56 想いの代償
扉を開けると複数の男達がセリスに何かしています。私の心の中は全員殺しなさいと強い衝動に駆られます!
「上が騒がしいと思ったら、ご主人様の登場か。お前には用が有ったので、呼び出す手間が省けたので丁度いいな」
「私には、貴方に用などありませんが、セリスに何をしているのですか?」
「これを見てそんな事を聞いて来るとか世間知らずの生娘か? 男が女にする事なんて一つしかないが、たまにはお前のような小娘も見てくれは良いので悪くないな」
シズクが真っ赤になって、怒りながらも恥ずかしがっているような感じですが……なるほど、シズクはおませさんですね。
これは男女の営みの強制版なのですね?
こんな事をして何が楽しいのかわかりませんが、セリスが日頃から男なんて下らないと言っている事がようやく理解出来ましたよ。
「私に言える事は今ここで貴方達を生かしておく必要がないということだと認識出来ましたよ」
「その声は……シノア様……申し訳ありませんこのような姿をお見せしてしまって……」
マナが小さいと思ったら、首と手足に魔封じの枷が付けられていますね。
あれを付けられるとマナが半減してしまうのです。普通の人なら魔法が使えないだけなのですが、私やセリスが付けられると非常に宜しくない代物です。
5つも付けれらているので、今のセリスだとまともに動けなくなるぐらいに弱体化していると思われます。
しかし、セリスがこいつらに遅れを取るとは思えないのですが……。
「いま助けますが、よくセリスを捕らえる事が出来ましたね? 貴方達程度に出来るとは思えませんが?」
「奴隷だった頃の話をしたので、素直に付いて来たと思ったら、何人か消し飛ばされた。こいつを使ったら大人しくなったので、魔封じの枷を付けたらそのまま倒れたから簡単だったな」
よく見ればガルドの足元にカインさんが倒れています。かなり重症な感じですが、彼はガルドより強いと感じましたが……。
「カインさんは、貴方と同じ使徒なのではないのですか? それに貴方に負けるとは考えられませんが?」
「確かに剣の腕なら俺より上だ。その奴隷女が来る前に来たが、女は捕まえてあるから逆らったら女を殺すと言ったら無抵抗とか、呆れたもんだ。たかが剣術大会で勝ち抜いた平民の分際で使徒なのが前から気に入らなかったから、ついでに教育してやったんだよ。そこに連れて来られたその女が聖魔術をぶっ放すから、何人か消されたのは驚いたが、こいつを盾に出来たので結果オーライだな」
セリスは元々こいつらを消すつもりで付いてきたみたいですが、カインさんを人質に使われた訳ですね。
「今度は、その女を使って、ついでにこいつの力も本人の意思で頂いたので、そっくり手に入ったのは助かったよ。もうこいつには用が無いが、こんな奴隷女に本気で惚れるとは馬鹿な奴だ」
「貴様……それ以上セリスさんを侮辱する事は許さんぞ……」
「まだ意識があったのか? あれだけいたぶってやったのにしぶとい奴だな。名誉ある使徒が奴隷如きに恥ずべき行為をしているからこうなるんだよ。まあ、お前のお蔭で久しぶりに部下達が楽しめているから、ありがとうな」
「お前だけは……絶対に殺してやる……」
「その状態で力も無いのにせいぜい頑張ってくれ。確かシノアと言ったな? 状況は見ての通りだが下手な真似をしたら、2人を殺すから動くなよ?」
初めから殺す気でいる癖によく言いますね……セリスは死なないとしても、カインさんは何とかしないと本当に殺されてしまいます。
「シノア様、私の事は良いので、こいつらをまとめて始末して下さい!」
「おい! その女に喋らせるな。まずはその指輪をこっちに渡してもらおうか? 俺のレベルが増えている事が知られるのはまずいし、お前の能力が見れなかったのでついでに見たいからな」
「わかりましたが後悔しても知りませんよ?」
指輪を外して投げて渡すと、私を見て驚いていますね。
「貴様……人ではないのか? しかも技能が化け物じみているとか、殺すのは惜しいが……お前は使徒だったのか! どの神の使徒なんだ?」
どうも私の能力が全て見えたようです。中々いい鑑定眼を持っていますね。
「それで、どうしますか?」
「まずはどのくらいなのかわからんが、貴様の力を貰おうか。他の神の力なので、アストレイア様に半分流れてしまうが」
「ありませんよ? 私は貴方達のように力など貰っていないので、渡す物がありませんねー」
「ふざけるな! 使徒なのにそんな事はあり得んだろう!」
「嘘は言ってませんが、そんなに言うのでしたら、勝手に取って下さい」
「よく言ったな。小娘よそこを動くなよ?」
そう言って私に近付いて来ました。どうやって相手から奪うのか知りませんが、私から取れるのかな?
