73 炎の階層1
71階層に来ました。今度は炎の世界ですか?
よくこんな暑苦しい階層を考えましたね。
ダンジョンなのですから、シンプルにずっと地下に潜って行けば良いのですよ。
「こんな暑苦しい階層とか堪らんな……ちょっと脱ぎたいんだがダメだよな?」
「貴方の見苦しい体を披露したいのですか。赤くなるように全身に切り込みを入れても良いのでしたら、好きにして下さい」
「そんな事をされたら、出血多量で俺は死んでしまうわ!」
「せっかく許可したのに。残念ですね」
「本当に容赦の無い扱いだな……絶対に実行されそうなので、怖くて出来んぞ」
以外とクロード先輩とセリスって、息が合ってますよね?
もしかしたら、シズクの世界の漫才師とかになれるかも知れませんよ?
「シノア、それでどうするのですか?」
どうするか聞いて来たエルナも暑いみたいなのです。普段から女性の何たるかを言っているのに、スカートで煽いでいますが、そのような行為ははしたないのではないのですか?
「ここで採決を取ります。このまま進みたいか一度戻るかを聞いて、多い方にします。私はこのまま80階層まで進めたいと思っています」
「私は、お姉様に従いますので、どこまでもお供します!」
「私も、貴女が進むのでしたら、従います」
「シノア様に従いますが、ついでにその淫獣を火の海に落とす許可を戴けたら幸いです」
「俺を焼き殺すのはやめてくれ! それはそうと面白そうなので、お前が構わんのなら、付いて行きたいな」
「シノア様の仰せのままに致します」
「うちは、シノアちゃんの行く所なら、どこでも行くよ!」
「私も問題はありませんが、出来れば進む前にお風呂か水浴びがしたいです。あと、この暑さを何とかする魔法とか無いのですか? 以前は寒さを何とかする魔法があったのですから、有るのでしたら使って欲しいです」
うん、みんな進む事に賛成のようです。
エルナが暑いのでさっぱりしたいと要望を言って来るぐらいですが、何か良い魔法とか無いかな?
私に余計な事を喋るなと言われて発言権を失っているステラさんが、必死に指で自分を指しています。何か使える魔法があるのかも知れませんね。
「ステラさん。もう普通に喋っても良いので、何か意見が有るのでしたら、言ってください」
「はい! それでは普通に喋ります! うちの水魔術に体温を下げる魔法がありますよ!」
そう言えば、ステラさんは水魔術が最上級でしたね。
「では、許可しますので使って下さい」
「うちに任せて下さい! 『クール・コントロール!』これで、パーティーメンバは、涼しくなります! 暑さが和らいで来ませんか?」
おおっ、何となく涼しくなって来ました!
「爽やかな感じになって来ました! ステラちゃんは最高ですね!」
「ステラお姉ちゃんがいれば、エアコンが不要になりますね!」
「すげえー快適になった。これで斬られずに済むぜ」
「うんうん、やっぱり、うちってすごいですよね! もっといっぱい褒めて、役に立つ事をサテラちゃんに伝えて下さい! ところで、エアコンって何なのでしょう?」
みんな喜んでいますが、相変わらずシズクのステラさんの扱いが家電製品になってますね。
取り敢えずいつもの拠点を作って、エルナの要望を満たしてから進みましょう。
さっぱりしてから、アイスクリームなる物を出してあげたのですが、中々好評です。
シズクにダメ出しをされながらも何とか納得の行く物を作る事に成功しました。向こうの世界の物をこちらの世界で用意するのには苦労しましたよ。
泡立てるとか、配分が違うとか……シズクは、私の錬金魔術を都合の良い製作魔法と思っているみたいなのですが、言われた通りにするのは大変なんですよ。
特に、凍らせれば良いと思って、『フリーズ・ゼロ』の魔法を使ったら、周りの水分を取り込んで凍ってしまうので、せっかく近い味になったのに薄くなるとかシズクに怒られるし……結局、『アイス・ウォール』で、何とか冷凍庫もどきを作って、言われた通りにしました。面倒くさい作業の末に出来ましたが、氷の塊と違って、なめらかでとても美味しいです!
