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あと3年あるさ

3年後、ヒトの世界が滅ぼされ、リセットされる。

そんな話を聞かされて、『はい、そうですか』と納得できない。


このままでは、俺の家族も学校も、友達の思い出も、

神々によって全部消されてしまうからだ。



「3年後、リセットは確実に起こるのか?」


俺は改めてフレッダに尋ねた。


「ゼノン様は時間に正確だからな。多分、1秒も間違えないのだ」


フレッダは『何を当然なことを…』という素振りだ。


「ちょっと待てよ。これまでのリセットだけど、

 歴史の教科書やニュースで、

(世界が滅んだ)なんて記録はどこにもなかったぞ。」


「当然なのだ。教育とマスコミは、すべて我々眷族がコントロールしている。

 やろうと思えば、記録なんて簡単に書き換えられるのだ。」


確かに、こいつら眷族にかかれば、ヒトの歴史なんて

簡単に書き換えることができる。俺はその片鱗を間近で見てきた。



「ところで、リセットされた後、世界はどうなるんだ?」


「文字通りに、『リセット』なのだ。

 建物、文明、ヒト、全てが書き換えられるのだ」


「俺自身も消えてしまうのか?」


「ヒカルはミア様の加護者だから、対象外だろうな」


「例え、俺が生き残っても、

 家族や友達はいなくなるんだろ?」


いつの間にか

俺の目から涙があふれてきた。


神の年中行事のために、

真面目に暮らしている俺の家族が消される。

こんなバカな話があってたまるか。



「ゼノン様は、ヒトを完全に消すわけじゃない。

 ヒカルには新しい家族や友達ができるのだ。だから寂しくはないぞ」


「いきなり『知らない家族と暮らせ』って言われてもな」


「あ、ごめんなのだ。

 ヒカルの記憶も塗り替わるので、そこは心配ないのだ」


「大切な家族の思い出が消されるんだぞ。

 普通でいられるわけがないだろ」


「ヒカル、何を言っている?

 リセットとは、夜が来るから朝が来るのと同じなのだ」


「どういうことだ?」


「例えばヒカルは、夜寝る前と、朝起きた時の世界が全く同じと、

 どうやって分かるのだ?」


「寝る前のことは、朝も覚えているからな」


「ではヒカル、もし、朝、目覚める前に

 記憶操作がおこなわれたらどうなる?」


記憶を書き換えただけで、

事実や過去が簡単に変わってしまうことは、

ソウルイーターや秋葉原戦争の時に経験している。



「あっ、確かに」


「昨日のヒカルの家族と、今日の家族が入れ替わっていたとしても、

 記憶が塗り替えられたら、悲しくないだろ?」


フレッダの言う通りだ。


仮に毎晩、リセットがおこなわれても、俺は気が付かない。

そして作られた記憶をたどって、今とは違う親への愛情を感じるはずだ。


俺はリセットの意味が分かってきた。



だが、そうだとしても、今の家族、あっちゃん、

そして…、ばかばかしい記憶ばかりだが、

江良や三条との思い出が消えてしまうのは寂しい。


リセットは、神の行事だから覆すのは難しそうだ。

しかし、何とかしたい。


まだ時間は、3年ある。

時間を止めたり、戻したりしたら、

その何倍も考える時間があるはずだ。


『いざとなれば何とかなる』

そう思うことで俺はパニックに陥らずに済んだ。


とにかく今は、考えるヒントが欲しい。

江良は何か知っているのだろうか?




次に、俺たちが向かったのは、

『太陽の塔』と呼ばれる場所だった。


このエリアには、

昔、大阪万博で建てられたという

『太陽の塔』そっくりの像がある。


その塔の顔の部分、金色の目から

10分毎に巨大な炎のエーテルが天高く打ち上げられていた。



ガイドによると、

我々地球の空は大きなドーム状になっているらしい。


打ち上げられた炎のエーテルは、空のドームにぶつかり、

散らばりながら地表に降り注ぐ。


このエーテルの塵によって、

ドーム内の気温が保たれ、風が舞い、

植物の光合成が促されるのだそうだ。



では太陽の役割とは何なのか?

誰もがそう思うだろう。


「え、太陽?

 太陽は地面を照らすだけなのだ。」


これは、フレッダの回答だ。



太陽は、決められたルートを通りながら地上を照らしている。

ここまでは俺達の常識と同じだ。


しかし、圧倒的に違うのは太陽が世界の上空を回っているのだ。


季節によって、太陽の通るルートが変わるのは、

夏と冬では、エーテルを降らせる量が変わるため、

その邪魔にならないように、微妙に変わるのだそうだ。



では、月や星はどうなっているのか?

