55 怪しい集団です
カミラにいじめられて、しぶしぶ寝室に向かおうと扉を開けたら、シズクがいます。何か深刻そうな感じなのですが、どうしたのでしょう?
「お姉様……少しお耳に入れておきたい事があるのですが、良いでしょうか?」
「どうかしましたか? シズクがそんなに迷っているのは珍しいのですが?」
「実は……セリスお姉ちゃんがお屋敷に戻って来ていないのです。一応、配下の者に調べさせていますが……」
ちらちらとカミラの方を見ていますが、この場で言っても良いのか迷っているみたいですね。
ここで、途中から念話で話すのはカミラに悪いですからね。
「構いません。何があったのか教えて下さい」
「夕方に孤児院に出かけると言って出かけたのですが、帰りがいつもより遅いので、先ほど孤児院の方に出向いて聞いたのです。いつも通りの時間に帰る時に1人の騎士に声を掛けられて、付いて行ったそうなのです」
セリスは定期的に王都の育ててくれた孤児院に出向いて、子供達の相手をしたり差し入れなどを持っていっています。
院長先生には、自分の事は知らないお姉さんとして扱って欲しいとお願いしているみたいです。
本当のセリスは、教会に入って地方に派遣されて病気で亡くなった事になっているそうなのですが、実際は、変なのに目を付けられて、嵌められて奴隷にされてしまったのですけどね。
私も院長先生には会いましたが、優しくて良い人でした。
セリスは死んだと思ってすごくショックみたいでしたが、再会した時は実の娘が戻って来たように喜んでいました。
私もたまに一緒に行っていますが、子供達を見ていると私の心も何となく癒されるのですよね。
しかし、セリスに声を掛ける騎士で思い付くのはカインさんぐらいですが、いつも無視されまくっているめげない人の印象しか無いですね。
それとも、話ぐらいは出来るぐらいに進展したのかも知れません。
「その騎士とは、カインさんでは無いのですか?」
「それが違う人らしいのです。カインさんもセリスお姉ちゃんとは別に孤児院に立ち寄ってくれる人らしいのです。休みの日に建物の修繕などを自主的にしてくれるので、見間違いはしないはずです」
「カインさんって、そんな事もしていたのですか?」
「たまにセリスお姉ちゃんと会える時があるので、一緒に子供達と遊んでたりしますよ? それ以外の所では、無視されまくっていますが」
孤児院にいる時は話とか出来るようになっていたのですね。
子供達と一緒とはいえ、無視からすごく進展しています。
カインさんの努力が実りましたねー。
「では、その知らない騎士とやらは誰なのですか?」
「院長先生も知らない人らしいのです。それからしばらくしてカインさんが孤児院に来たらしいのですが、その話を聞いて探しに行くと言って行ってしまったそうです」
「それで、先ほど調べさせたと言っていましたが、見つける事は出来たのですか?」
「どうも西の貴族の館がある方に向かったらしいのですが、そこからは、まだ他の者が調べています。そろそ定時連絡が来ると思います」
「よく、時間が経っているのに調べる事が出来ましたね?」
「セリスお姉ちゃんは長い水色の髪で、黒のメイド服を着ていますから、結構目立ちます。それにカインさんが頑張って街中でも口説いていて、使徒なのにめげないから、道行く人に励まされているので、結構有名になっています」
そんな事になっていたのですか。
カインさんが使徒なのに無視されまくっているのを見て、世の男性は同情なのか知りませんが、応援していたのでしょうね。