剣を抜くとそのまま私の右胸の辺りを刺し貫いてきましたよ!
久しぶりに刺されると痛すぎます!
(お姉様!)
(シズクは動かないで、2人を助けるチャンスを待っていて下さい)
(しかし、剣がお姉様の胸に刺さっています! このままでは、お姉様が……)
(心臓の無い方なので、まだ大丈夫です。このぐらいなら、私は死にませんので、何があってもカインさんの命を最優先して下さい。彼は死んでしまったら、お終いなのですからね)
(わかりましたが私にも我慢する限度がありますので、その時はお許しください)
正直かなりの痛みなのですが、早く抜いてくれないと治せないし、マナが無駄に減っている状態なんですよね。
「馬鹿な……力の核があるはずなのに感じられん……貴様の核は、どこにあるんだ?」
「い、痛いですね……だから無いと言っているのに貴方は人の話を聞かない馬鹿なのですか?」
「そんなわけがあるか! 使徒ならば必ずあるはずだ!」
貴方達とは違うとは言えませんが、やっと剣を引き抜いたと思ったら、他の場所を滅多刺しにしてきます!
私が無抵抗と思ってやりたい放題ですね。
離れて後ろに居るシズクから、怒りに満ちた感情がわかります。まずいです。
「あ、アイス・ウォール!」
シズクが動き出す前に後ろに壁を作りましたが丁度抜いた瞬間だったらしく刀が貫通した状態で凍ってますね。
「お姉様! 何故なのですか! 流石に我慢など出来ません!」
「シズクの言う通り戦ってくだされば、この者達などシノア様の敵ではありません! どうしてなのですか!」
「セリスがカインさんの為に耐えているのに私がカインさんを見殺しになど出来ませんよ……カインさんはまだ生きていますからね」
しかし、ちょっと不味い事にもう意識が保っていられないぐらい立っているのも辛いのです。
途中で心臓の辺りを貫かれた時は全力で治しましたが、ここで意識を失ってしまうとノアがカインさんも含めて皆殺しにしてしまうのは明白です。
わからないように表面以外の人体の重要部分だけ治す事に集中していますが、半端に人の体の構造なので、普通の人間が死ぬような事をされると私の意識が落ちてしまいます。
海中で電撃を喰らった時のように、意識が飛ばないのに継続するような痛みでは死なないようになっているとか、どんだけ不便な仕組みなのですか……。
マナで変換しているとはいえ、出血量も多いのでさっきから集中がしにくいですね。
「それだけの傷を負っても死なないどころか倒れないとは、やはり貴様は化け物だな」
「もう意識が飛びそうなのでまずいのですが、そろそろ気が晴れたのでしたら、2人を解放して見逃してくれませんか? そうしたら、そのまま何もせずに帰ります。言っておきますが、これは私からの最終警告ですよ?」
「お前は馬鹿なのか? この状況で何を言い出すかと思えば警告だと? この女は俺がそのまま飼ってやるし、貴様のような化け物はここで滅ぼしておくに決まっているだろう? おい、誰かそこに転がっている馬鹿な男を殺せ」
「止めて! 彼を……カインを殺さないで!」
「や……やっと、私の名前を呼んでくれましたね……貴方を助けられなくて不甲斐ないのですが、最後に聞けて良かった……」
近くに居た騎士が倒れているカインさんの胸を刺すと、瀕死だったカインさんはそのまま動かなくなりました……彼から、生命を感じませんので死んでしまったと思いますが、これで彼らの死刑執行の誓約書にサインした事になります。
穏便に済ませようとして、せっかく警告してあげたのに馬鹿な事を。
そして、同時に私の首がガルドに刎ねられたようですが、起きたらセリスかシズクに結果を聞くしかありませんね……。
全く意味の解らない事を言いやがって……しかし、どこの神の使徒かは知らないが、レベルのわりに能力がぶっ飛んでいたな。
使徒である事を剥奪してから、誓約魔術で縛れば良いと思っていたのに残念な事をしてしまった。
カインの野郎の力もそのまま移したから、アストレイア様には知られてはいないはずだ。この指輪で隠しておけば問題はないが、こいつの始末をどうするかだな。
外の様子もわからないので見に行きたいが、小娘が作った氷の壁が術者が死んだのに解除されないとかどれだけ強力な魔術なんだ?
