【閑話】 みあの休日 後編
自宅のリビングから一瞬で神界についた。
あたりが静かだ。この時間、神界は深夜である。
神界のサロンは24時間営業中だ。
さっそく私はイデアとヴィオラをサロンに呼び出す。
エーテル通信が帰ってきた。
『えー、今からなの?明日じゃだめ?』
イデアは、昔から夜が早いので熟睡中だったらしい。
『わかったわ。私も用事があったのよ』
ヴィオラは、物分かりが良い。すぐに来るそうだ。
2人とも眠かったが、
昨日のことでミアが怒ってるのでは?と
文句も言わず恐る恐る、出かけてきた。
それにしても、ここも久しぶりだ。
相変わらず深夜というのに客でいっぱいである。
顔見知りのオーナーがあいさつに来た。
「ミ、ミア様、しばらくぶりですね。
お元気そうで何よりでございます。」
「こんばんは。久しぶりですね。」
「今日は、どういったご用向きで
こちらの世界へいらっしゃったのですか?」
客のほとんどが、私たちの会話を聞いている。
そんなに私の話を聞きたいのかしら?
「そうね。今回はガツンと言ってやりに来たのよ」
<< ざわ、ざわ >>
「ミア様が怒ってらっしゃるぞ」
「また、けが人が出るぞ」
失礼な。毎度毎度、
こっちの世界に喧嘩をしに来ているみたいじゃない。
「ミア、その言い方は、さすがに誤解を招くわ」
「イデアの言う通りです。
ミアは、私たち旧友に会いにいらしたのよね」
サロンの入り口に、
紫色のリボンで金髪を1つに束ねた少女と、
アップロングヘアに委員長メガネの少女2人が立っていた。
ヴィオラの紫のリボンは、みあのリボンとおそろい。
眷族から『死神様』と呼ばれ、恐れられているが、
実はミア同様に可愛いものが趣味である。
イデアは、今日も側近の眷族を連れている。
スラリとした体形に、青い髪と水色に光る眼をした美少女だ。
イデアがテーブルに着くと、その側近が
手際よく、紅茶をカップに注ぎ、3人の前に置いていった。
「ありがとう。葵ちゃん。お久しぶりね。」
「ミア様。いつもお美しく、喜ばしい限りでございます」
葵と呼ばれた少女が片膝をついて会釈した。
「そういえば、うちの茜ちゃんは、
ミアと同じ学校に通っているのですよね。」
「三条茜さんは、とても勘所が素晴らしく、
私にとってはなくてはならない存在です。」
「まぁ?」
「!!!!!」
まさか、気難しい、ひねくれもののミアが、
眷族を褒めると思わなかった。皆が驚いた。
「あの茜ちゃんがねー。
良かったわね、葵ちゃん」
「ははっ。
我が愚妹がミア様から、そのようなお褒めをいただけるとは…。
誠にありがとうございます。」
この前、お好み焼きの焼き加減が良かったので
褒めただけなのに、2人に感激されてしまった。
そろそろ本題にはいらなくちゃね。
「あら、この紅茶、とてもおいしいわ。」
「ミア様、ありがとうございます。
こちらのクッキーも召し上がりください。」
葵は、自分の紅茶を褒めてもらえたので
喜んでクッキーを盛りつけた皿を持ってきた。
三条ソフィア葵。
茜の姉にして、ガーディアンのNo2。
文武両方に優れ、アールブヘイムで並ぶものがいない。
若くして神界に呼ばれたイデアのお気に入りだ。
( まさか、お菓子の才能まであったとは? )
ぜひ、こんど我が家でじっくりと焼いてもらおう。
「こちらのクッキーもいけるわねー。」
私が機嫌を良くすると、みんなニコニコしている。
あれ? 私、何をしに来たんだっけ?
テーブル越しに、和やかに笑顔を浮かべていたが、
一瞬、ヴィオラが、私の視線を避けた。
そうだ!