しかし、それでもぶれないセリスって、ある意味すごいです。
「お姉様は知らないと思いますが、セリスお姉ちゃんは買い物をしていると結構ナンパされます。全て無視するか、しつこい者は手足を斬るか不能にしてしまうので、青い薔薇のメイドさんとか言われています」
「青い薔薇ね……確か棘がいっぱいの花ですね。手足はわかるんだけど不能って、なに?」
「……すごく言い難いのですが……男を辞めさせる技能です。男性のあれを斬り落として、わざと出血だけ治して、そこだけは再起不能にしてしまうのです。その事を知っているのにめげないカインさんは勇者と言われています」
「よくわからないのですがシズクの知識にある男の娘とかですか? そんな方法で、性別を変える事が出来るとは、初めて知りました。逆に男の子になるには、どうすれば良いのですか? その知識がないのですが?」
「お姉様は、知識が半端過ぎます……カミラお姉ちゃんは真っ赤になって俯いていますので、理解出来たと思いますが、これ以上は追及しないで下さい。私も念話でも話すのは嫌です」
すごく興味があるのですが残念です。
シズクの心を読み取っても理解出来ないので、説明してもらわないとダメですね。
「話が逸れましたが、セリスお姉ちゃんは時間には正確に動くので、何も告げないで戻って来ない事はあり得ません。申し訳ありませんが、お姉様でしたら、どこにいるかとかわかるのではと思いまして……」
「残念ながら、かなり近い範囲まで近づかないと認識が出来ません。ダンジョンのフロア内なら、はぐれても私が中央に居れば感知出来るぐらいです」
「そうですか……次の連絡が来たら一緒に探しに行ってもらっても宜しいでしょうか? 私はセリスお姉ちゃんが心配なのです……死なないとわかっていても、私の本当のお姉ちゃんのように思っているので……」
「勿論、一緒に行きますよ。セリスは私の大事な眷属でもあるし、大切な友達です。それに不死と言っても半端なので、マナが切れたらお終いですよ。あとに待っているのは悪夢の苦痛だけです」
シズクの本当のお姉さんですか……セリスとは全然違いますが、セリスは面倒見が良いので、シズクを大事にしてくれているみたいです。
確かにセリスが私に独断で行動するとは考えにくいのです。一体どうしたのでしょう?
カインさんも探しているみたいですが、途中で会ったら、一緒に探すように話してみましょう。
部屋に戻って待っていると、忍者装束を着た人が来ましたが……シズクに汚染され過ぎでしょ!
「棟梁、ただいま戻りました」
「して、セリスお姉ちゃんの行方はわかりましたか?」
なにこの会話?
棟梁って、シズクの事ですよね……怪しい集団になってきましたよ。
「セリスの姉さんの場所はわかりました。場所はマクガイア子爵の館です」
セリスって、姉さんとか言われているのですか?
たまに道場の人達を癒していたのは知っていますが、お屋敷にも信者がいっぱいいますねー。
「誰ですかそれは? どうしてそんな場所にセリスお姉ちゃんが居るのですか?」
「棟梁も会った事のある使徒のガルド子爵です」
「あの半端なレベルの騎士ですね。お姉様にも無礼を働いていましたので、いつか始末したいとは思っていましたが……ですがセリスお姉ちゃんが関係あるとは思えないのですが?」
「失礼ながら、話しても良いのか判断に迷っています……」
ミリアさんの護衛のガルドが一体セリスに何の用なのですか?
もしかして、セリスが元教会の者と気づいたのでしょうか?