シズクには、まだ物足りないとか言われていますが、取り敢えず出来た物を収納に入れておいたのは正解でしたね。
「シノア、このあいすくりーむとゆうのをもっと下さい! シノアの事だから、収納に沢山作って、入れてあるのですよね?」
「試作品なので、失敗品も含めればまだありますが、無くなったらここでは作れません。今日で食べ尽くしますか?」
「そう言われると仕方ないので我慢します。お菓子や氷菓子と違って、この甘いのが口の中で溶けるなんて、よく考え来ましたね?」
エルナは私が考えたと思っていますが、シズク先生が向こうの食べ物を食べたいから、私に何とか理解させて作らせているだけなんですよ?
私の技能に料理人が一応あるので、理解さえ出来れば作る事が可能なのですが、向こうの材料や道具が無いので、作るのも一苦労なんです。
「私の発案ではありません。シズクの世界の食べ物を再現しているだけなのです」
「エルナお姉ちゃん! 何とかお姉様に理解してもらって、作っているのですよ!」
「そうなのですか? シズクちゃんの世界の食べ物はいつも美味しいと思いますが、これは特別に美味しいと思いますよ!」
「まだ、お姉様の理解が足りないので、いまいちなのですが、それなりの美味しさは再現できたと思います」
……私の理解力が足りないとか、さり気無くディスってますよ。
主なのに、ダメ出しされまくって作っているのに……このなまじに相手の思考が読めるのがいけないんですよ!
最初は、人の心を読むなんていけない事だと思っていたのに、シズクは逆に私に読ませようとするとか……おかしいですよね?
私が家電製品とか理解出来るぐらいに常識が書き換えられているのですが……私の頭の中は、一体どっちの世界に属しているのでしょうね?
少しだけカチュアさんの思考も読ませてもらいましたが、あれがこの世界の普通の常識なのですね……ヒラヒラの服の世界を除けばですが……。
エルナが納得しかけた所で、私の中に何か戻って来ました。これってもしかしてサテラですか?
私の心の中で出してとか言ってます。一度召喚してからは、何となく声が聞こえるようになったのです。普通は聞こえないらしいのですが、私だけ聞こえるとか迷惑ですよ。
聞こえて無ければ無視するのですが、後でどんな仕打ちを受けるか分からないので、分身体として出してみますか……。
私がサテラの魂を固定させて出してあげると、えらく怯えています。
「一体どうしたのですか? お店のウェイトレスぐらいなら、まだマナが尽きるとは思えないのですが?」
「シノアちゃん、助けてよ! あそこは悪夢のような環境です!」
まさか、サテラが私に助けを求めるなんて!
「お店で働くのが悪夢とか、意味がわからないのですが?」
「言われた通りに嫌々給仕の仕事をしていたのですが、ちょっと前に機嫌の悪いエレーンさんに久しぶりに稽古を付けてあげるとか言われて、無理矢理相手をさせられてズタボロにされましたよ!」
あっ!
この間の泉で怠け者と言われた腹いせに、サテラをボコボコにしたのですね。
「それで、私のマナはかなり無くなってしまいました。休憩の時に美味しそうな物が置いてあったので、ちょっとつま食いをしたら、そこに現れた師匠に殺されてしまったのですよ! 師匠のおやつだったなんて知らなかったのです。食べた罪で死刑とか言われて、頭上に発生した黒い球体に押し潰されてしまったのですよ!」
黒い球体に潰されるとか、それは重力魔術と思います。確か、重力魔術の私以外の使い手は、エレーンさんのガーディアンと聞いていましたが。いま師匠と言ってましたよね?
そんな事を考えていたら、いつの間にかアルちゃんが私とサテラの前に居ます。
まさかですが師匠って……。
「こんな所に逃げるなんて、絶壁の分際で私のおやつを食べた罪は許しません」
まさかのサテラを絶壁呼ばわりとか、アルちゃんの基準って胸で判断されています。アルちゃんも大して変わらないと思うのですが?
「師匠、許して下さい! 私は知らなかったのです! 机の上に美味しそうなケーキがあったから、つい食べてしまったのです!」
ケーキを食べたら、死刑とか恐ろしいですね。
ちょっとは、フォローしてあげないとまた殺されてしまったら、分身体を作る分だけマナが減るだけですからね。
「サテラも反省しているみたいなので、その辺にしてあげましょうよ?」
「ケーキを食べた罪は重い。普通の人間だったら、呪いで許してあげますけど、この絶壁は、死ななくなったので、もう遠慮が要らなくなったから、潰してあげましたが、私の怒りは晴れませんでした。体も復活したようなので、帰って続きをします。次は消化されたケーキと同じように手足から溶かしてあげます」
「そんな拷問みたいに溶かされるのは嫌です! お願いシノアちゃん、助けて!」
呪いの魔術も有るのでしょうか?