しかし、この女もカインを殺したら無反応になりやがった。今の内に誓約魔術で縛り直したいんだが、こいつの目の前で散々教育し直してやったのに、心が全く折れないから出来なかったんだ。今なら出来そうなんだが、令呪が無いのは何故なんだ?
ん……首のチョーカーが切れていると思ったら、こいつの能力が見えるがこいつも化け物になっていたのか!
「貴様、人では無くなっているのか? あの娘の眷属となっているとは、初めて見るがどうなっているんだ?」
「……」
「ちっ! こいつを殺したら、だんまりになりやがって……」
さてどうしたものかな……。
「カチュア! 貴女の魔法で氷の壁を破壊して下さい! 私の力では、お姉様の作った壁は破壊出来ないのです!」
「か、畏まりましたが御屋形様はもう……」
「いいから早くやって下さい! あいつは私が必ず殺します!」
「忍法! アシッド・マイン! 溶解の術!」
増えた女が知らない魔法を唱えたら、壁に大きな穴が空いたというより溶かされたぞ!
外に出れるようになったが、少々骨の折れる相手みたいだな。
ガキの方は小娘の首の方に行くが、女の方はこちらに構えているようだ。2人ともレベル70台では、俺の相手にならない事をその体に教えてやるか。
「まさか使徒たる俺に剣を向けるとは死にたいようだな」
「たかが貴族の枠で使徒になれただけなのに、そんなに自分が優れていると思っているのかしら?」
「よく見たら、お前はシュタイナー家に使えるミレディア子爵の娘だな? どうしてこんなとこにいるんだ?」
「私はもうミレディア家とは無縁の者です。ここに居るのは一度死んで這い上がった亡霊に過ぎません」
「そうか、お前もヴァレンタイン家に忍び込んで消息不明になった1人か、ならば俺が派遣したコクマーの野郎がどうなったのか知っているのか?」
「彼がこの屋敷の構造を全て教えてくれましたので、警備体制から抜け道まで全て把握しています」
「あの笑顔で平気で人を欺いて殺す野郎が素直になったもんだな」
「彼はギースと同じぐらいにシズク様の考えに酔っていますからね……もう全くの別人と言えるかも知れませんね」
「王家の密偵まで居るのかよ……しかし、よくぺらぺらと喋るな?」
「貴方はここで消えるのですから、教えても問題有りません。少しばかり私達よりレベルが高いのかも知れませんが私達には授けてもらった失われた魔術があるので、決まればお終いです」
「さっきの魔法か? まあ喰らったらやばいが、今の俺の身体能力なら、当たる事はないし、使わせんよ」
カチュアと話していたら、突然強い気配を感じて防いだが、先ほど俺が殺したはずの小娘が首の無い状態で大きな鎌を振り回して来やがったぞ!
流石にカチュアの奴も驚いているが、どうなっているんだ?
するとガキの方から、声が聞こえるが持っている首が喋っていやがる!?
「んー、いまのを防ぐなんて半端にレベルがあるからなのですねー。あのまま首を落とされていれば楽に死ねたのに可哀想にねー」
「化け物が……まだ生きていたのか?」
「んー? シノアは死んでしまいましたよ? せっかくあの子が警告してくれたのに無視するとは愚か者ですねー。シズク、しっかりと僕の首を持っていて下さいね? 落としたらお仕置きをしますからねー」
「は、はい……絶対に落としません! ノアさん!」
シズクは、人型の亡霊とかアンデットには弱いですから、かなり怯えていますねー。
怯えながら僕の首を抱きかかえていますから、服が血まみれになっていますが、後で洗浄すれば問題無いです。先ほどまで怒りに満ちた感情だったのに、今では僕に怯えまくっているとか年相応に可愛い反応ですよ!
「あの娘が死んだのならば、貴様は何なんだ?」
「んー? 僕ですか? 終わりを告げる者ですよ? 久しぶりに出れたので、少し相手して下さいね!」
そう言うと首の無い体が斬り込んで来る。辛うじて受けれるが、こいつの攻撃は重すぎる!
いまの俺のレベルは272なので、技能はそのままだが、身体能力は以前よりは倍になったはずなのにまるで相手になっていない!