あのパーティ(抗争)のことを問い質しにきたのだ。
「いけない、いけない。思い出したわ。
今日来たのは2人に伺いたいことがあるからなのよ」
<<< ついに来た! >>>
ミアをのぞく3人の表情が固まる。
「なぜ、カレンちゃんとヒカルが戦う機会が設けられたのに
私には知らせが来なかったのかしら?」
「私は、ミアがヒトを加護しているなんて知らなかったわ」
いち早く、ヴィオラが、みあの追及対象から逃れた。
≪ヴィオちゃん、一緒に叱られよう、って言ったじゃないのよ≫
小声で、イデアがヴィオラに不平をもらす。
ヴィオラはそっぽを向いている。さすがは死神である。
「三条茜さんは知っていたようです」
「彼女から話を聞きましたよ。
そんな面白いパーティ(殺し合い)があったのに、
見ることができなかったなんて。悔しくて仕方ありませんわ」
知らず知らず、みあの覇圧がかかり始める。
そばにいた葵は立っていられず、膝まづいた。
イデアは、真正面からミアの圧を受けても平気だ。
「あなた、たこ焼きフェアがあると言っていたでしょ。
絶対に邪魔するな、と言ったのはミアよ。」
「あら。私、そのようなことを言いましたっけ?」
「葵ちゃん、用意してくださる?」
葵がエーテル通信のログを残したボックスを用意する。
そこから、私の声が聞こえてきた。
『 あっ、イデア? わたし、ミアよ。
今週は、たこ焼きフェアがあるから、絶対に邪魔しないでね。
それから三条茜は、もうしばらくお借りするわねー。 』
イデアが冷たい目で微笑んでいる。
「「「 ほら、でもさー。 」」」
私、やばいじゃん。そんなこと言ったんだっけ?忘れてた。
「でも、うちのヒカルがピンチになるかもしれないのに
加護者の私に伝えないのは、どうかと思うわ?」
「ミア、さっき、『面白いパーティ』っておっしゃいましたよね。
それに、いつなんどきも加護者が目を離すのは、いかがなものかと思うわ」
「ピューピュー」(口笛)
「知らんぷりをしてもダメです。
既に証拠はそろっているのです。」
イデア。知恵の神。
神界の裁判官をするだけのことはあるわね。
「もう、分かったわよ。イデア、その件は良いわ。」
「そう。もう良いのね。
じゃあ、こっちにお酒をもってきてちょうだい」
空気を察したヴィオラが、店員に酒を頼んだ。
戦闘狂の神が本気で怒ると、神界全体が揺れる。
サロンの客全員が、ひやひやしながら、
2人のやりとりを横で見ていた。
「それで、パーティの行方はどうなったの?」
「ミアの加護者が勝ったわよ。
うちのカレンちゃんと、真田を倒してしまったわ。」
( あぁ、やはり見たかった。。。
でも、たこ焼きフェアも捨てることができなかった。 )
「本当に、あの子は興味深いわね。
どんな器を魂の中に秘めているのかしら?」
ヒカルの秘密についてヴィオラが質問してきた。
私も何かあると感じているが確かめた訳ではない。
「分からないわ。
ただ、呑み込みが早くて器用なだけかしら。」
こんなときは、適当にごまかしておくに限る。
イデアの研究材料にされると、独り占めされるし、
ヴィオラは、昔から何でも欲しがり屋だ。
こちらも面倒なことになる。
「うちの茜ちゃんが成長が早いと言っていたわ。」
「ザンちゃんのように、タイムリープ能力を持っているとか?」
こいつら、相変わらず鋭い。
私のおもちゃ、いや、加護者を横取りされるわけにはいかない。
そう、私は加護者なのだ。
「そのようなことはないわ。おほほほほ。」
「あらら。そうなのね、そういうことにしておくわ。」
2人の追及がここで終わった。
それを見計らって、葵が酒を注いで回る。
酒が回ってきたのか、口も饒舌になってきた。
◇
「ミアがヒトを加護するなんてザンちゃん以来ね。
本当にヒトと縁があるのね。」
「そうそう、世界が3つに分けられたのも、ミアのせいだものね。」
「そうなのですか?」
葵の酌をする手が止まる。
「葵ちゃんは知らなくても当然ね。
貴方たちが生み出される、ずっと前ですもの。」
「あれは、30,000年ほど前でしょうか?
