【究極の決断】の果てに待つもの=第1章完結=
ヒカルの通う高校から勢いよく走り出した黒塗りの高級車。
真夏というのに、車内は氷漬けのような寒さに襲われている。
その発生源は助手席のツインテール少女にあった。。
不機嫌そうに頬を膨らませた少女が、足をブラブラさせる度に
車内の温度が急降下していく。
「ちぇっ。ちぇっ。ちぇっ、なのだ。
いつになったら茜ちんと戦えるのだ。」
「必ずチャンスは巡ってきます。
もしも、フレッダ様がレッドシューターと戦う機会が訪れたら、
あの方がお2人にふさわしい舞台をご用意してくださるはずです」
極寒の車内、後部座席のスーツ姿の男が口を開いた。
「ほんとか?」
「はい。三条茜、レッドシューターとの決着も
その時までのお楽しみということですね」
男は懸命に表情を作り、にこやかに答えた。
「分かったのだ。
あの方なら、きっとそうしてくれるのだ。」
車内の気温が、ふっと和らぐ。
それと同時に同乗者たちから安堵のため息が漏れた。
「あたし、今日もお客がたくさん待ってるし、
暇だからバイト行ってくるのだ。
それじゃあ、連絡待ってるぞーーー」
そういうと、少女は走っている車の窓を開けて、
「とおーっ」と叫び、窓から飛び去っていった。
あっけにとられる車内。
窓からは生暖かい風が入ってきている。
「と、とにかくレッドシューターから目を離さないでください」
高級車はそのまま都心へ向かってスピードを上げていった。
◇
次の日、俺は迷っていた。
「あの力を使うべきか、隠し通すべきか?」
隣駅のトレードカードショップ。
今日は待ちに待った「スターライトソルジャー」の
スーパーくじ発売日なのだ。
この作品は、カードゲームで火が付き。今や人気のアニメ番組。
1回700円。A賞はメインキャラの魔法戦士のフィギアだ。
マジカルソードを高く振り上げた姿はマニアの心を刺激する。
(欲しい!ファンにとって、
こんなけしからんフィギアはない。
絶対に手に入れておかないと後悔する)
俺は、A賞が当たるまで何度もタイムリープする誘惑と戦っていた。
だが、力の乱用は江良から禁じられている。
仮に能力が、インスペクターやガーディアンに
バレたら命を狙われるからだ。
しかし、この場には、中学生3人と俺しかいない。あとは店長だ。
どう考えても異世界人はいない。
(これはチャンスじゃね?)
(一度ぐらいなら大丈夫だ)
(やめとけ、江良に叱られるぞ)
俺は心の中の、もう一人の俺と戦う。
しかし。。。
「おーー、やりーー、B賞来たぜ」
坊主頭の歓喜の声が、俺の欲望の背中を押してしまった。
(これで命を落とそうとも、コレクターとしては本望だ!)
俺はコレクターの誇りを胸に命を張ることに決めた。
そして、、、、禁断の扉をこじ開ける。
「はぁ、やっぱりF賞か…」
予想通り、くじの結果は最低のF賞。
だが、俺は負けない。
時間を戻すぞ、俺はやってやるんだ!
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周辺の空気が変わり、
俺はくじを引く前に戻っていた。
よし!
新たに、俺はくじを引いた。
その後、禁断の快楽をしった豚は、
永遠に快楽を求め続けるのである。
------------------ーーー
35回目のタイムリープ、
俺は、遂にA賞を引き当てフィギアを手にした。
「さすがA賞だ、ディテールまでレベル高いぞ」
満足顔でフィギアを見ていると、
フィギアの顔が徐々に江良の顔に変わっていった。
「やってしまったわね。ヒカル。」
「これで、あなたは彼らのターゲットよ。」
「ヒカルの命も今日限り。まったく自業自得ね。さようなら」
「待ってくれ、俺が悪かった。だから見捨てないでくれ」
「無理です。それがヒカルの運命だったのです」
次の瞬間、俺は覆面をした敵に囲まれている。
時間を止めたり、戻したが、戻らない。
江良からもらった指輪も消えてしまった。
俺は江良から見放され、女神の加護が切れてしまったようだ。
「顔はやばいよ。ボディにしな。」
奴らが何度もボディを殴ってくる。
息が苦しい。
なんて人生だ。俺は死ぬ。
苦労して手に入れたフィギアも、
江良に変身して飛んで行ってしまった。
こんなことなら、江良の言うことを聞けばよかった。。。。
次第に視界が暗くなっていく。
◇
「とりゃーーー、着地せいこーーー」
目の前で地面が揺れている。いや、ベッドが揺れていた。
妹が今日も、俺を起こすためにベッドで飛び跳ねていたようだ。
俺のボディに妹の膝が入った。
「うぐ、、、また夢落ちか、、、」
「お兄ちゃん、早く起きなさい、、、
お母さんが起こしてきなさいって!」
悪夢から目覚めさせてくれた妹を怒る気になれない。
俺は黙って起き上がり、いつものように歯を磨きに行く。
妹もついてきて、一緒に歯を磨いている。
「あがががががが」「がらがらがらがら」
「やっぱり、あれはまずいよな。
あいつ神様だし、陰で力を使うと絶対にバレるよな」
(それにしても、夢でよかった。。。)
◇
「おはよ」
「おはよう。ヒカル。やっと起きたわね、
はやくご飯食べちゃいなさい。」
今日は日曜日なので、家族そろって朝食時にテレビを見ている。
画面では、女性のニュースキャスターが甲高い声を挙げていた。
「みなさん、この会社は未だに化石燃料で発電しCO2を垂れ流しています。
大気を汚し、温暖化を進める会社を、これ以上許して良いのでしょうか?」
キャスターの後ろには、電力会社が入っているビルが映り、
市民たちがプラカードを持って叫んでいる。
市民のインタビューが流れた。
老若男女を問わず電力会社に不満を述べていた。
「本当に信じられない、ひどい会社よね。」
味噌汁を吸っていた母の箸が止まり、
延々とこの会社の環境犯罪について話し始めた。
どうやら母は、この会社の悪事について
テレビのワイドショーを見て知ったらしい。
毎日、繰り返し放送されていたようだ。
活き活きと話し続ける母に、父もうなずいている。
新聞を読まない俺は、二人から取り残された。
妹はすでにゲームを始めている。
次の瞬間、俺の目は画面にくぎ付けになった。
キャスターや市民団体のまわりで、
天使もどき、ソウルイーターが見え隠れしているのだ。
今日は弓矢を持っておらず、ハープやラッパを奏でている。
家族には見えていないらしい。
画面がスタジオに戻ると、
ここにもソウルイーターが映っている。
奴は友達の様にキャスターの肩に手をのせて、
画面に向かって不気味に笑いかけていた。
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