ちょっと興味があるので私も知りたいです。
しかし、溶かされるとか、スライムにでも襲わせるのでしょうか?
あの体が溶かされる痛みは想像を絶するので、私もスライムと戦うのだけは、極力避けていたのですよね。
シズクの知識だと、ゲームの最弱キャラとなっていますがこちらの世界では、恐ろしい魔物ですよ。
流石に可哀想になので、助け船を出しましょうか。
「アルちゃん、これをあげますので、サテラを許してあげないかな?」
「これはなんですか? 甘い匂いがして冷えているようですが」
食べてもらった方が早そうなので、一度やってみたかった事をしましょう!
「アルちゃん、あーんして?」
「? あーん」
やばいです!
こんなに素直だと、食べさせたくなるエルナの気持ちがわかる気がしてきました!
スプーンですくって、一口食べさせてみると……。
「とても美味しいです……冷たくて甘いと思ったら、溶けてしまいました。シノア、もっと食べさせてください」
「はい、まだありますから、どうぞー」
出した物を全て食べた後も名残惜しそうですね。
サテラも物欲しそうな顔をしていましたが、いま何か言ったら、矛先が向くので黙って耐えています。
「このような物を食べたのは初めてです。とても美味しかったので、今回は許してあげます。出来ればもっと欲しいのですがまだありますか?」
「では、お土産にもう少しあげるので、もうサテラを殺したりしてはいけませんよ?」
「わかった。もう殺したりしないので、次からは、普通の体罰にします」
「サテラ、許してもらえるそうですよー」
「ありがとう、シノアちゃん! ついでに私にもさっきの美味しそうなのが欲しいので下さい!」
許されたと思ったら、すぐに私に催促して来ましたよ。
まったく、私のありがたみがわからないようですね。
「残念ながら、まだそんなに在庫が無いので、アルちゃんにお願いして食べさせて貰って下さい」
「そんな! し、師匠……少しだけ私にも味見をさせて欲しいのですが……」
「絶壁は馬鹿なの? これはシノアが私にくれた物です。例え駄肉マスターに命令されても、誰にも渡しません。下らない事を言ってないで。早く戻って散らかした部屋を片付けるので帰ります」
小さめの桶ぐらいの入れ物に入れてあったのを渡したのですが、サテラに見せつけるように一口舐めてから、収納にしまってしまいました。
サテラが悲しそうに消えていく桶を見ています。あの暴君のこんな姿を見れたのですから、アイスクリームを作って良かったです!
「また、時間が出来たら会いに行く。それまで大事に食べる」
そう言うとサテラの髪を掴んで転移していきました。何か嫌だとか最後に叫んでいましたが、最初の頃に我が儘し放題だったので、天罰が下ったのですよ。
「師匠は厳しいから……サテラちゃんも可哀想に……」
「ステラさんも、アルちゃんが師匠なのですか?」
「うちとサテラちゃんに魔術を教えてくれたのですが……うちは馬鹿駄肉とか言われています……サテラちゃんは普通に名前で呼ばれていたのですが、態度が悪かったので、途中から絶壁と呼ばれるようになったのです」
「ステラさんも駄肉とか呼ばれているのですか? 私もアルちゃんに駄肉と呼ばれています……アルちゃんは胸がある人には厳しいのですよね」
「大きな胸がある者は例え相手が誰であろうと駄肉としか呼んでくれません。シノアちゃんが師匠と仲が良いとは知りませんでした。師匠はとても恐ろしいのですよ……うちがアルちゃんなんて呼んだら、絶対にお仕置きされてしまいます」
「素直で良い子と思うのですが?」
「それは、師匠が気に入った者だけです! うちとサテラちゃんも小さい頃は仲良くしてもらえたのですが、うちは胸が大きくなってからは、口答えしただけでお仕置きされるようになりました!」
お仕置きね……私も鞭で打たれた事がありますがちょっと聞きたくなってきました。
「何されたのですか?」
「そんな事を言いたくありません! うちは今でも思い出せるぐらい酷い目に遭いましたが、サテラちゃんも違う内容ですが、かなり酷い目に遭っているのです。うちとサテラちゃんは、師匠を前にすると抵抗するだけ無駄なので、どれだけ理不尽でも素直にお仕置きを受けた方がましと知っているのです。先ほどもサテラちゃんには申し訳なかったのですが、怖かったし巻き込まれたくなかったから、静かにしていたのです……」