当時、あちらの世界には巨人族というものがいて、
ルチアちゃんを信仰していたの。」
「ルチア様とは、過去いらっしゃった
豊穣の神様のことですね。」
「さすが葵ちゃん、良く学んでいますね。
当時は巨人族がヒト族を従えて、家畜みたいにして飼っていたのよ。」
2人が話す世界はこうだった。
ヒトの世界は、かつて巨人が住んでいて、
ヒトは家畜として飼われていた。
巨人族は賭け事と戦いが好きだった。
しかし、自分では戦わず、家畜のヒト同士を戦わせた。
それは、もめ事を決着する手段で使われ、
ギャンブルとしても、楽しまれた。
やがてヒトの中に、独立心が芽生え始める。
ある者は巨人から逃亡して、ある者は隠れて徒党を組んだ。
そして独立を叫び、巨人に戦いを挑んだのである。
「ヒト族が巨人族に戦いを挑んだ時、
ヒトのリーダーは、ミアの加護者だったのです。」
「そんなこと、あったわね。むにゃむにゃ」
私は朝から忙しかったので、もうおねむなのだ。
そっと、葵がクッションを用意してくれる。
姉妹そろって、良い子ね。
「ミア様は何故、ヒトなどを加護したのでしょう?」
「葵ちゃんも興味あるでしょ。」
「あれ?なんででしたっけ、イデア。」
「あの時は、珍しくミアが喜んでいたから覚えているわ。
ミアが、神器を入れた箱のカギを落として困っている時に、
そのリーダーが、探し出してくれたのがきっかけね。」
「ただ、落とし物を拾っただけですか?」
「カギは火山の火口に落ちていたの。
その者はミアのためにカギを拾い、片腕を無くしてしまったわ。
感激したミアは、腕を治して、加護を授けたのよ。」
◇
酔っ払いの女神たちに代わり、読者に解説するために
話を30,000年前に戻そう。
神々は、昔から何かと野次馬根性が強い。
今回の【ヒトVS巨人】の戦いも、彼らにとっては余興の1つだ。
そんな折、全知全能の神ゼノンからあるルールが発せられた。
『 神は巨人とヒトの争いに関与してはならぬ 』
これにより、例え加護者であっても
ミアは手出しができなくなってしまった。
戦いは、徐々にヒト族が優勢になっていった。
何としても、自分を信仰する巨人族を勝たせたいルチア。
そんな彼女はヒト族のリーダーを暗殺してしまう。
ミアは、ルール違反と加護者の暗殺に憤り、
ルチアを呼び出し、一刀両断で始末する。
ヒトはリーダーが神に暗殺されたことを知り、
巨人を倒した後、神の世界に攻め入った。
さすがにヒトが神界に入ることは、やり過ぎである。
ミアは、ヒトを説得するために動いたが、止まらなかった。
「あの時のミアはヤバかったわ。
まさか神同士で決闘が行われるなんて思わなかった。
しかも、ルチアを瞬殺だったからね。
ミアの強さを見た神は、みんなブルっちゃったわ。」
「だから、ゼノンが八つ当たりしたのよね」
「八つ当たり?」
「葵ちゃんも聞いたことがあるでしょ。
ゼノンが大津波を起こして、ヒトを全て滅ぼしてしまった話」
「はい。学校で習いました。」
「ゼノンは、更に、世界を3つに分け、
アトランティスを一番外の世界に移したの。」
「そうだったわね。当時私たちが住んでいた
アトランティスと呼ばれた土地は、氷の大陸となったのよね。」
「そのあと、アールブヘイムの世界が作られ、
ヒトに対する防波堤としたのですね。」
「でもね、ここからは教科書に出ていない話よ。」
「ゼノンの怒りの矛先は、ヒト族を加護したミアにも向けられたの。
そしてミアをヒトの世界に追放してしまったわ。」
「あの時は、私もミアについていこうと思ったけど、
イデアに止められたのよね。」
「そうよ。ゼノンを相手に勝てる訳がないわ。
そんな無謀にヴィオラまで巻き込むのは、ミアの意志ではなかったもの。」
「そうだったわね。イデア。」
「ミアは、自分の正当性を主張してゼノンに反旗を翻した。
全能の神に逆らう神などいなかったため、神界は大騒ぎとなったわ。」
「それで、ゼノンが神軍を送り込んだの。
でもミアはそれを全て壊滅させたわ。」
「神軍を1人で全滅ですか?」
「それだけではないわ。
続いて、神界の戦士も全て倒し、ゼノンの自宅に上がり込んだのよ。」
「神界の戦士といえば、ゼノンに次ぐ勇者じゃないですか。
それも1人で倒すなんて信じられません。」
「そうよね。私たちも信じられなかったわ。
ゼノンも、軽くイジメて泣かしてやろうと思ったぐらいだったと思うのです。」
「それで、決着はどのようについたのでしょうか?」
「ゼノンとミアの直接対決は1000年間続きました。
しかし、決着がつかず、ついにゼノンが降参したのです。」
「ミア様、最強ですね。
それで、戦闘狂などという二つ名がついたのですね。」
その時の和平条件はこうだった。
【ミアの主張】
ヒトは滅ぼしても良いが、必ず再生させること。
【ゼノンの主張】
3つの眷族を作り、ヒトを監視する。
担当の神として、ミアと仲の良い3人を指名する。
一度、戦いが終わると神同士は仲が良い。
ただ、アトランティスの神々にとって、この事件はトラウマになった。
今もなお、ミアを怒らせるな。が合言葉である。
「このような小さな体で、あのゼノンに勝つなんて、、
どんな神様なのでしょう。」
「そうよね。あっ、ここの勘定は私が払うわ。
あなたとミアには、今回ご迷惑をおかけしたので。」
「ありがとう。今回はヴィオちゃんも大変だったわね。
しばらくは友人として、ミアを見守りましょう。」
気が付くと私は、自宅のベッドで寝ていた。
三条茜が、イデアから呼び出されて、寝ている私を運んだようだ。
゜*。,。*゜*。,。*゜*。,。*゜*。,
今回もお読み頂きありがとうございます。
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