いや、受けれていると思っているだけで、手加減されている……先ほどから、俺に隙が出来てもその時だけは、攻撃の手が緩めているようだが、舐めやがって!
「くそったれが……舐めやがって、これでも喰らえ『フレイム・ストーム!』」
「狭い室内で、使うとはアホですね『ヴァイス・フリーズ!』さあ、待っててあげますので他の魔法も試して下さいねー」
俺の炎が全て凍り付いて、砕けたぞ!
こんな魔法があるのか!
「おのれ……『ファイヤー・ジャベリン!』『ファイヤー・ボルト!』『フレイム・ランス!』」
すると先ほどと同じように全て炎が凍らされて、砕け散ってしまったが、あり得んだろう!
「貴方は馬鹿なのですか? 同じ火魔術を使っても結果は同じなのですが? おっと、これは済みませんでした。貴方は火魔術しか使えない無能でしたねー。一応聞きますが火属性の盾は作れますか?」
「使えるがそれがどうかしたか?」
「では、全力で防御して下さい。僕は今から貴方に水魔術で攻撃しますので、貴方の防御力が優っていれば防げますよ? では、行きますからねー『ウォーター・ブレイド!』」
どんなすごい魔術を使うかと思ったら、初級水魔術の刃ではないか?
これなら、楽勝で防げるわ!
「舐めやがって、『ファイヤー・ウォール!』初級魔術程度なら、斬り込めないし俺には効かんぞ!」
しかし、俺の予想を裏切って炎の壁が切り裂かれて、俺の左腕を切断しやがった!
馬鹿な!
俺には初級魔術無効があるのに、なぜこの程度の魔法が通じるんだ!?
「あれ? 効かないとか言ってましたが、壁は消滅するし、腕も斬れてしまいましたね? 初級魔術無効があるのに生かせていませんねー」
「たかが初級魔術なのにどうなっているんだ!?」
急いで腕を回収させて、回復魔法が使える奴に繋がせたが、剣で斬られたように切り口が綺麗だったお蔭で何とかなった。こいつの能力が見えなくなっているんだが、このままでは確実に勝てないぞ!
「んー、どうやら貴方達は魔術に関して大きな勘違いをしているみたいですね? 初級に分類されているだけで、使い手が鍛錬すればその威力は上級にも匹敵するのですよ? まあ、尤もいまのを防ぐには最低でも上級クラスの盾が無いと無理でしたけどねー」
「ならば……貴様が上級の魔術を使えば……」
「よく理解出来ましたね! おめでとうー! 先ほどから、僕を鑑定していますが、そんなに見たいのですか? 仕方ないので、技能以外は見せてあげましょうかな? 僕って、優しいねー」
馬鹿にしやがって!
改めて鑑定してみると……はぁ!?
あり得んだろう!
こいつのレベルが5000だと!
いきなりレベルが跳ね上がっているがそんな馬鹿な!
しかも、こいつの職業は……。
「はい、おしまいですー。わかったかな? 君達は虫けらの分際で、触れてはいけない事に手を出してしまったのですよ? さーて、もっと僕を楽しませてくれないとこの世の苦痛を全て体験する事になるから、しっかりと抵抗して踊って下さいね!」
「ゆ、許して下さい! 知らなかったのです! 今後は貴女様に逆らうなど決して致しませんので助けて下さい!」
「はぁ? 僕の言った事が聞こえなかったのですか? 早くさっきまでの威勢で攻撃してきて下さいよ? せっかく出て来たのに詰まらないではないですかー。僕は、弱者が粋がって踊るのが大好きなんですよ! 言っておきます。僕の職業を見た貴方なら理解出来ると思いますが、死んだ後も楽しい世界が待っています。僕の首を刎ねた貴方は特に可愛がってあげます。楽しいですよ!」
こんな化け物に勝てるわけが無い!
鑑定した途端に俺でもわかるような圧倒的な力を感じる。アストレイア様の側近の使徒の方と比べ物にならないわ!
どんな事をしてもいいから、許しを請わないと死すら生ぬるい地獄が待っているに違いない!
生き残るには、少しでも確率を上げる為に従うしか道が無いわ!
「んー、地面に頭を擦り付けてお願いされても詰まらないですね……そうだ! 僕と一つゲームでもしますか? それに貴方が勝ったら、貴方達の命だけは助けてあげましょう! どうですか受けますか?」
「受けます! いえ、受けさせて下さい!」
化け物の気まぐれでチャンスが訪れたが、何をさせる気なんだ?
