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生まれ変わったのですよね?  作者: セリカ
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72 過去の亡霊


 70階層に入る前に休んだ方が良いと判断したので安全地帯とはいえ、ちゃんといつもの拠点は作ります。

 今回は、私が建物を作ったので、ちゃんとクロード先輩の部屋も作ってあげました。

 セリスからは、外に捨てましょうとか言われました。何かあったら、流石にここではまずいので説得しましたが、不満そうです。

 十分に休息してから70階層の扉を開けると、お城の内部みたいで、豪華な感じがします。

 ここで、1つ問題が発生したのですが、扉がしまると、今まで展開していた聖域が解除されてしまったのです!

 何度も掛け直したのですが、すぐに消滅してしまうようなので、どうもエリア結界のような魔法が禁止されているみたいです。


「シノアちゃん、どうもフィールド魔法が適用されないエリアみたいですが、うちはどうしましょう?」


「まあ、最後ぐらいはまともに攻略しろという事なのでしょう。ステラさんは、クロード先輩とキャロを優先的に守って下さい。後は数が多い時だけアンデットの浄化の魔法で減らしてくれればいいです」


「わかりましたが、それで良いのですか? シノアちゃん達を強化支援すればほとんどの敵が雑魚になってしまうと思うのですが?」


「今でも十分に強くなったのですから、問題無いと思います。後は、楽がしたいのですが、私も少しは動きたいと思ったのですよ」


 正直言って、強さで圧倒して楽するのは好きなのですが、今回は抱き着かれていて歩いていただけとか、私の求める楽ではありません!

 サテラとは違った意味で、ステラさんは過剰戦力と思いますね。

 しかし、ここに現れる相手は確かにアンデットなのですが、みんなそこそこのレベルで名前があるのです?

 お城の兵士に相応しく、戦士や騎士もまるで生きていた頃のように動きが良いです。

 たまに上の方の物陰に弓兵の部隊に混じって魔術師もいるので、結構めんどいです。

 まあ、飛び道具や魔術の防御は、ステラさんが盾をいくつも作り出して器用に防いでいます。

 あの普段の人物像からは想像できないほど的確に攻撃を無力化していくのには驚くばかりです。

 なので、支援はステラさんに丸投げで、みんな積極的に戦闘を開始しています。

 正面は、エルナと強化支援を貰ったクロード先輩に任せていれば特に問題は無いみたいだし、シズクは強そうな個体を見つけると進んで倒しに行ってしまうのです。精神耐性の魔法はもう要らないと言ってましたが、大丈夫なのでしょうか?

 ステラさんが魔法を掛けようとしたら……。


「もう恐怖を克服したので大丈夫です! いまの私に恐れるものは無くなったので、剣が鈍る事はありません!」


「本当に大丈夫なのですか?」


「お姉様、アニメや漫画の主人公は、試練を乗り越えると、どんな事でも克服する設定なのです!」


「えっと……それは、お話の中だけですよね?」


「私から見たら、この世界はお話の中みたいなものですよ? こんなに個人が無双するとか、アニメや漫画以外にはあり得ません。私は精神的にパワーアップしたのです!」


「はぁ……シズクがそう思うのでしたら、きっとそうなのですよね」


「これで、私はお姉様の最強の剣への道にまた近づきました!」


 まあ……本人がそう言っているので、問題は無いようです。

 漫画みたいに精神の修行をしたら、平気になったらしいのですが、思い込みって、すごいですね。

 以前なら、確実に漏らすか固まって意識が飛んでいたのに、この数日で克服するとか、慣れたのか開き直っただけではないのでしょうか?

 まあ、これで安心出来るので問題は無いのですが、相変わらず必殺技名を言いながら倒すのだけは変わらないのです。あれは何とかならないのでしょうか?

 セリスも戦いに参加しながら、こまめに回収していますがマメですね。

 遠距離攻撃をしてくる相手は、カミラが処理してくれているのです。普通の矢に聖属性を付与しながら撃っていると思っていましたが、命中すると相手の上半身が吹き飛んでいるのです。魔弾の力も上乗せしてますよね?

 私も武器に炎を付与して倒しています。やっぱりこの武器は基本が闇属性なので、聖属性が乗らないみたいです。

 目的地が玉座の間みたいなので、この国のお城に行った事のあるエルナとクロード先輩の方が道案内に向いていると思ったのです。どうも城の中身があまり変わらないみたいです?

