灼熱と極寒の狭間で
氷のウサギ達と戯れる幼女。
その横で、ガッツポーズをとる男子高校生。
冷静に見ると、ブッ飛んだ光景だ。
三条が冷たい目で俺を見るのも当然だろう。
「ヒカルの趣味が分かったわ。
どうりで私の魅力に興味を示さないわけね」
江良がとどめを刺しに来る。
こいつらは、幼女の正体を知っているはずだ。
それなのに楽しんでやがる。
「「「 茜ちーん、おーい 」」」
三条の姿を見たフレッダが、
その場で立ち上がり全身で手を振っている。
( やはり、こいつら知り合いだ )
三条も手を振り返しているが、目が笑っていない。
むしろ緊張感を漂わせている。
「三条さん、そんなに戦闘オーラを出したら、
さすがにフレッダちゃんも、反応するわよ」
「ははっ、申し訳ありません」
声の主を見て、フレッダは声を出さんばかりに驚いている。
その目は、大きく見開き、お化けでも見るような眼だ。
わなわなと、手が震えている。
…と思ったら、全力で江良に突進してきた。
(江良を守るべきか?)
(三条に任せるべきか?)
迷った末、俺は江良を守ることにした。
いざとなれば、時間を戻してフレッダの攻撃を止める。
「「「 おねーちゃーーん 」」」
フレッダは銀髪をかき乱しながら、
江良に抱き着き、頬をスリスリしている。
「なんだと?江良がお姉ちゃん?」
江良も手慣れた手つきで、頭をなでる。
フレッダはこぼれそうな笑みを浮かべている。
「フレッダちゃん、久しぶりね」
「はい。ミアおねえちゃん」
「お前ら姉妹だったのかよ」
「おい、お前。ミアお姉ちゃんに向かって
『お前』って言ったな! 殺す」
フレッダの銀髪が逆立ち、
巨大なエーテルが全身から漏れ始める。
「だって、いま、お姉ちゃんって言ったじゃないか」
「お前、ガーディアンの癖にこのお方を知らないのか?」
「い、いや、俺、ガーディアンじゃないし」
「じゃ、死神様の眷族か?」
「いや、それも違う」
フレッダは意外な答えに戸惑っている。
それでも江良の手は離さない。
「じゃ、じゃあ、お前は何なのだ?
インスペクターでは見た事ない顔だぞ」
「フレッダちゃん」
「なーに、ミアお姉ちゃん」
「ヒカルは、私が加護を与えた者なのですよ」
「そんなバカな。お姉ちゃん、ザンの時にあんなに悲しんで、
『もう、加護なんてしない』って、言っていたじゃない」
「そうですね。でも加護っちゃったんです」
江良は、”てへぺろ”って感じで、頭を傾けた。
( 軽い、軽すぎる!軽薄女神よ )
( お前のせいで、俺は命を狙われることが増えたんだぞ )
「訳アリなんだね」
「おい、お前、もう一度名前を教えろ」
フレッダは、江良の前にズイっと出て、
チビっ子のくせに上から目線で迫ってきた、
「なんだよ、江良の妹。
俺の名前は、天野ヒカルだ。」
「そう、天野ヒカル、またの名をロリコン男爵」
「江良、お前いい加減にしろよな。
俺はお前の妹のせいで、さっきまで死にそうだたんだぞ」
「天野君、フレッダはミア様の妹じゃないわ」
「妹だもん」
「フレッダは生まれた時からエーテル量が多すぎて、
中級眷族の家族では、近づけないほどだったの。
そんな時、ミア様がフレッダを引き取って、育てたのよ」
「そうなのだ、茜ちん、さんきゅ」
チビっ子が三条に向けて親指を立てた。
「だから、フレッダの戦闘スタイルはミア様流で豪快なの」
( そうか、さっきフレッダの戦う雰囲気が、
誰かに似ていると思ったのは江良だったのか )
そういえば、このワガママぶりも、江良に似ている。
「わかったのだ。
そういうことなら、ヒカルは敵じゃないのだ」
<< キュキューッ >>
ウサ子がフレッダのそばに近寄り、身振り手振りで何かを説明している。
「いま、ウサ子から聞いた。
お前、倒れていたウサ子を助けてくれたんだな」
( 最初から言ってたじゃないか。ほんと誰かにそっくりだ )
「ごめんなさい」
フレッダが深々と頭を下げる。
そして、手から氷を出すと、かき氷を作って俺に差し出した。
「『ごめんなさい』の証なのだ、たべろ」
「分かったよ。ありがたくいただくよ」
ちょうど、体を動かした後だったので冷たいものが食べたかった。