「申し訳ありませんがセリスは私の大事な人なので、詳しく詳細を教えて下さい、場合によってはいま直ぐにでも乗り込むつもりです」
「御屋形様がそう仰られますなら、お話しします。あの者は姉さんの過去を知る者の1人です。それを理由に呼びつけたようなのです。少し前にカイン殿も乗り込んで行ったのですが……」
いつの間にか私はまた御屋形様になっています……もう、何でもいいのですけどね。
「ガルドはセリスの過去を知っているのですか?」
「……非常に言い難いのですが当事者の1人なのです……あの館に居る何人かの側近の騎士どもは同類でございます……その情報を喋った者も姉さんを侮辱したので、つい始末してしまいました……申し訳ありません……」
「セリスを侮辱した者など殺しても構いません。死んだと思われていた奴隷が居ると思って手に入れようとしたのでしょうか……もしそうなら、私は関わった者を全て殺しますよ?」
「シノア、そんな簡単に人を殺すとか言わないで下さい。しかし……セリスさんは、奴隷だったのですか……そうなるともしかしたら今頃は……」
「カミラ、セリスは嵌められて奴隷にされてしまっただけですから、勘違いしないで下さい。何となくろくでも無い事になっている事はわかりましたので、直ぐに向かいます。場所だけ教えて下さい。私が1人で行きます」
「それなら、私も行きます。同じ眷属なので、助けにいくのは当然です」
「目立つ事は避けたいので、カミラはお留守番をしていて下さい。ダンジョンと違って、いまのカミラでは隠密性に欠けます」
「確かに私には不向きですが、弓ではなく、あの力を使えば十分に役に立てるはずです!」
「ダメです。あれを街中で使うなんて私は絶対に認めません。ノアだって反対するはずです。もし見られたら目撃者は全て殺すつもりでしたら、問題有りませんよ?」
あんな力を街中で使って、知られる事になるのは避けたいです。
もっと目立っても対抗出来るまでは、温存しておきたいのですよ。
それにこれからする事は、カミラは必ず反対するので、連れて行くと面倒なのですよ。
「それなら、私は隠密そのものなので問題はありませんから、付いて行きます!」
「御屋形様、それなら我らも行く事は問題有りませんね? 我らは姉さんには恩義ある身なので、当然参加させていただきます」
いつの間にか、シズクの背後に控えて居た人が4人になっています。
見るからに怪しい集団です……。
「仕方ありませんね。それでは道案内を頼みます。どこかで見たような人がいますね……」
「お姉様に御庭番四天王を紹介しておきますね」
四天王とかさらに病のような痛い名称ですね……。
「いつも門で、挨拶をしています炎衆のコクマーと言います」
どこかで見た事があると思ったら、門で挨拶をしてくれる元アサシンのおっちゃんです。
「園内の警備を申し付かっております、風衆のギースと申します」
庭でいつも掃除している隻眼のおっちゃんです……掃除で、心が研ぎ澄まされるとか謎の心境に至った人です。
「シズク様のこすぷれの手伝いとメイドをしています、水衆のカチュアと申します」
あっ……元オリビアの所の密偵さんですが、一応貴族のはずなのに道を踏み間違えた人です。
「お屋敷の厨房の手伝いをさせてもらっています、土衆のナッシュです」
食堂で、よく見かけるアイリ先生のお気に入りの美形のお兄さんですよ。
「この者達は中でも選りすぐりなので、それぞれの頭に任命しましたので、実力は問題有りません。それぞれの配下を6人だけ連れて門で待機していて下さい!」
「「「「はっ!」」」」
シズクの命で、即行動とか、子供の配下とか納得しているのかな?
しかし、いつの間にこんなに大きな組織になっていたのでしょうか……もしかして、私が作った刀の数だけ居るのだとしたら、怖いですね。
私達が門に行くと、もう揃って出迎えているとか、素晴らしい統率力です。
これだけの人数で行くのですが大丈夫なのでしょうか?
私としては、1人で乗り込んでセリスを確認したら、重力魔術で、館ごと潰してしまおうと思っていたのですよね。
まあ、皆さんやる気なので、腕前でも見せてもらいましょう。
「では、行ってきますのでカミラはエルナの相手をしてて下さいね」
「わかりました。なるべく穏便に済ましてきて下さいね。なるべく貴女には人殺しをさせたくはないのです……」
「努力はしますが、私の過去や記憶を知っているのでしたら、私の取る行動はもう1つしかありません。私は、自分が守りたいと思う者以外にはもう遠慮はしません」
「それでも……」
「話はここまでです。それでは行きますので案内して下さい」
「畏まりました。付いて来て下さい」
カミラが必死にお願いしている感情を感じますが、魔物も人も生きている生物には変わりが無いので、そんなに気にする必要はありません。
少し人の方が得られる感情が大きいぐらいなのですから、シズクの漫画ではありませんが、悪人など全て始末してしまえばいいのですよ。
到着するとそこそこ大きい屋敷ですね。
やたらと門が頑丈そうですがどうしょうかな?