 クロード先輩などは、なんか久しぶりに来た気分とか言ってます。


「なんというか……この城の作りって、古臭い感じがするが、今の城の構造と変わらん気がするな……外観も似ていたし、まさかな……」


「そうなのですか? そう言えば、私はお城の方には行った事がありませんが、あそこに女神様がいるのですか?」


「俺は拝謁した事は無いが、玉座の奥の間にいるらしいぞ。まあ、俺には関係ないので、どうでもいいけどな」


「自分の国の主なのに軽い扱いですねー。ましてや、王子なのにそれで良いのですか?」


「王族なんて言っても殆ど実権の無いお飾りなんだぜ? あんなものになりたいなんて、兄貴とユリウスは物好きだと俺は思っているぜ。この国で権力を手に入れるのだったら、公爵家のエルナかオリビアと結婚した方が堅実だな」


「殿下、私は誰にも嫁ぎませんよ? ユリウス殿下とのお話も昔にありましたが、丁寧にお断りさせてもらいました」


「な? 王族が指名して縁談を持っていっても簡単に断られるんだぜ? 今は、マルグレット公爵家がこの国の権力ををほぼ握っているから、対抗出来るヴァレンタイン家と親族になりたかったみたいだが、エルナには悪いんだが、あそこの公爵夫人は曲者だから、引き込むのは無理だろうな」


「お母様は傍観しているだけですよ?」


「最近は、王家寄りだったシュタイナー家もヴァレンタイン家と仲良くなっているみたいだから、マルグレット家は焦っているみたいだな。この国の3大公爵家は互いに牽制していたのに、その二つが手を取り合っているので、自分の地位が脅かされると思っているのだろう」


「シュタイナー家は、オリビアの御両親が亡くなられているので、祖父の方が取り仕切っていますが、実質的な当主として運営しているのはオリビアのはずです」


「まあ、その実質的なご当主様は、誰かさんに盲目的な愛とやらが目覚めてしまったから、元々縁談をあしらう程度だったのが、全て断るようになったので、何とか病床の兄の方にアプローチしているらしいな」


 関心が無いとか言ってますが、意外と物知りですね。

 エルナは知ってても知らないフリをするから、何だかんだで色々と知っているかもね。


「両親がいない事も知りませんでしたが、オリビアにお兄さんが居たのですか?」


「シュタイナー夫妻は事故となっているが、暗殺された話が濃厚だな。兄貴の方は生まれつき体が弱いらしくて、ずっと屋敷で過ごしているそうだ」


「暗殺とは穏やかではありませんね」


「まあ、あそこの家は諜報とか色々とやっていたので、没落させられた貴族に復讐されたとの噂だが、どうなんだろうな? エルナなら、知っているんじゃないのか?」


「殿下、私は知りませんよ? お母様に色々とお話は聞かされていますが、逆恨みなどと言っていた記憶があったかも知れませんね?」


「複雑な事情がありそうです。貴族というのは大変ですね」


「お前もその貴族だろ?」


「私は、ここに来るまでは貴族ではありませんでしたからね。ただの世間知らずのか弱い小娘ですよ?」


「お前がか弱かったら、この国の冒険者は殆どがそれ以下になっちまうな……ユリウスには最近見つかった身内だったと話を聞いたが、怪しくなってきたな。そもそもお前とエルナは従妹だと聞いているが全く似てないからな」


「それが真実だったら、どう致しますか?」


「俺は別にどうもしないが、この国を出る時は俺も一緒に連れて行ってくれると助かる。お前と一緒なら、長生きできそうだし、面白そうだからな」


「その時まで、クロード先輩の考えが変わらなかったら、考えておきますよ」


「よし! その言葉を忘れるなよ!」


 話していると意外と面白いので、クロード先輩の事は気に入っているのですよね。

 当然、反対意見が来ましたが。


「シノア様!? その男を連れて行くつもりなのですか?」


「男性も居た方が何かと良いと思うのですが?」


「シノア様……連れて行くのでしたら、もう少し品の有る者にした方が良いかと思います。その者は下心に溢れている淫獣に決まっています」


「おいおい、セリスさんよ。俺はこれでも女性には紳士的に振舞っているんだぜ?」


「誰が私の名前を呼んでも良いと言ったのですか? 貴方に呼ばれると魂が汚された気分になって来ます」


「ひでーなー、そこまで言うのかよ。俺好みの美人なのにちょっと傷つくぜ」


「貴方の好みとか、けがわらしい……考えただけでも吐き気がします。まさかとは思いますが、入浴の時に覗いていなかったでしょうね? シノア様の事だけを注意をしていたので、他の事は気にしていませんでしたが、もし私の裸を見たら目を潰しますからね」