「簡単ですよ? 貴方達全員で、そこで抜け殻になってしまっているセリスに武術だけで勝てたら助けてあげます。魔法での攻撃は禁止とします。セリスにも仕返しをするチャンスをあげないと不公平ですからね。ほら、枷は破壊しましたので、セリスもいつまでも呆けてないで立ちなさい」
いつの間にか魔術の枷が粉々に砕けているんだが、どうなっているんだ?
あの枷を破壊するには余程のマナを上乗せしないと不可能なんだが、触れずにそれが可能なのだとしたら、この化け物のマナは規格外という事になるぞ!
まあ、助かるにはこの奴隷を倒せば勝ちとか楽勝だな!
こいつの放った聖魔術は恐ろしいが武術限定の条件だし、カインの奴が死んで呆けているのなら、一撃で終わるな。
「ノア様……私は……」
「んー、男なんて、もう不要とか言っていたのに心を許すからそんな思いをする事になるのですよ? 貴女の心がその者に少し向いていたのは知っていましたが、そこまで好きになるとは彼も頑張った甲斐がありましたねー。彼の魂は僕が持っていますので、貴女の頑張り次第では話ぐらいならさせてあげますよ?」
会話が出来ると聞いて立ち上がったが、こいつのレベルは88だがなんとかなるだろう。
俺達が痛め付けた後だし、立っているのもやっとのようだ。
「……ノア様、本当に話をする機会をいただけるのですか?」
「んー、僕は嘘を付きませんので。今なら可能ですが、早くそいつらを倒さないと彼の魂が消滅してしまうので、急いだ方が良いですよ? 急がないと時間切れになってしまいますから、早くしなさい」
「畏まりました……直ぐにこのゴミ共を駆逐します……『ハイメガ・キュア!』『ブレッシング!』『プロティクション!』」
何だと!?
一瞬で、万全の状態に戻りやがったし、身体強化も使えるのか!
収納からチャクラムとかいう武器を出しやがったが、それにも強化魔法を使っていやがる。
こっちは、一応は俺も含めて7人もいるんだから、負けるとは思わないが、いざとなったら、こいつらを捨て駒にすれば問題無いな。
「んー、セリスがやる気になったようですから、頑張って殺し合って下さい!」
「奴隷に出来ないのは残念だが死にな!」
一斉に取り囲んで攻撃してしまえば、いかに強化していても容易いわ!
「リード・マインド・サークル!」
何か唱えたが問題無いと思ったら、俺達の攻撃が全く当たらない!?
まるで、どこから攻撃されるかわかっているみたいだ。逆にこちらの部下があっさりと2人も首を斬られて殺されてしまうとか、さっきの魔法はなんだ!?
しかも何か歌のような言葉を口ずさんでいて、動きがまるで踊っているように舞いながら部下達を圧倒している。
俺の攻撃はまともに打ち合わずに上手く流している。気が付けば部下が全員殺されているか手足を落とされて、転がっている状態になった……こいつがここまで、強いとは……。
「身体強化はわかるとしても部下たちがこんな簡単に倒されるのは、さっきの魔法のせいか? 魔法の攻撃は禁止じゃなかったのか?」
「んー。セリスは別に魔法で攻撃していませんので、禁止事項に触れていませんよ? ちょっと身体強化をして、口遊んでいる歌は戦意を高めている魔法だし戦う直前に使ったのは、ただの読心魔法ですねー」
「技能は知っているが、そんな魔法があるのか!?」
「んー。あの技能と違って、セリスなら範囲が本人から10歩ぐらいしか無いので、近づかないとダメだし、相手の意識が自分に向いてないとはっきりと読み取れません。そして、相手の精神力か魔法抵抗値が高いと読む事が出来ないので半端な魔法です。 僕も常に使いたいのですが、残念ながら、シノアに適性が全くないので使えませんねー」
それだけの範囲があれば十分に脅威ではないか!
これが半端な魔法とかおかしいだろう?
「いくら強化しても、私はそこまで武術は得意ではありませんので、数の不利を埋めただけです。お蔭で下種な会話も聞こえて来たので不快です」
「ちょっとばかり貴様を舐めていたが、ここからは本気でやらせてもらうぞ!」
「私も時間が無いので、早く貴方を切り刻んであげます」
心を読まれているとはいえ、こちらの攻撃の方が剣も速いので、あちらは防ぐのが精一杯のようだ。
身体強化をしているといっても、俺の方がパワーで優っているようなので、まともにぶつかれば俺に分がある。
このまま押し切ればこちらの勝ちは確実なのだが、こいつは一向に疲れた様子が無い?