念のためにガイドに聞いてみた。


これもガイドの言葉から引用しよう。



月も太陽と同じく、決められたルートを通り、

ドームの上から地表を照らし続けている。


星は、太陽と月とは、大きく違う。

実際に星は存在せず、俺たちが見ているものは、

上空のドームに投影されたものらしい。


ヒカルは子供の頃、科学雑誌で

「宇宙ホログラム説」というものを読んだことがある。


簡単に説明すると…。


(読者の中に)子供の頃、角度によって立体に見える

キラキラしたシールを見たことがあるのではないだろうか。


「宇宙ホログラム説」は、

この宇宙も、実は、ホログラムのように

二次元になっていると考える説だ。


この説を通して検証すると、

宇宙の超常現象の原理が見えてくるのだそうだ。


もし、ガイドの話が本当なら、

このホログラム説が正しかったことになるだろう。



最後に俺たちは氷漬けになった

昔の神界を見学した。幻想的な世界だ。


玉ねぎのような屋根のビルがたくさん建っている。


フレッダによると、この屋根は、

空に散らばったエーテルを集積して

再利用するための装置らしい、



ガイドの話を聞きながら、

さっきから、横でフレッダが時計を見て、そわそわしている。


「どうした、トイレか?」


<<<  ドスドスドス  >>>


セリフを言い終わる前に、

フレッダの蹴りが俺の脇腹をクリーンヒットした。


「レディーに対して失礼だろ。

 あたしが気にしているのは、ヒーローショーの時間なのだ。」



今日フレッダは、江良のお使いで俺をここに連れてきたが、

本当のお目当てはヒーローショーだったらしい。


さすが、江良が育てた眷族だ。

やつが、”たこ焼き特番”の時に見せる仕草と

どこか似ていると思ったら案の定だった。


何でも、そのヒーローショーは、

ここから10分ぐらいの遊園地でやっているそうだ。


フレッダは、「氷の遊園地に行きたい」と言い出した。



俺は江良を通じて学習済みだ。

こういう時、オタクに逆らうとひどい目にあうのである。


「わかった。わかった。

 ガイドさんに聞いたら、OKをもらえたよ。」


「よし!」


フレッダがガッツポーズをとる。


「じゃ、お前にもこれをつけてやるのだ」


そういうと、トランペットの筒のようなものを

俺のカートにつけてきた。



次の瞬間。。。


<<<  ゴゴーッ  >>>


轟音をまき散らしながら、カートが空を飛んだ。

トランペットの筒からジェットが噴き出している。


「ちょ、ちょっとー、フレッダさーん」


「安心するのだ、自動操縦モードにしておいたのだ」


説明を聞く間もなく俺たちは、遊園地についた。

というよりも、俺は気絶しており、入り口で起こされたのだ。

 


遊園地は、アールブヘイムの遊園地の姉妹園で、

ヒトの世界に来ている眷属の家族のために作られたらしい。


ここは非武装エリア。

眷族達は、勢力に関係なく自由に楽しむことができる。


あっちのベンチでは、天使もどきたちが弁当を食べている。

こちらではカップルが手をつないで歩いている。

皆、表情が穏やかで、心から楽しんでいる雰囲気だ。



「今日は、この前のお礼をしっかりとするのだ。」


「この前?迷惑料で、かき氷くれただろ?」


「あれは、あれなのだ。

 だから、今日は一緒に楽しむのだ。」


あの時、自分の勘違いで、俺に攻撃したことを、

こいつなりに気を使っているんだな。


「ありがとう。そうするよ。」


そういうと、フレッダは嬉しそうに微笑んだ。

次の瞬間、園内にファンファーレが鳴った。


「時間なのだ!」


アトラクションが開始される合図だ。

フレッダは既に会場に向かって走っている。


「せーの、がんばれー」

「がんばれー」


子供向けのヒーローショーは、

ヒトも眷族も神も、みんなパターンが同じらしい。



最後はすっかり満足したのか、

帰りの電車の中で、フレッダは俺の膝を枕に寝てしまった。


トンネルに入った。もうすぐ日本だ。

日本についたと思ったら、強烈な睡魔に襲われた。



「ロリコン男爵、今日は楽しんでもらえたか?」

「私より幼女のフレッダが良かったのですね?」


トンネルを抜けると、江良と三条が俺の前に立っていた。


「ふふふふ、男爵の本領発揮ですな。」

「画像は保存しました。いつでもガーディアン本部に送れます。」


「いや、違うんだ」「これはフレッダが…」



「お客さん」

「お客さん、終点ですよ」

「ヒカル、起きるのだ。ついたぞ。何が違うのだ?」


また、夢落ちだ。

それにしても、リアルな夢だった。

江良の笑い声がまだ、耳にに凝っている。


何とも後味の悪い目覚めのまま、

フレッダと俺は電車から降りて行った。




隣の車両で、俺たちを覗いていた2つの影がある。


「ミア様、さすがに記憶の書き換えは、やりすぎではないでしょうか?」


「いいのよ、これくらい。フレッダもフレッダよ。

 遊園地に行くなら私も誘ってほしいのに。」

「それにヒカルは押しに弱すぎです。

 全くちょっと目を離すと、あのロリコンは!」



嫉妬深い女神により、

俺とフレッダは記憶を書き換えられたらしい。


女神の自分勝手な悪戯(罰?)を三条から知らされたのは、

それから3日後のことだった。

゜*。,。*゜*。,。*゜*。,。*゜*。,


今回もお読み頂きありがとうございます。


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