「お姉様、どうやって乗り込みますか?」
「中にセリスがいる事は感じ取れます。ただ何となくいつも感じているマナの大きさを感じられないのですが……何かされているのかも知れませんね」
「では、正面で引き付けておく内に、セリスお姉ちゃんの所まで潜入しますか?」
「引き付けておくって、どうするのですか?」
「拙者にお任せください」
拙者……言葉遣いまで、変わっていますが染まり過ぎでしょ!
侍の恰好をした隻眼のギースさんが堂々と正面に向かって行きます!
他の人も立ち上がって付いて行きますが、ちょっと待って下さい!
「秘剣! 参の太刀! ソニック・ギガブレイド!」
……シズク2号が何かわけのわからない事を言っていますが、風魔術の『ウィンド・ブレイド』上位版です。
ただ威力は正門を吹き飛ばしてしまったので、騎士たちが沢山出てきましたよ!
どの辺が隠密性があるのか教えて下さい!
「貴様ら、ここがマクガイア子爵の屋敷と知っての無礼か! 何者だ!」
「外道に語る名は持ち合わせておらぬ。貴様らはここで死ぬのだから、聞く必要はあるまい?」
なんか台詞がかっこいいです!
あの秘剣とかいうのが無ければ良かったのに。
「たったそれだけの人数でよく吠えたな! 逆に死ぬがいい!」
「雑魚と言えど数を減らしてしまいましょうか。忍法! ストーン・クラウド! 石化の舞!」
美形のお兄さんがそれらしく忍法とか言っていますが土魔術の範囲石化魔法です。
指定した位置に石化の煙が発生する魔法なのですが、密閉空間じゃないと半端に部分石化に留まってしまうのです。スクロールは確かに作りましたが、習得出来たのですね。
こんな外なのにかなりの人数が半端に石化しています。これでは、良い的になってしまいましたね。
「馬鹿な! こんな事が!」
騒ぎで駆けつけて来たので、また増えました。もう私も何か殲滅する魔法でも使ってしまいましょうか……。
「無駄に死にたい奴らが増えるとは……実力のわからぬ愚か者は、我が忍術の前に焼け死ぬが良い! 忍法! ファイヤー・ブラスト! 熱風陣!」
いつも笑顔で挨拶してくれる気持ちの良いおっちゃんが一番酔っている台詞を言っています。
あの魔法は『フレイム・ストーム』と違って、高温熱風で蒸し焼きにする魔法なのです。まともに喰らったら、全身の皮膚が爛れてしまうので、地味に恐ろしい魔法です。
範囲が術者の正面に限定されますが、目の前に居たら、即死確実です。
「お姉様、あの者達が引き付けている間に内部に潜入してしまいましょう!」
私とシズクの背後には、カチュアさんと6名だけ残っていますが大丈夫なのでしょうか?
来る時に聞いたのですが、騎士が500人ほど常駐しているそうです。魔法を使って上手く立ち回っていますが、ギースさん達は21人なので、その内に数で負けてしまうような……。
「かなりの騎士たちが居ると聞いていたのですが、加勢しなくても大丈夫なのですか?」
「あの程度の雑魚の騎士に負けるような者達は連れて来てはいません。6人に1人は癒しの風を使える者と速度強化が使える者がいますので、半端なレベルの騎士の剣など貰ったら、戻り次第スペシャルメニューで、鍛え直します!」
カチュアさんと6人の人達から、怯える感情を少し感じました……スペシャルメニューとかいうのは一体どんな訓練なのでしょう?
気のせいか、ギースさん達の空気が変わった気がします。もしかして、いまの聞こえていたのかな?