「よくわからんが、あのおちびちゃんは、そんなに強いのか?」
「クロちゃん! 師匠にちびとか言ったら、殺されますよ! この世界で師匠に勝てる存在は一部を除いていません! あのエレーンさんも一度殺されているのですよ!」
「まじか……言わなくて良かったぜ……見た目で判断したらいかんな……ところでエレーンさんって、誰だ?」
「エレーンさんは、師匠のマスターです。貢ぎ物をしないとお願いを聞いてくれないので、エレーンさんも困っているのです……」
「良く分らんが、主従関係なのに主より立場が上とか意味が分らん……」
いつの間にかクロード先輩の呼び方がクロちゃんになってます。
まあ、見た目はともかく、年齢的には3000歳以上は離れているはずですからね。
ステラさんも聞かれた事を素直に話していますが、あんまり話すと、ばれたらエレーンさんに怒られますよ。
しかし、エレーンさんを守護するガーディアンなのに主を殺すのですか?
「ちょっと確認しますがアルちゃんって、エレーンさんのガーディアンで良いのですよね?」
「そうです。見た魔術を全て理解して使いこなしてしまうので、恐らくですが、この世界の全ての魔術を使えると思います。詳しい事はわかりませんが、エレーンさんが原因で、胸で女性を差別するようになったと聞いてます……」
「すごく興味が有るんだが……俺がこのまま聞いていても良いのか?」
「今更、聞くなとは言いませんが、クロード先輩は今回のダンジョンでの今の出来事や私達の事は、とにかく見なかった事にして下さい。戻ってから誰かに聞かれてもダンジョンの内容以外は言わないでくれると助かります。それにしても主を守護するはずなのに攻撃出来るのですか?」
「誰にも言うつもりは無いが、わかったぜ」
「最初の頃は命じられた通りに従っていたらしいのです。使徒の魔術をどんどん見せる為に一番呼び出しているうちに自我が芽生えて、気に入らないと主にも背くようになったらしいのです……エレーンさんが昔に一度からかったら、魔術の集中砲火をされて消滅したと聞いてます」
アルちゃんって、やばすぎますよ!
絶対に嫌われないようにしたいと思います。味方に付ければエレーンさんにも勝てるという事ですよ!
カミラが以前に殲滅の魔女とか言ってましたが、女神様が付けた職業と思います。エレーンさんを魔法で殺せるのですから、本気だと魔法の威力が恐ろしいのでしょうね。
あの時は、その名前を口にしたカミラを殺そうとしましたので、触れないようにしてないとね。
面白い物が見れましたが、取り敢えず気を取り直して出発しましょうー。
ステラさんのお蔭で、体調の方は快適に進めるのですが、景色は暑苦しいの一言です。
大体、大木の枝の先の葉っぱが無くて代わりに燃えているとか、どうして本体は燃えないのですか?
周りの草原も部分的に燃えているのに、どうして広がらないのでしょう?
たまに赤くなった岩があったので、触ってみたら思いっきり火傷しました!
カミラからは、「貴女は馬鹿なのですか?」とか言われました。気になるから触っただけなのに、酷い言われようです。
ちょっとムカついたので、露出している腿に気合で小さいのを拾って投げたら、無言で睨みつけてこちらに来るなり頬をぶたれました。
「ちょっと悪戯で、石を投げて当てただけなのに女の子の顔をぶつなんて酷いですよ!」
「貴女は、悪戯で高温の石を人に投げて火傷させるとか何を考えているのですか! 癒せるとはいえ、こんな物を投げられたら誰だって怒りますよ!」
「流石にいまのを悪戯で済ます奴はいないと思うぞ?」
「だって、カミラが馬鹿とか言うから……」
「お姉様、最初に高温になっている岩に触って火傷して転がりまくるのは、ネタかと思いました。私は、どこかのお笑い芸人かと思ってしまいましたが、今度は同じ小石を我慢しながらカミラお姉ちゃんに投げつけるとか、弁護不可能かと思います」
「シノア、どう見ても貴女が悪いので、カミラに謝るのですよ?」
「うちも今のは、いけないと思います。シノアちゃんを見ているとまるで昔のサテラちゃんを思い出します……下手に治癒魔法があるから、何をするかわからなかったので……」
誰も私に味方してくれません!