少しづつなのだが、片方の武器で受けている間にもう片方が躱しにくい方向から飛んでくるのだ。あのチャクラムという武器はこんなに使える武器だったとはな。
しかも、俺の攻撃を受けきれなくて吹き飛ばされて壁に叩きつけられたり、斬られたりしているのに痛みを感じないのか?
回復魔法を使っていないのに少しも衰えないとは、いくら何でもおかしすぎるだろう?
俺の剣をまともに受けて、大きな隙が出来た瞬間に渾身の力を籠めて肩から切り裂いてやったがこれで、俺の勝ちだと思ったら、そのまま腕を掴んで、もう片方の武器で、剣を握る俺の腕を斬り落としやがったぞ!
「馬鹿な! そこまで斬られているのにどうして、平然と動けるんだ! 貴様も不死身だったのか!」
剣を引き抜いて、何事も無かった様に傷口に手を添えると一瞬で元に戻りやがったぞ!
くそったれが……初めから俺に勝てる要素が無かったという事か!
こんな不死身の化け物に勝てるわけがない!
「はーい、そこまでですー。これは引き分けになるのかな?」
「ノア様、待って下さい! 私は、まだ負けてはいません……勝負は終わっていません!」
「いやいや、普通の人間だったら、セリスは死んでいます。相手の戦意を挫いたので、まあ良いかなーと思ったのですが、僕の言っている事は間違っているのかな?」
「そ、それは……そうなのですが……私はまだ……」
「セリス、誰に向かって言い訳をしているのですか? 貴女は僕の何なのかはっきりと言って下さい?」
「も、申し訳ありませんでした……私は貴女様に絶対の忠誠を持って仕える身です。差し出がましい発言をした事をお許し下さい……」
「んー、素直になってくれて、僕は嬉しいよー。もしも、まだ我が儘を言ったら、きついお仕置きをしょうと思っていたのですが、それもちょっと残念です。貴女ならカミラと違う事が楽しめるかと思いましたが。良い判断をしましたねー」
化け物の奴隷女が地べたに平服して、怯えていやがる……さっきまでの俺に向けて来た殺気が嘘のようだな。
「引き分けと仰いましたが、貴女様が言った通りでしたら、俺の剣が先にその奴隷を殺した事になりますが……」
「はぁ? お前は、僕が引き分けと言ったのにそれにケチを付けるとか、ゴミの分際で何を言っているのですか? これは、代わりにお仕置きをする必要がありますねー」
「ケチだなんて、とんでもございません! 俺はただ確認がしたかっただけなのです! そんなつもりは……」
「お前は、セリスと違って弁解をする必要がありませんので、許しませんよ? まあ、なぶり殺しにするのは、勘弁してあげますのでこの罰に耐えれたら、生かしてあげます」
首の無い体が俺の頭に触れると頭に直接イメージが流れ込んで来るがこれは!
「ぎ、ギャ――――――――助けてくれ! もう、殺してくれ! やめてく……」
なんか叫んでイメージだけで死んでしまったようです。惰弱な使徒ですね。
「んー、まさかこの程度で死んでしまうとは、精神力のない魂ですね? 先に力を奪ってから焼き付けたのは正解でしたね。奪う前に死んでしまったら、アストレイアに戻る所でしたよー」
「ノア様……一体何をしたのですか?」
「んー、セリスがもし我が儘を言ったら見せる予定だった、拷問のイメージを100通りほど魂に直接同時に体験させてあげただけですよ? 一度に全ての体験出来るとか滅多に出来ない体験ですから、楽しいですよ!」
セリスの顔が青くなって怯えていますが、中々気持ちの良い感情ですねー。
普段は、中々の精神力で自分を律していますから、これは美味しすぎます。
もしかしたら、セリスには拷問とかした方が良いかも知れませんね!
絶対に死ねないし、精神も狂わないので、どんな拷問でもきっと耐えられると思うので、僕の心は満たされまくりそうですよー。
僕の眷属じゃなかったら、楽しい拷問を飽きるまでしてみたいのですが、そんな事をしたら、シノアに嫌われてしまうのでとても残念です。
先ほどまでのゴミ共にされていた記憶もありますが、これはこれで楽しそうなので、誰かに試してみたいですね!