それならばと囮に任せて侵入しましたが、スペシャルメニューがすごく気になります。
「カチュアさん、どんな特訓なのですか? とても気になって集中出来ないのです」
「……死ぬ寸前まで、追い込まれるだけです……シズク様曰く、死の寸前から立ち上がれば必ず強くなれるそうです。私は……以前に細切りにされた事があるのですが……もう二度とあの訓練だけは受けたくありません……」
はぁ?
もう一思いに殺された方がましと思うのですが?
それで強くなれるのでしたら、私はもっと強くなっていますよ?
「スペシャルメニューの時はセリス様が居るので死ぬ事はありませんが……皆一度は受けていますので、あれを受けるぐらいでしたら、死ぬ気で戦うと思います」
「ちょっとシズク、いくらなんでもやり過ぎなのではないのですか?」
「大丈夫です! 見極めて鍛えていますので決して死なせません。漫画でも操ちゃんは、その訓練をすると負けた強敵に勝っていたので間違ってはいません!」
……それは、セリスが癒しの女神様に見えるのは当然ですね。
姉さんとか言っている意味が何となく理解出来ました。
しかし、主人公が滅多切りされて強くなるとか、流石拷問漫画ですね。
14歳の少女がそんな事をされたら、強くなる前にトラウマになると私は思うのですが……向こうの世界の人は精神論だけで乗り越えるとか、恐ろしい人達が沢山いるのですね。
「カチュアさん達は、よく納得しているというか耐えてますね?」
「最初は、どうして処刑される選択肢を選ばなかったかを後悔していましたが……試練さえ突破出来れば、今までにない待遇と自分自身も強くなれます。この装束と御屋形様に作って頂いた刀も素晴らしいですが、何よりも強力な魔術を授けていただけるのは感謝しております」
私が試作品で、適当に作っているとは言えないですよね……シズクが刀だけは全て持っていってしまっているだけなのです。
魔術に関しては、こんな感じの魔法のスクロールが欲しいと言うから、頼まれて作っています。
聖魔術だけは初級しか作れませんが、セリスに作ってもらえば問題有りません。
今の所、闇魔術だけは初級までしか教えられないのですが、使い手が少ないので、こちらも特に問題はありませんね。
「1つ聞きたいのですが、魔術の習得はどうしているのですか? シズクには結構なスクロールを渡しましたので、皆さんに配布でもしていると思っていましたが?」
「貴重な魔術のスクロールを使わせていただくので、忍法の試験を受けるにはかなりの覚悟がいります。自分の属性とこのイメージなら、習得出来ると思ったら、スクロールを使わせてもらいますが、失敗するとお仕置きが確定します」
魔法なのにやっぱり忍法としか認識されないのですね。
しかし覚悟がいる試験ってなに?
私が暇な時に作っているだけです。ちょっと高いけどスクロール代しか掛かっていないのですから、別に貴重じゃないんだけど……確かに失われた魔術もあったけど、確実に成功するわけじゃないしね。
「ちなみにお仕置きの内容を聞いても良いでしょうか?」
「……お尻叩きです」
「はぁ?」
「その時に道場にいる者達の前で行いますので、全員から1回づつ手加減無しで叩かれてしまいます……手加減をするとその者も連帯責任になってしまうので、皆本気で叩いて来ます。最初の頃は人数が少なかったのでましでしたが、今はタイミングが悪いと80人ほど居ますので、80回は叩かれる事になります」
「そんな事をしていたのですか……まさかとは思いますが、壁に手を突いてパンツを下ろしてでは無いですよね? そんな人数の前だし……」
「当然そのようにしています。シズク様も御屋形様にされていると思いますが?」
あれは、勝手にシズクが脱いでいるだけですので、私の趣味ではありません。
「もしかして、カチュアさんも経験があるのですか?」
「御屋形様には、せっかく作って頂いたのに申し訳ありません。私は、3回ほど失敗した事があります。一番失敗した事があるのがナッシュの7回です」
そんな公開プレイで、カチュアさんもお尻叩きとか気の毒に……しかし、美形のお兄さんが一番叩かれているとかアイリ先生が知ったら面白そうですね。
お馬鹿な話をしている間に私とシズクとカチュアさんだけになっています。付いてきた6人の人達はどこに?