セリスとキャロは何も言いませんが、目が自分達にはしないで下さいとだけ言っている気がします。
ちょっとお茶目な悪戯をしたのに完全に私が悪いようです……もう傷跡も綺麗に無くなっているのに……って、この考え方がサテラと同じとか、私の未来はあれなのですか?
この考え方の行きつく先があの性格だとしたら、ちょっと考えを改めなければ行けません。
みんなの前でカミラに謝りましたが、次にやったら、あの岩に座らせると言われてしまったので、流石にもう出来なくなりました。
お尻に焼き鏝とか恐ろしいお仕置きですよ……それだったら、叩かれた方がましです!
しかし、私がこんな事をしているのも、正直に言いますと暇なんですよね……。
だって、敵の強さが前の階層よりちょっと強くなっただけなので、苦労しているのはクロード先輩だけなのです。
エルナは剣に追加された能力で冷気を纏わらせる事が出来るし、シズクも小太刀に同じ能力が有るので、新しい必殺技の名前を色々と言いながら余裕で戦っています。
同じ事が出来る剣を持っているクロード先輩だけは、マナが操れないので、ステラさんが付与しています。
セリスがフォローしながらキャロも頑張っているのに私がしている事は……。
「シノア、そろそろ矢が尽きますので、次の矢に水の付与をしておいて下さい」
カミラの横で、矢に水魔術で付与をしているだけ……私だけ、どうして!
「ねえねえ、そろそろ私も参加しても良いと思うんだけど……」
「貴女、さっき使った魔法で、みんなに迷惑を掛けたのに反省をしていないのですか?」
「だって、あんなに威力があるなんて思わなかったから……」
「ステラさんが止めましたよね?」
「あそこまで、マナを練って撃つ前に言われても遅いですよ……しかも相手は火の湖に居たのですから、魔法で倒すのは間違っていないかと……」
「言い訳はいりません。幸いですがこの階層は私達には強敵がいないので、貴女は何もしなくても良いと全員が判断しましたので、大人しくしていなさい。魔法の実験で、また爆風で吹き飛ばされては敵いません。特に私に一番迷惑を掛けたのですから、わかっていますよね?」
「……はい」
「後で、好きなだけ新しい食材で調理をしてもらう事になるので、料理でも考えていると良いかと思います」
私は、このパーティーの専属料理人ですか!
まあ、確かに、新しい魔物は調理出来そうなのが居ましたが、ちょっと切なくなって来ました。
そもそもの原因は、少し前に湖の横を通ったのですが、燃えている水面から、首長竜みたいなのが数匹攻撃してきたのです。ステラさんが水の盾で防いでいてくれたので、問題は無かったのですが、遠距離攻撃のみだったのです。私が使った事が無い魔法があったので、ちょっと詠唱込みで使ったら……魔物と水面の間で大爆発が起こって、周り一帯が全て吹き飛んでしまいました!
当然、こちらも吹き飛ばされてみんな酷い目に遭ったので、収まった後に私はめちゃくちゃ怒られました!
特にカミラは、吹き飛ばされて、あの高熱の岩がちょうどお尻にぶつかって焼き鏝状態です!
激怒したカミラに同じ所に座れとか言われました。当然拒否しましたが、代わりにお尻をしこたま叩かれましたよ!
使った魔法は、水魔術の『スチーム・コールド・エクスプロージョン』なのです。少し前に使えるようになったけど、使うのでしたら火属性の相手に有効と思って、今までは使ってなかったのです。きっと威力のある範囲魔法と思って使ったのですが、まさかそんなに威力があるとは思ってもみませんでした……。
ステラさんも使えるから知っていたみたいなのです。普通に使うと空気中の水分を爆発させる魔法らしいのですが、高温の炎を融合させると威力が膨れ上がる事があるそうです。
1人だけ、無傷だったシズクが火山みたいな原理とか言ってましたが、水がちょっと急激に温かくなっただけなのに、意味がわからない……そもそも炎と水って、融合出来たのですか?