「さて、残りのゴミも始末しないといけませんので、シズクは、僕の体に首を乗せて下さいねー」
「はい、ノアさん……」
首の無い体に近付くのも怯えながら、慎重に持って来てくれました。もう半泣きでやっていますが、そんなに怖いのかな?
さて、首が付いた所で、まずやるべき事はあの娘ですね。
僕の首無し状態で遊んでいる姿を見てしまいましたから、消したい所ですが、シズクの部下ですからね。
「カチュアと言ったかな? 僕の前に来なさい」
「えっ!? はっ、はい!」
恐ろしく怯えていますよ。
誰かさんと一緒で少し失禁までしています。貴族の娘とは、お漏らしが得意なのでしょうか?
「貴女は本来なら、僕のこの姿を見てしまったので、生かしておく事が出来ません」
「ノアさん、待って下さい! カチュアは私の部下なので、命だけは助けてあげられないでしょうか……」
「まあまあ、話の続きを聞きなさい。せっかくシズクが育てた面白い部下なのですから、殺すのは惜しいと思いましたので、生かしておいてあげようと思います」
「それでは、助けてくれるのですか!」
「眷属にするには物足りないので、誓約魔術で僕の絶対支配下に置きます。なので、カチュアとやらは上着だけ脱いで下さいねー。別にそのままでも良いけど、大事なコスプレ衣装に穴が空いてしまいますけど?」
「カチュア、言われた通りにするのです!」
「わかりました……これで宜しいでしょうか……」
シズクの教育なのか、私に怯えているのか知りませんが、素直な子は好きですよー。
「我 シノアの名において命じる 汝、カチュア・ミレディアを我が配下として迎えん 魂に我を刻みて契約を行使する オウス!」
まあ、シズク程ではありませんが、新しい目が手に入りましたよ。
「これで、貴女はシノアに絶対の服従をする事になります。ちなみにこの支配はシノアが滅びない限りは解けないので、誓約魔術を昇華した者ぐらいしか関渉が出来ません。どうなったのかはシズクから聞くといいですよ。もう服を着ても良いので、その美味しそうな胸をしまわないとつい揉んでしまいそうです」
「畏まりました。以後は絶対の忠誠を以て仕える事を誓います」
「さて、最初の任務を与えます。貴女は他の者にこの屋敷から離れるように伝えなさい。貴女の気配が範囲内から消えたら実行しますので、貴女は最後に離れるのですよ?」
「承知いたしましたが、何をなさるつもりなのでしょうか?」
「それは、この屋敷を離れて見学していればわかりますので、楽しみにしていて下さいね!」
任務を与えると即座に行動する所は中々教育が行き届いていますねー。
「あの……ノアさんにお願いがあるのですが……」
「んー。シズクのお願いはわかっています。僕としてもいずれ眷属に迎えたいと思いますが、貴女はシノア自身にしてもらうのです」
「わかりました。お姉様は方法が解らないと言っていましたので……」
「カミラが方法を知っていますが、まだシノア自身の心がその域に達していないだけなので、それまでは無茶な事をしないで死だけは避けるのですよ?」
「わかりました!」
僕に身も心も捧げたいとは素晴らしい考えをしていますねー。
「さて、残りの始末を最後につけて対価の回収をしますか!」
「ノア様、お待ちください……勝利は出来ませんでしたが彼と……カインと話す事はもう無理なのでしょうか……」
「んー。このまま何も無しというのも可哀想なので、特別に少しの時間だけ、あの壊れた体に魂を戻しますので急ぎなさい」
「ありがとうございます!」
喜んで彼を抱き起しています。少しぐらいはご褒美をあげないといけませんからねー。
「ここは……俺は死んだはずでは……」
「私がわかりますか!」
「セリスさんが俺を抱えてくれるなんて、もしかしたらここは天界と呼ばれるところなのか……」
「ごめんなさい……私の為に貴方を死なせてしまったの……私のような穢れた者の為に貴方を……」
「セリスさんが俺の為に泣いてくれるなんて、俺は幸せ者だよ……ガルドの奴から君の過去を以前に聞かされた事があるがそれがどうしたと思ったよ……」
「だったら、なぜ私に付きまとっていたのですか!」
「最初に一目惚れしたと言ったはずなんだけどな……過去がどうあろうと君を好きになる理由なんているのかい?」
「貴方は馬鹿です! しかも大馬鹿者です!」
「なんだかもう眠くて仕方ないんだが……もう一度だけ名前を呼んでくれないかな……」
「行かないで! カイン! 私は貴方が好きなんです!」
初めて自分の意思でキスしました。
好きな相手となら、こんなに幸せな気分になれるのですね。
「ありがとう……俺も……」
その言葉を最後にもう目を開ける事はありませんでした……わかっているのに私は願わなくてはいられません!