「シズク、私達3人だけになっているんだけど、他の人達はどこに?」
「先ほどこちらを追手が来る気配を感じましたので、撃退するように言い付けました。倒した後は、別行動で注意を逸らす事に専念するように命じています」
ちょっと心配ですが、逃げに徹していれば、多分大丈夫だと先ほどの戦闘でわかりました。恐ろしいというかマゾの軍団と命名したくなってきました。
しかし、広い屋敷ですが、先ほどよりもセリスの反応を感じます。しかし、やけにマナを小さく感じます……
「この先の部屋の通路から地下へ続く道があって、その先にセリス様は居ます」
どうやって調べたのか聞きたいのですが、忍者ってなんでもありですね。
扉を開けると5人ほど騎士が居ますが、今までの者達と違って、全員レベル70台です。
「なんだ貴様らは? ふむ、よく見れば女3人で1人は中々の上玉だな。あの女の前に良い思いが出来そうなので、待機していたのも悪くないな」
よくわかりませんが気分が悪くなって来ましたので、殺してしまいましょう。
「御屋形様、ここは私が引き受けますので先に行って下さい」
カチュアさんのレベルも70なので互角とは思いますが、5人も居るのですが大丈夫なのでしょうか?
「ほう? 俺達の相手を1人でするつもりなのか舐められたものだな。その体にしっかりと教えてやるからせいぜい良い声で鳴いてくれよ?」
「この下種どもが……お前らのような邪な者達に負けるような鍛錬はしていません」
「余程腕に自信があるみたいだね。まずは俺が相手をしてやるよ」
「5人でくれば良いものを自惚れの代償は死ですよ?」
「お前のようなお高い女には、敗北をきっちりと刻んでやるよ!」
相手が斬り込んできましたがカチュアさんは、背中の二刀を抜いて片方で相手の剣を受けてもう片方の刀が相手の首に巻き付いて一撃で首を落としましたよ!
「まさか、リガルが一撃だと!?」
「どうしたのですか? 大きな口を叩いていた割には弱すぎますね」
「怪しげな剣を使いやがって……構わねぇ、おいやるぞ!」
残りの4人がやる気になりましたがあの刀は、大会で見た剣が面白そうだったので、作ったウィップ・ブレイドですね。
刃の方で巻き付ければ切断と反対で巻き付ければ捕縛に良いかと思って作ったのですが変則的な動きの方にしか能力を向上できなかったので、失敗作なのですがカチュアさんが持っていたのですね。
カチュアさんの実力は問題なさそうなので、すり抜けようとすると1人立ち塞がりましたから、首でも刎ねようとしたら、シズクが先に真っ二つにしてしまいました……残りの3人が引いていますよ。
「秘剣! 斬魔剣! その程度で、お姉様の前に立ち塞がるとは身の程を知るがよい!」
居合で抜刀したと思うのですが、私には、全く刀が振られたのが見えませんでした!
いつの間にか刀の速度がさらに速くなっています。相手の鎧事斬るのもすごいです。
しかし、何の躊躇いも無く殺してしまうとか末恐ろしい子です。
「カチュア、先に行きますので、残りは任せましたよ。お姉様、早く行きましょう!」
「始末したら、私も直ぐに参ります」
お任せして付いて行くと地下への通路があります。左右には格子の付いた扉の部屋がありますが、中にはボロを着た女性達が繋がれています。
どうも監禁部屋のようですがセリスを助けたら、一緒に解放してあげましょう。
奥に扉があります。中に複数の気配とセリスが居る事は確認出来ます。
この向かう先で何をしているか知りませんが、私のセリスに手を出した代償は高くつきますよ!