何にしても、しばらくは反省の意味も込めて、私はカミラの矢に付与するだけの存在になっていますが……あの程度の事で、この仕打ちは納得が出来ないので、後で絶対に仕返ししてあげますよ!
時間的に夜なったので、拠点を作ってから、いつものように私が食事を作りましたが、1人だけ不評みたいです。
料理のしすぎで、知らない内に料理人のレベルも上がった私の美味しい料理に不満とか、贅沢極まりないですよ。
「1つだけ聞きたいのですが、どうして鍋を作ったのですか?」
「倒した亀の魔物をどしたらいいのか考えていたら、シズクが巨大なすっぽんとか言うので、シズクの世界にあるすっぽん鍋とかいうのを再現してみたのですよ?」
「こんな暑苦しい所で、こんなグツグツと煮えた物を食べたいとか思う人はいないと思うのですが?」
カミラは何を食べてもマナに変換されるのですから、別に食事なんて何でも良いはずなのに、文句を言ってきます。
エルナ達がいなかったら、別に食事をする必要もないのですのにね。
私とセリスとカミラだけだったら、マナさえ切れなければ、休憩や睡眠も要らないので、痛みさえ何とかすればこの体は非常に便利です。
「シズクのリクエストに応えたのに、我が儘を言う人がいます。美味しくないですか?」
「ちょっと味付けが違いますが、これはこれで美味しく出来ていると思うので、お姉様の料理は最高ですよ!」
「景色を見るとちょっと考えるが、中々美味いので、暑い所で熱い物を食べるのも俺は悪くはないな」
「シノア様が作られた物なら、私は何でもいただかせていただきます」
「うちは、もっと食べたいので、おかわりがしたいのですが、良いですか?」
「初めていただきますが、とても美味しいと思います。シノア様に支配されてからは、食生活が満たされていますので幸せです」
「カミラの言う通りなのですが……シノアが私の為に愛を注いで作ってくれた物なのですから、美味しく頂きますよ?」
シズクとは、予め念話で話を付けてあるし、クロード先輩は美味くてがっつり食べれれば何でも食べます。
料理の手伝いと用意をしてくれたセリスとキャロは、絶対に私の味方をするし、唯一反対意見を言いそうなエルナは、料理の様子を見に来た時に「エルナの為に美味しい物を作るからね!」と言っておいたので、おも……じゃなくて、私の好意と受け止めてくれます。
ステラさんは、私の出す物は全て美味しいとか言って、とにかく食べるから、味付けさえちゃんとしてあれば、何でも食べてしまいます。
実は、カミラからは、昼食も熱い物を作ったので、次はあっさりした物を希望されていたのですが、当然のように却下してます。
私をただの付与係にした腹いせ何ですけどね!
それに熱い物は苦手なのを知っていますので、こんな熱々の物を食べたら、舌を絶対に火傷するはずです。冷まして食べるか、癒しながら食べるしかないはずです。
流石に口の中を火傷する痛みの訓練などはしていないので、どうにもならないみたいですが、少しだけ私の気分が晴れてきました。
みんなは美味しく食べているのですから、これ以上は文句は言えませんよ!