「そんな事はしていないが、そこまで言うのなら、いつかそっちからその気にさせてやるからな!」


「馬鹿な事を言ってます。そんな事は永遠に無いので、無駄な努力は止めて下さい。改めて、言っておきますが、少しでもいやらしい事をしたら、斬り落としますのでしっかりと覚えておいて下さい」


 相変わらずセリスのクロード先輩に対する態度がきついですね。

 これだけ言われているのにめげない人もすごいですが、カインさんより更にマイナスからのスタートだから、恐ろしくきついルートですよ。

 そんなやり取りをしながら、最上階まで来ました。この扉の向こうが玉座の間らしいのですがさて、私達の相手はどんなボスが登場するのでしょうね?

 少し休憩をしてから、扉を開けると玉座に座っている人と左右に魔術師らしい者と正面に3名の騎士がいますね。


「ここに辿り着くとは、其方らはかなりの実力者のようだな」


「おや? もしかして、意思があるのですか?」


「うむ、余は戦場で散るのなら満足だったのだが、病などで死ぬのには耐えられなかったので、アストレイア様にこの国を見守る者にしてもらったのだ。宮廷魔術師だったこやつに頼んで、不死人にしてもらったので、この階層の主には相応しいだろ?」


「おい、シノア。俺はあの爺さんを見た事がある気がするんだが……」


「ほぅ? まさか、我が血族の者がいるとは驚きだ……余の倅共は惰弱なお飾りしかいないと思っていたが、そなたのような気概がある者がいる事は喜ばしいな」


「思い出したぜ! この国の初代国王の肖像画の爺さんだ! まさか、ダンジョンのボスになっているとは、俺も驚きだぜ!」


 まさかのこの国の王様の亡霊でしたか!

 初代とか言ってましたが、どのくらい昔の人なんでしょうね?

 ちょっと、このおじいちゃんの強さはどのくらいかな?




 名称:マルス・バートランド


 種族:死人


 年齢:


 職業:ロード・ナイト


 レベル180


 技能:最上級剣術 上級体術 中級聖魔術 上級物理耐性 中級魔術耐性 気配感知 危険感知 気配遮断 魔力感知 見切り 痛覚遮断 威圧


 固有能力:大地の女神アストレイアの加護 




 元使徒だった見たいですが、レベルは少しですが私達より上ですね。

 今回は、キャロのレベル上げと決めていたのですが、一応、私のレベルは178まで上がっています。

 私がどちらのパーティーにも存在している状態でしたが、キャロも81まで上がっていますので、中々の成果です。

 エルナではちょっと厳しそうですが、シズクならレベル156まで上がっていますので、互角に戦えるような気がします。


「お主達のリーダーに頼みがあるのだが、聞いてはもらえんかの?」


 リーダーという言葉にみんなが一斉に私を見るのですが、こういう時はエルナかカミラにした方が良いと思います。

 私のような見た目も完全な小娘では、舐められてしまいますよ?


「どうも私のようなのですが、何なのでしょうか?」


「うむ、我が子孫と軽く剣を交えてみたいのだがどうかな?」


「クロード先輩、ご指名ですよー」


「俺かよ。ところで、まともに戦って、俺は生き残れるのか?」


「えっと……クロード先輩も頑張って強くなりましたが、残念な事にレベルが112も多いですね」


「無理だろ! ステラ嬢ちゃんから、強化支援をもらっても絶対に死ぬぞ!」


「まあ、死んでも蘇生して上げますから、感動の一族の対決でもして来て下さい」


「死ぬ事が前提とか嫌な対面だな……まあ、ご先祖様と戦えるなんて、こんな機会は無いだろうからやるぜ」


「おっけいらしいので、コテンパンにしてやってください」


「では、軽く揉んでやるので、掛かって来るがよい」


「俺を励まさずに、相手に俺を叩きのめせとか言うとか、お前もひでーなっ!」


 それから、なんか訓練みたいになっていますが、クロード先輩の剣はおじいさんに全く当たりませんね。

 しかも、剣の甲で叩かれたり、蹴飛ばされて転がっています。

 どうも殺す気は無いので、本気で稽古を付けている感じですよ。

 私としては、手足とか首が刎ねられるのを予想していたのですが、残念です。


「くそったれが。何で当たらないんだよ!」


「まったく我が子孫は、剣をまったく理解しておらぬの……ただの力押しとか貴様の頭の中身は筋肉でも詰まっているのか?」


 なんと……ご先祖様からも脳筋の烙印を押されていますよ!

