絶対零度下の熱い戦い
銀髪ツインテールの女の子が
仁王立ちをして、俺を睨んでいる。
ランドセルを背負えば、小学3年生ぐらいの児童だ。
しかし、こいつはさっき時間を止めた。
つまり眷族である。
しかも、わがままだ。
「あたしのペットを取った」と
俺の話を聞こうとしない。
( 困った… )
眷族とはいえ小学生ぐらいの子だ。
戦いたくはない。
それに、この子、強烈に強いのだ。
恐らく、今まで戦った誰よりもエーテル量が凄まじく多い。
基本的な攻撃を見ても、レベルが違う。
ほら、来た。
この攻撃もそうだ。
「何をごちゃごちゃ言ってるのだ。
あたしばかりじゃつまらないのだ。反撃してこい!」
こいつは、しゃべりながらも攻撃できる。
無詠唱で技を出してくるからだ。
<<< グサグサグサッ! >>>
おいおい、洒落にならないぞ。
氷の矢が100本まとめて飛んできた。
足に3本、肩に2本、氷の矢を食らった。
もちろん、すぐに時間を戻したから凍傷にはならない。
しかし、刺さった場所の氷結スピードが半端ない。
これは氷矢の温度が恐ろしく低いからだ。
同じ氷の属性でも、真田とは別次元である。
「お前、逃げるのが本当に上手いな。
ちょっとだけ、見直したのだ。」
「そりゃ、どうも。
俺の話を聞く気になったか?」
「まだまだ、なのだ!」
何だか、こいつ、俺をいたぶりながら喜んでないか?
戦っている時に、この笑顔。
この感じ、誰かと似ているな。
◇
ヒカルとのバトルから
時間をさかのぼること、2日前。
フレッダは、鎌倉花火大会の主催から招かれ、逗子マリーナに来ていた。
翌日の花火大会で屋台を出すためだ。
”東京湾の船上かき氷屋”として
今や、フレッダを知らぬものはいない。
彼女の噂は全国の祭り関係者に広がっており、
今や各地から引っ張りだこの人気者なのだ。
ウサ子は、フレッダが
こちらの世界に来てできた初めての友達だ。
1,000年前、フレッダは、
強い相手がおらず、ホームシックになったことがある。
その時、自分を慰めてくれたのが、
グリーンランドの平原で出会ったウサ子だったのだ。
ウサ子は、こう見えて頭が良い。
言葉は理解するし、フレッダに対する思いやりもある。
すっかり仲良しになったフレッダはウサ子にエーテルを流し込んだ。
すると、それ以来ウサ子は歳を取らなくなった。
ウサ子は、雪ウサギだから当然だが暑がりだ。
いつもは『あたし号』のマイナス0度の部屋で
フレッダの帰りを待っている。
しかし、昨日に限ってついてきてしまった。
鎌倉の花火大会をみるため、屋台に忍び込んでいたのだ。
そしてフレッダが目を離した隙に、
ウサ子がいなくなってしまった。
500年前に1度、ガーディアンがフレッダを動揺させるため、
うさ子を誘拐したことがある。
その時は、フレッダがキレて犯人は氷漬けにされた。
そして、一晩のうちにガーディアンのヨーロッパ支部が潰された。
フレッダ一人の仕業だ。
幹部が全員倒され、
壊滅的な打撃を受けたガーディアンは、序列が3位に落ちてしまう。
立ち直れないと判断した上層部は、本国No2の妹、
戦場のエースだった三条マリア茜を呼びよせて、再起を図った。
結果的にライバルがこちらの世界に来て、フレッダは喜んだ。
しかし、500年以上たっても、三条との再戦は実現していない。
今回もフレッダは、ガーディアンが怪しいと睨んでいる。
目の前の俺をガーディアンの眷族と思い込んでいるようだ。
しかも、俺は時間を止めた世界で動いているため、
ガーディアンでも中級以上の眷族、
もしかすると上級眷族の可能性が高いと感じている。
俺を倒せば三条茜が出てくるという期待もある。
後から知ったことだが、
今回も、ガーディアンがウサ子を連れ去ったようだ。
しかし、ガーディアンも人(眷族)の子。
花火に気を取られている隙に、ウサ子に逃げられた。
ウサ子は主のもとへ、ひと晩中駆け続けたが、
初夏の気温のせいで、軽い熱中症に冒されてしまった。
そこへ俺が現れた訳だ。
◇
一方、
フレッダは、久しぶりに心が弾んでいる。
2,3発、エーテルをぶち込めば、
大概の奴は、逃げるか降参してくる。
しかし、目の前にいる、ひ弱そうな少年は、
どんな技を繰り出しても、平然とかわし続けるのだ。
まだ、一度も攻撃を見せてこないが
少年からは、溢れんばかりのエーテルを感じる。
もしかしたら、自分より上かもしれない?