「との事らしいですよ? では、明日はカミラに食事を作ってもらおうかなー」
「私ですか? 私は、あまり得意ではないのですが……」
「シノア、 何を言っているのですか? この中で料理に関しては、シノアが一番美味しい物を作れるのですから、そのような事は認めませんよ? 第一、カミラの調理した物をいただくには勇気が要りますよ?」
「……」
すかさずエルナから、私が作るのが当然みたいなお言葉が来ました。カミラは心当たりがあるので、黙って俯いています。
カミラは料理に関しては、まったく駄目です。普通の人が食べるのには不向きな物を作るんですよね。
私の眷属になる前から、半端な知識で、これを入れれば良いみたいに作るから味は最悪です。
私とセリスだったら、どうせマナに変換されてしまうので、味はともかく、そこそこカロリーが高い物なら我慢すれば問題はありませんが、正直不味いのですよね。
エルナは、以前にカミラの謎の手料理なる物を食べて以来、カミラが私を手伝ったりしようとすると、作らせないために必ず連れ出すようにしています。
カミラの手料理を食べた後で、セリスにお腹が痛いから状態異常を治す魔法を使って欲しいと頼んで来たぐらいです。私はマナに変換されるので味さえ我慢すれば問題無いのですが、普通に消化される人には酷な料理なのかも知れません。
戦闘能力はあんなにも向上したのに、私生活の方は更に無関心になってしまったのです。たまにこれで良いのかと考えるぐらいなのです。同じ眷属なのにセリスの方が常識人なのですよね。
「だって、1人でも何か言われると作る気になれなくなるからねー」
「ちょっと待ってて下さい。カミラに少し話がありますので、一緒に来て下さい」
「わかりました、エルナ様……」
カミラがエルナに連れられて行きました。何を言いくるめるつもりなのでしょうね。
「良く分からんが、あのセイルーン子爵の娘の料理はやばいのか?」
「クロさん、普通の人が食べると必ずお腹を壊しますよ。見た目はすごく美味しそうにできるのですが、味が最悪なのです。何か調味料を間違えているのか、変な物を追加しているに違いありません。カミラお姉ちゃんは味音痴なので、多分ですが、栄養さえ摂れれば良いと思って作っていると思います」
「まじか……お嬢様のシリアやオリビアだって、そこそこの食べれる物を作れるんだが。ユリウス達が加わってからは、ミヨナが一番美味しい物を作れるから、調理はお任せだな。伯爵の娘なのに料理が趣味らしい。しかし、あの嬢ちゃんは何でも卒無くこなしそうなのに、料理がダメとか痛い欠点だな」
「たまたま厨房で美味しそうな物を作っていたので、ちょっと食べさせて貰いました。変な味だとは思いましたが、しばらくしてトイレに直行したぐらいです。エルナお姉ちゃんもきっと同じ目に遭っているので、理解しているのでしょうね……」
2人が席を外したら、クロード先輩の疑問にシズクが答えてます。シズクも経験者だったのですか。
私とセリスも食べた事がありますが、私は不味いと言わずに独創的な味とだけ評価しました。セリスは、無言でしたからね。
「そんな話を聞いたら、うちはシノアちゃんの料理しか食べたくないのです。美味しければどんな物でもいただきますので、絶対に文句など言いません!」
「余り言いたくは無いのですが、カミラさんの作る物よりも携帯食の方が良いかと思います。流石に一度でも食したら、次は遠慮したいと思います」
おおぅ……ステラさんはともかく、セリスが警告をするなんて、余程ですよ。
「硬くて不味い携帯食に負けるとか、どんだけ酷いんだ……今回のダンジョンでずっとシノアの飯を食っているが、普段に比べたら美味すぎるので、ずっと居たいぐらいだわ」
「シノア様の料理は最高なのです。淫獣にしては良く分かっていますね」
「セリスさん、頼むから淫獣と呼ぶのはそろそろ勘弁してくれ。流石に俺も悲しくなってきたわ……」
「セリス、クロード先輩の事はちゃんと名前で呼んで上げて下さいね?」
「シノア様がそう仰るのでしたら、わかりました。次からは、皆さんに習ってクロと呼びますが、シノア様に下品な事言ったら、戻します」
「おおっ! セリスさんが普通に呼んでくれるとか嬉しいぜ! シノア、ありがとな!」
クロード先輩が喜んでいると、2人が戻って来ましたね。
「お待たせしました。これからはカミラは料理に関しては、一切口出ししないと約束してくれたので、シノアの好きな物を作って下さいね?」
「エルナ様と約束しましたので、私はもう食事に関しては何も言いません……そのように思われていたなんて……」
えらくカミラが落ち込んでいますが、一体どんな話をしたのやら……もしかして、エルナが体験した事を言って聞かせたのかも知れませんね。
エルナに対してすごく申し訳ない感じに見えます。カミラから感じる感情から想像すれば、まず間違いないのでしょうね。
確か眷属になった時の魂の状態が維持されているはずですから、味覚はもう治らないのかも知れませんね。
ノアだったら、直接魂に関渉出来るので、何とか出来ると思いますが、こんな面白い事をノアが解消するとは思えないのでまず無理でしょうねー。