 クロード先輩は、突撃するだけの猪野武者が確定みたいなので、重戦士とかになってます。私に職業を書き換えれる権限でもあったら、脳筋戦士にしたいなー。

 

「じいさんだって、剣で叩く以外にも俺を蹴り飛ばしているじゃねーかー!」


「余りにも情けないので、突撃するだけの獣を蹴り飛ばしているだけだぞ?」


「くそ……俺は猪か……」


「もう十分にわかったので、お前は見学でもしているんだな。良くはないが、意気込みだけは認めてやろう」


 ボロボロにされているのを見ているのは楽しかったのですが、お終いのようです。


「では、そろそろ私達と戦いますか?」


「我が子孫は例外として、其の方らは別格のようだな。しかも、昔に見たクロノスの使徒を連れているようだな。姿が少し違うが、見覚えがあるぞ」


「まあ、クロード先輩はバイトで連れて来ただけですからねー。それにしてもステラさんを知っているのですか?」


「余の記憶が確かなら、そやつは守護の天魔族に違いない。その武器と変わった服装をしている天魔族などあやつしか知らん」


「よく天魔族とわかりましたね」


「この世界で翼を持つ者は天魔族以外には魔物か悪魔と飛べる亜人しかいないが、天魔族は独特の美しい翼を持っているからな」


 翼って……ちょっと後ろを振り向くとステラさんが少しだけ浮いて……いつの間にか飛んでます!


「ちょっと、ステラさん! 何で翼を出して、浮かんでいるんですか!」


「えっ!? ダメなのですか? うちはする事が無いみたいなので、ちょっと浮いて傍観してようと思ったのです? それに浮いている方がふわふわして楽だから、いつも待機している時はこうしていたので……」


「現在、天魔族は滅亡してしまっているらしいので、出来ればあまり知られたくなかったのですが……」


「そうだったのですか! そう言えばうちの村は最後の集落だったので、滅ぼされてしまったから生き残りはもういないはずでした……でも、サテラちゃんが言ってましたが、シノアちゃんがいるから、滅びはしないって……」


「ステラさんは、もう喋らないで下さい! 天魔族に関する事を口にしたら、おやつは無しです!」


「それは嫌です! うちはもう二度と口にしませんので、許して下さい!」


「ほう……その話の内容からするとお主も天魔族になるのだな? しかも、悪魔と謳われた相方の天魔族の方も復活しているみたいだな。アストレイア様から聞いた話では、どちらも死んだと聞かされているが……そうか! 昔に見た姿と違うのは、英霊として復活したのだな!」 


 このおじいさん、詳しいよ!

 

「おい、天魔族ってなんだ?」


「知りません。ステラさんとそこのおじいさんがボケているだけです。クロード先輩は、忘れて下さい」


「シノアもステラちゃんのように羽が出せるのですね! ぜひ私に触らせてください! サテラちゃんとステラちゃんの羽はしっかりと堪能しましたが、とても気持ちが良かったです!」


 一番知られたくない子に知られてしまいましたよ!

 私は自分の意思で出せないのですが、帰ったら特訓とか言って何かさせられる予感がします!


「我が子孫は歴史も学んでおらんのか? まったく嘆かわしい……この世界の守護者の末裔であり、最強の戦士の種族と言われている存在だぞ」


「ほう、するとシノアはその末裔とかなのか? 最強とかすげーな、お前が異常に強い理由が理解出来たぜ」


「知らないと言っています! ちょっと、おじいさん! これ以上説明をするのでしたら、今すぐに貴方達を消し飛ばしてさっさと次の階層に行きますよ! カミラ、次に天魔族の話題が出たら、全力で行きますからね? クロード先輩もこれ以上聞いたら、剣の代金の金貨500枚を払ってもらいますからね?」


「仕方ありませんね。不本意ですが、その意見には賛成なので、私も全力で対処致します」


 カミラとしても、過去の事を知られるのはノアに止められているので、協力的です。


「おい! 剣の値段が跳ね上がっているぞ! そんな金が俺にある訳ないだろ!」


「返し終るまで、お屋敷で雑用としてこき使ってあげます。学園も休学してもらって、返済が終るまで絶対に出しませんからね? 逃げれないように私の誓約魔術で縛りますから、セリス辺りが喜んで協力してくれますよ」