しかし、技があまりにも素人だ。
訳が分からない奴だ。
フレッダは心の底から喜んでいる。
「うふふ、こんな奴、茜ちん以来なのだ。
おい、お前、そろそろ反撃しても良いのだぞ。
そうじゃないと面白くないのだ。」
「お前、もしかして楽しんでないか?」
「お前じゃないのだ、フレッダなのだ。」
「じゃ、フレッダ。
いい加減に俺が誘拐犯じゃないこと認めてくれよ。」
「うん、いいぞ。認める。」
「良かった、それじゃ…」
「認めるが、面白いからバトルを続けるのだ」
「なんだ、そりゃ」
フレッダが、何かボソボソ言い出した。
ツインテールの2メートル頭上で、氷が固まりはじめる。
こいつ、詠唱を始めやがった。
でかい技を狙ってきたのだ。
「おい、もう止めようよ」
「おーい、フレッダさーん」
「フレッダちゃーん」
完全無視だ。
もう、氷の大きさは100メートルを超えてる。。。
更に氷は巨大化を続け、目の前に氷山がそびえ立った。
これは時間を戻しても、よけることは不可能だ。
<<< ミシミシ、ドッガーン! >>>
こいつ、氷山を投げてきやがった。
逃げられない。仕方ないがタイムリープだ。
――――――――――――――――――
3秒前に戻った。
それでも氷の大きさは500メートルある。
フレッダには、三条や、カレンの時みたいな
直接攻撃はできない。
相手は何と言っても8歳ぐらいの子供なのだ。
氷山のデカさから、
俺は10秒かけても攻撃から逃げられないと悟った。
しかし、このままでは死んでしまう。
その時、ウサ吉(本当はウサ子)が、
何かを伝えようとアイコンタクトを送ってきた。
ウサ吉、、、どうしたんだ?
ウサ吉のつぶらな眼を見ながら、俺はひらめいた。
ウサ吉には、氷のシールドを作ってあげたが、
同じように炎のシールドで、体を包めば、
俺の周りだけ氷が解けるんじゃないか?
俺は素早く、炎のエーテルを薄くのばし、自分に巻きつけた。
――――――――――――――――――
<<< ミシミシ、ドッガーン! >>>
時間が動き始めた。
何度見ても、この小さな体で氷山を投げてくるなんて
無茶苦茶な児童だ。
頭の上から氷山が落ちてきた。
しかし、一瞬にして、俺の周りだけ氷が蒸発していく。
最後は、氷が蒸発して
ぽっかりと開いた穴の中に、俺は立っていた。
「すごい、すごすぎるのだー!
本当にお前は楽しい奴なのだ。」
面倒くさい児童には、大人のお仕置きが必要だな。
さすがに、このエーテルおばけに正面から戦っても勝てない。
しかし、大人の知恵があるのだよ。
それっ!
俺は氷のエーテルを使い、雪ウサギのフィギアを
1000体ほど作り、俺の周りに並べた。
自分が好きなフィギアは、みんな壊したくないものだ。
そのオタク心理をついた、超兵器である。
「うっ、これは!」
「か、かわいいーーー。なんだこれ、天国か?
ウサ子のワンダーランドなのだ!」
児童が、氷のウサギたちの中に走って突っ込んでいく。
もう、戦う気がなくなったのか、寝転んで遊んでいる。
( 勝った! )
俺は心の中でガッツポーズを取った。
「相変わらず、天野君はズル賢いですね。」
「いやいや、これこそ私が認めたヒカルなのです。」
聞き覚えがある2人の声が後ろから聞こえる。
目の前で横たわる幼女。
その前で勝ち誇ったようなポーズをとる俺。
その後1週間、俺はこの2人から
「ロリコン男爵」と呼ばれることとなるのだった。
゜*。,。*゜*。,。*゜*。,。*゜*。,
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