高い所にある書籍は

ドローンのようなものが運んでいる。


あまりの広さに、驚いていると少女が話し掛けてきた。


「ミアから、ヒカルくんの用件は聞いているわ。

 私はこちらで司書を務めている、ユラよ」


「天野ヒカルです。今日はよろしくお願いします」


「ヒカルくんは、ミアの加護者よね。

 あの子が加護するなんて、本当に久しぶりね」


「もしかして、ユラさんも神様なんですか?」


「そうなるわね。

 でも、ミアと ここを作ってからは、神界には帰っていないわ」


「ここは、江良と2人で作ったのですか?」


「そうよ。そのあたりは聞いていないのね。

 話せば長いけど、ここはミアが作って私が管理しているの」


俺は改めて館内を見渡した。書籍の量が半端ではない。

本の形も、革表紙、神、巻物、石板、クリスタル、多種に渡る。


これを江良が1人で作ったとは、本当にあいつはタダものではない。



「あ、そうそう、ミアからはヒカルくんに、このコーナーの本を

 読ませるように言われているわ」


ユラが指さす方を見ると、そこには何百冊も、書棚に埋まっている。

とてもじゃないが、1年や2年では読み切れない。


「こ、これ全部ですか?」


「そうよ。だいたい君たちの時間で10年はかかるわね。頑張って!」


「いや、それじゃ困るんです。

 俺はすぐにでも帰らなければならないのです」


「大丈夫よ。この空間は時間の螺旋から切り離されているので

 永遠に時間が止まっているわ」


「え、そんなことが可能なんですか?」


「まあね。あの子が作ったので、私にも仕組みはわからないわ。

 だから、時間は気にしないで、ゆっくりしていってね」


「飽きたら、お姉さんが話し相手になるわよ。私もミアの話を聞きたいしね」



後で、ユラから聞いた話だが、リセットがおこなわれる度に、

ヒトの文明が消されるのを惜しんで、江良が秘密で作ったらしい。


江良は作るのは得意だが、細かく管理するのが大の苦手。

そこで、幼馴染のユラに頼み込んで、ここにきてもらったのだそうだ。



ユラは、あのゼノンの末妹。

できすぎ君の兄を持ち、内向的に育ったユラは、部屋にこもり、

本を読むことが大好きになった。


その性格につけこんで、ミアがユラを計画に巻き込んだ。

ユラ本人は楽しんでいるようなので、奴の企みは黙っておこう。



この図書館には、1000年に1度、膨大な資料が秘密裏に運び込まれる。

その中の何百、何千冊が俺の目の前に積まれていた。


気後れするが、これも家族や友達を守るためだ。

俺は心を決めて、ページをめくった。


「あ、ヒカル君、ごめんね、これを渡すのを忘れていたわ」


ユラが渡してきたのは、漫画に出てきそうなぐりぐり渦巻の眼鏡。


「これをかければ、君が知らない言語でも内容が分かるはずよ」


確かに目の前にある書物は、全部知らない文字で書かれている。

でも、メガネをかけると、不思議と意味が分かってくる。


「ユラさん、ありがとうございます」



改めて分厚い本の1ページ目をめくる。


「「「 こ、これは! 」」」


『美味しい粉もの料理』『私とタコ焼き』『ヒト族とたこ焼きの歴史』


奴の趣味の本ばかりじゃないか!

表紙を見ると、数百冊は『粉もの』『たこ焼き』『お好み焼き』の本だった。


俺には時間がない、全てスルーだ。

江良の布教本は、そっと本棚に返しておいた。

゜*。,。*゜*。,。*゜*。,。*゜*。,


今回もお読み頂きありがとうございます。


下にある広告をさらに下へスクロールすると☆☆☆☆☆が並んでいます。

その☆や「ブックマーク」で応援して貰えると凄く嬉しいです。(*'▽')

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