「お前は悪魔か! もう聞かないから、頼むから勘弁してくれ!」


「私はとても聞きたいのです。後でお話があります。勿論ですが、教えてくれますよね? どうもみんなの反応を見ていると、殿下は別として、私とキャロだけ知らないみたいですね?」


 クロード先輩は良いとして、エルナはどうすれば納得させられるのか頭が痛いです……エレーンさんが使えるという忘却の魔法がすごく欲しくなりました……。

 今のやり取りで、把握している者まで見破るとは。流石は猫被りのお嬢様です。

 こうなったら、以前のようにカミラに丸投げしてしまいましょう!

 その為のお目付け役なのですからね!


「カミラの方が詳しいので、エルナの大好きな尋問でもしてあげて下さい。出来れば私の知らない事も聞きだして教えてくれると嬉しいですね」


「どうして、カミラの方が詳しいのですか? 私は尋問などしません。目の前で必死に考えている人の行動を観察するのが好きなだけですよ? 最近のカミラは隠し事が多いのは知っていますが、ついでに全て聞き出す必要がありますね?」


 その笑顔で謎の威圧をして質問攻めにするのを尋問というのですよ。

 私はともかく、他の人には、壊れていても公爵家のお嬢様なのです。本人は使わないけど無言の権力がありますから、この国でエルナに意見出来る者など限られてしまいます。

 例外なのが教育係だったリンさんぐらいなのですが、昔から仕えているメイドさんの家系なのに遠慮が無いのがすごいです。


「私に隠し事などありませんよ……エルナ様、私は何も知りませんので、聞き出すのでしたらシノアに……」


「いま、はっきりと確信致しました。カミラが嘘を吐いているのは明白です。貴女は気付いていないかも知れませんが、私には貴女が隠し事をしているとすぐにわかるのですよ? この間の説明も、私を上手く騙しているつもりでいたようでしたので、面白そうでしたから納得したフリをしていただけですからね?」


「……そうだったのですか……」


「カミラがあんなに必死になって、私を説得しょうとして説明をするので、可愛いと思って聞いていただけです。これだけはっきりとした事が起きてしまったのですから、もう話してくれますよね?」


「……」


 エルナの前で挙動不審な態度を取ったら、絶対にダメですよ。

 少しでも目が泳いだら、絶対に信じてくれないのですから。嘘でも真実のように自信を持って説得すれば、一応は納得させられるのに、下手な言い訳などしたら、次の時に絶対に追い込まれてしまいます。

 エルナの恐ろしい所は、最初は納得したフリをして覚えおいてから、確実な証拠を集めて、次にその話題になったら、徹底的に追及してくる所なのです。

 普段から、その人の仕草や癖などをしっかりと覚えていますから、少しでも違和感があるともうダメなのです。


「……シノアが余計な事を言い出すから……元はと言えば、そこの死人のじじいが……このままだと私は……」


 なんか珍しくカミラが暴言を吐いてますよ!

 まさかカミラの口から、じじいとか聞けるなんて予想していませんでした!


「何やら、その娘の脅威度が上がってきたのう……」


 死人なのに焦っていますよ!

 感情が豊かなアンデットですね。


「ちょっとシノア。いまから私の全力で、この死体を消しても良いですよね?」


「えっと……私は構わないのですが、一応は貴女の国の開祖ですよね?」


「こんな口の軽い死体は存在してはいけません……私の信仰対象は1つしかありませんので、問題有りません」


 構えている弓に恐ろしくマナが集まっています。カミラの持てるマナを全て集めているみたいですが、あれに魔弾の力も加算していると思うと、多分おじいさん達はこれで消滅しますよ。


「待つのだ!」


「死体の癖に命乞いとか意味がわかりません? もう少しで私の全てのマナが集められますので、そこで待っていて下さい。確実に消し飛ばします」


 レベルが高くなった分だけマナの容量が増えていますので、一撃に全てを集めるとあんなにすごくなるのですか。

 ちょっと、あれを喰らったら、こないだの氷龍のおっちゃんでも、多分ですが、確実に消し飛びますよ。


「余がまずい事を言ったらしいが、その後の事は其の方らの問題じゃろ? せっかく余が出れたのだから、せめて剣で戦わせてくれんかの? 普段はこやつらがこの部屋のボスとして相手をしているのだ。余が目覚めれたのは久しぶりなので、この年寄りにも機会をくれないか?」