イチゴ味のかき氷を口に入れると、身が凍る冷たさだ。
その後、じんわりとイチゴ風味が伝わってくる。これは美味い。
フレッダは、ミアと三条にもかき氷を差し出した。
「フレッダちゃん、腕を上げたわね」
「はい。師匠の修行の賜物です」
「そうであろう、そうであろう」
何だか2人の世界で盛り上がっている。
ふと、横を見ると三条が驚いたようにかき氷を食べている。
「三条、お前もしかして、かき氷食べるの初めてか?」
「ええ。面白い食べ物ですね。
ただの氷なのに、こんな味になるなんて。」
「茜ちん、それは違うのだ。
氷の質と、削り方の絶妙なバランスがこの味を生むのだ」
こいつのかき氷に対するこだわりも、どこかで見たような…。
あぁ、江良の影響をもろに受けているのね。
「茜ちん、食べ終わったな。
それでは500年前の決着を、これからつけるのだ」
「今日、私は、そのセリフをずっと待っていたのよ。
少しは強くなったんでしょうね?」
2人の周りに炎の世界と氷の世界が、一瞬で広がる。
「まあ、久しぶりですね。
思い切り遊べるように場所を作ってあげるわ」
江良が右手を上げると、時間が止まり、
亜空間のようなシールドが発生した。
そして、4人と1匹をまるごと飲み込んでいく。
「ミア様、感謝いたします」
「お姉ちゃん、ありがとーー」
2人が笑顔で江良に答える。
「おい、あいつら2人とも相当強いぞ。
軽い怪我ぐらいじゃ、すまないんじゃないか?」
「大丈夫よ。ヒカル。
500年も遊べなかったんだから、ストレスが溜まっているだけよ。
ちょっと、遊ばせたらすぐに止めさせるから」
そういうと、どこから持ってきたのか、座布団を敷き、
懐からたい焼きを出して食べ始めた。
横にはウサ子が座って、江良と一緒にバトルを見ている。
のんきな2人の向こうでは、炎の連弾と、氷の矢がぶつかりあう。
実力は互角だ。
次第に技が激しくなっていく。
2人の間には、両者が放つ灼熱と極寒で気温差が生じ、
竜巻が発生し、稲妻が光り続けている。
「ウサ坊、やっと面白くなってきたな。
お前もたい焼き食べるか?」
「きゅきゅ」
「お、お前もいける口だね」
「何が、いける口だね、だ。
そろそろ止めなくて良いのか?」
フレッダが例の氷山を作り出した。
三条も負けずに、ミニ太陽を作っている。
幼稚園児が砂場で、どっちが大きいだんごを作れるか?
楽しそうに競争をしているようにも見える。
「もう、良い頃かもしれないわね」
「はい、終了――」
そういうと江良は、ボクサーのワンツーパンチのような仕草をした。
<<< ボン、ボン >>>
コブシから、2つの気流弾が飛びだし、
双方の氷山と太陽を豪快に吹き飛ばす。
いきなりの出来事に言葉を失い、座り込む2人。
「もう少しで、私の勝ちでしたのに」
「何を見ていたのだ、私の勝ちなのだ」
「2人とも良い汗をかきましたね。
ご褒美に、たこ焼きを差し上げましょう」
「わーい、わーい」
「ありがたき幸せにございます」
2人とも、エーテルが消耗したせいかお腹が空いていたのだろう。
爪楊枝を受け取ると、たこ焼きを我先に頬張っている。
これでバトルは終了。怪我もなくて、めでたしだ。
「三条さんも、フレッダちゃんも
ヒカルに負けそうになったのですから50歩100歩ですわね」
<<< ヒュンヒュン >>>
江良があいつらに声をかけた瞬間、
俺の顔のそばを、何か物体がかすめていった。
<<< ドスドス >>>
音が鳴る方を振り向くと2本の爪楊枝が、
トラックのボディに刺さってる。
そして、2人は何事もなかったかのように
再びたこ焼きを食べていた。
この時以来、俺は暇さえあれば、
2人からバトルを仕掛けられるようになった。
全ては江良の不用意な発言のせいである。
「お前、見どころがあるから、友達になってやるのだ。
勘違いするなよ。あたしが1番でお前は2番だからな」
分かれ間際に、フレッダが俺のところに来て、
恥ずかしそうに友達申請をして帰っていった。
゜*。,。*゜*。,。*゜*。,。*゜*。,
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