「おじいさんは、剣で戦いたいのですか? そちらの臣下の方達と連携をして攻撃して来ると思っていましたよ」


「本来ならばそうなのだが、あの娘の攻撃を受けたら確実にこちらが全滅するのは、余にだってわかるぞ?」


「そうなのですか?」


「余の臣下にあの攻撃を防ぐほどの防壁を張れる者などおらんからな」


「はい! うちなら、いまの力でも防げます!」


「ステラさんは、黙ってて下さい。次に良いと言うまでは発言を禁止します」


「うちがすごい事をアピールしょうとしたのに……褒めてもらえない……」


 ステラさんは、犬ですか!

 はぁ……サテラの気持ちが今だけはとても理解出来ます。

 しかし、あれを防げる魔法があるとか、見てみたいのですがどんな魔法なのでしょうね?


「シノア、そろそろお話は終わりましたか? 用意が整いましたので、私は早くその無駄口を塞ぎたいので、撃ちたくて仕方ないのですか?」


「らしいのですが撃っても良いですか?」


「済まぬがこの通り詫びるので、余に其の方らの中で優れた剣士と戦わせてほしい。余が敗北すれば次の階層への道は開くので頼めぬか?」


 以前の骨といいアンデットというのは、意外と感情が豊かですよね?

 私の知識では生者を呪うような存在だったと思うのですが……このおじいさんを見ていると、剣で戦いたいだけのおっちゃんにしか見えなくなってきました。


「仕方ありませんね。そういう事なので、撃つのは止めてあげて下さい」


「うむ、中々話の分かる娘だな。生きていたら、余の妃にしたいところだ」


「……わかりました。ここでは貴女に従う約束ですからね。しかし、同じ話をしたら迷わずに撃ちますので注意して下さい」


 すごく不満そうです。何となく、私って人の良いおっちゃんとかおじいさんって、好きなんですよね。


「流石におじいさんは範囲外なので、生きていても遠慮致します。では、うちの最強の剣士を御所望らしいので、シズクにお願いしますね」


 私が指名すると、なんかポーズを決めて前に出てきましたよ。

 出来れば恥ずかしいので、普通に戦ってくれる事を祈るばかりです。


「ご指名ありがとうございます。お姉様の最強の剣の桂昌院 雫と申します。おじいさんは中々の手練れと見ましたので、私も全力で戦わせていただきます!」


「幼き娘なのに礼儀正しいのう。余の子孫とは大違いだな。余は、マルス・バートランドと申す過去の剣士だ。余の我が儘に付き合ってくれた事に感謝するぞ」


「それでは、いざ尋常に勝負です!」


「其方の実力を見せてもらうぞ!」


 お互いに向き合って、会釈をした後に剣を抜いて構えています。さっきまでの雰囲気が無くなって、おじいさんから感じる気迫が別物です。

 いつものシズクなら速攻で斬り込むのに、慎重に間合いを詰めるように動いています。

 私には、この手の事はいまいちわからないのです。このような立ち合いは初めて見たのですが、いつまでこうしているのでしょうね?

 シズクが先に動いたのですが、私にはまったく見えない刀をおじいさんが受け止めていますよ!

 私だといつも寸止めされて指摘されるので、シズクには教わってばかりです。

 言っている事は理解出来るのですが、私の体が動きに付いて行けないのですよねー。

 おじいさんの剣も年寄りなのに凄そうな剣捌きなのです。まともに打ち合わずに流しているシズクもすごいです。


「おじいさんの剣は私が今まで戦ったどの剣士よりも優れていますね。サテラお姉ちゃんは別として、まったく隙がありません」


「お嬢ちゃんも最強の剣と言うだけはあるのう。余の剣がまったく手応えがないとは、まるで、舞い散る葉のようだ。しかもその若さでそれだけの剣捌きとは恐れ入ったぞ」


「毎日の修行は欠かしていませんので。私はこの世界で最速の剣を目指しています。サテラお姉ちゃんに負けてからは、更に厳しく鍛錬しているつもりです」


「あの化け物の槍使いか……余も生前に見逃された覚えがあるな。見込みがあるので殺すには惜しいと言われてからは、余も死ぬまで鍛錬を欠かした事は無いが、再戦する前に余の命が終わってしまったのが悔やまれるわ」


「私に勝てたら、サテラお姉ちゃんと戦わせてあげますが、私に負けるようでは届きませんからね」


「この身は死したが、そのような事を聞いたら、負けられぬな。勝って再びここに連れて来てもらおうか!」


 なんだか、勝手に約束をしています。シズクが負けたら、またここに来るのかな?

 それにこの階層のボスは倒すともう会えない筈なので、倒してしまったら、次は無いかと思います。

 別に良いのですが、英霊召喚をすれば強制的に呼べるんだけど、黙っておきましょう。

 おじいさんの動きが激しくなって来ました。それを寸前で躱したりしているシズクもちょっと余裕が無さそうです。

 この辺りがレベルの差が関係しているのかもしれませんが、多少の差はそれほど影響しませんから、レベルの概念がいまいちわかりません?

 死人だから疲れたりしないと思いますが、シズクも卑怯な能力があるので疲れが見えないのです。いつまで続くのかな?

 椅子とテーブルを出して、お茶でもしながら見たいのですが、この雰囲気でそれをやったら、すごく非難されそうです。

 シズクが間合いを取って離れました。あの体勢は居合抜きをするつもりのようです。いつも思うのですが、刀を鞘に納めているのにどうして速度が上がるのか、理屈は分っているのですが、未だに理解出来ません。


「おじいさんとはこのままですと勝負が着きそうにありませんので、私の最速の剣で勝負致します!」


「更に早く振れるのか? 余は、今でも辛うじて受けていたのだが、興味があるな」


「この一撃が防がれたら私の負けで構いません」


「面白い! ならば、是非とも防いで見せようぞ!」


 また勝手に約束をしていますが……これで負けたらどうするのですか?

 最近は、シズクが居合抜きをする所を見ていないのですが、恐らくですが、私の影響なのか確実に首を狙ってくると思います。

 

「秘奥義! 絶剣!」


 何か必殺技の名前を言ったと思ったら、おじいさんの首が飛びましたよ!

 まったく何が起こったのか分かりません!

 また、痛い事を言ったと思ったら終わっているとか、名前はともかくすごいです!

 落ちた首が喋り始めました。流石は死人ですね。


「まったく剣が見えなかったのだが……抜く前と変わらぬ体勢なのに、いつ抜いたのだ?」


「詳しい事は教えられませんが、私の全神経を集中して、相手に斬られたと思わせない速度で斬ったとだけ言っておきます。サテラお姉ちゃんに届かせる為に編み出した必殺の一撃です!」


「あの様な剣術があるとは、余もまだまだだな。体のコアを破壊すれば余は倒された事になる。抵抗はせんので破壊して進むが良い」


「それでは、そうさせてもらいます。私にこの技を使わせた事は誇っても良いと思います」


「其の方のような娘に言われるとはな……しかし、余は満足しておるので、次があったらまた挑みたいものだ」


 シズクが体の心臓の辺りを刺すと灰になって、崩れて行きます。

 奥の扉は開きましたが、残りの5名は残っています。どうするのかな?


「残りの貴方達はどうするのですか?」


「陛下が決められて勝敗が決したので、我らは従うまでだ。それにまともに戦っても結果は見えているからな」


 私が尋ねるとおじいさんの横に居た魔術師らしい人が答えてくれました。


「進む前に1つだけ教えて欲しいのですが、この階層にいる者は全て名前があったのです。もしかして、王に殉死とかした人達なのですか?」


「殉死した訳では無い。戦いで散っていった者達が、陛下1人では寂しかろうと思って、後に続いただけだ。我らも陛下とは長い付き合いだったので、死んだ後に同じ事をしてもらったのだ」


「するとこの城はかつての姿を模した物という訳ですね」


「そうだ。陛下の記憶が眠る場所だからな……だが其方達のような強者が現れない限りは、我らが1人か2人しか現れない仕組みなのだ。6人が揃うのは数百年ぶりになる……さあ、死者と話していても仕方がないので、生きている者は進むと良い」


「ありがとうございます。それでは行かせてもらいますね」


 お言葉に甘えて扉を潜ると、目の前に暑苦しい景色が広がっています。

 あちこちで燃えているとか、危ない場所ですね。

 さて、ちょっと探索してから帰るか、このまま80階層まで突破してしまうか、どうしましょうかな?

 70階層以外は、楽しすぎてるからね……。


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