「ノア様、彼を……カインの時間を授けて下さい!」
「んー。ちょっとオーバーしていたけど、結構時間をあげたんだけどねー。でも、もうダメですよ?」
「でしたら、私と同じ眷属にしてもらう事はいけないでしょうか」
「ダメです。彼にはメリットがありませんし、もう魂の半分が足りないので、する事も出来ません。一つだけ方法がありますが、この世界の輪を乱す行為なんですよねー」
「何か方法があるのですか!? 私に出来る事があるのでしたら、どんな事でも致しますので、お願いします!」
「んー。君の全ては既に僕の物なんだしねー。仕方ありませんね……彼の時間を授けてあげますが、対価は貰いますよ?」
「どんな対価でも支払いますので、お願いします!」
「では、君の魂の情報から、その長い髪の情報を貰うとします。君が奴隷に落ちてもその髪だけは必死に守り抜いたのを知っていますので、対価としては足りませんが、まあ、サービスしてあげます。どうしますか?」
「それで、生き返られるのでしたら、好きなだけ持っていって下さい」
「まったく躊躇しないとは。仕方ないので叶えてあげますが、その者と一緒に貴方の思い出の地に飛ばしますので、どうするかは自分で決めて下さい。終わったら、屋敷に戻ってくれば良いです」
「無理なお願いを聞いてくれまして、ありがとうございます!」
そのまま2人を転移させましたが、愛というのも馬鹿に出来ない想いですねー。
僕としては、負の感情の方が美味しいのですが、たまには悪く無いですね。
ちょうど、カチュア達が退避し終わったみたいですから、終わらせてしまいますか。
地下なので、天井が邪魔ですから消し飛ばしますか。
「トゥール・ハンマー!」
僕が使える雷の直線型の魔法なのですが、空まで一直線に貫通して、瓦礫も綺麗に消滅していますので、風穴を開けるには丁度いい魔法です。
「シズク、上空に行きますので僕に掴まっていなさい。落ちても助けませんので絶対に離してはいけませんよ?」
「わかりました! 空を飛べるなんて初めてなので緊張します!」
翼を出して、地上に出るとまぬけなゴミが僕に注目していますね。
シズクの部下達が撤退した時に追撃でもしていれば助かったのに。まあ、私の生贄になってもらいましょう!
「我は望む 我が意思において大地の精に命ずる 我が眼下に映す生きとし生ける者の生命を喰らい尽くせ! ライフ・ドレイン・サンクチュアリ!」
屋敷の敷地の範囲内に居る者の生命を全て奪うように指定しました。あちらこちらで悲鳴が聞こえてきますが、体が灰になるまで止まりませんよ!
土魔術の最上級に分類される魔法ですが、この魔法の良い所は指定範囲にいる生命力が大地に吸収されるので、生命が大地の肥しになりますから、環境には素晴らしい生贄魔法なのです。
しかも僕的には成す術も無く命が失われる恐怖に染まった魂が手に入るので、魅力的なのです!
この魔法が昇華された時にはその範囲は素晴らしいのです。僕が高レベルで使えたら、すごく楽なんですけど、僕にはこのぐらいが限界なのです。
少々開放にコストが掛かりますが、この魔法は後腐れが無いので、知らない内に村を廃墟にする事も出来るのです。普通の生物が使うには問題があるんですよねー。
なんか匂います。シズクがついにちびってしまったようですが、手を放して落ちたら痛いで済まないですよ?
まあ、僕のパーティーに組み込まれていますので、魔法の影響は受けませんから、問題有りませんけどねー。
しばらくすると静かになったので、範囲内の全ての命が消えたのでしょう。
結構な人数が居たので、お蔭でレベルもしっかりとあがりました。とても美味しかったですねー。
よく意識してみたら、四天王の面子も僕と同じパーティーなので、彼等も飛躍的に上がっているはずなので、喜んでいるでしょうー。
あそこに集まっているみたいなので、向かいますかー。
僕が現れると全員が跪いています。しっかりと教育されている事は良い事です。
下りる前にシズクには洗浄魔法を掛けておきました。棟梁の面子は守ってあげないとね!
「戻ったけど、任務ご苦労さんですー。1人も欠けていないとか、しっかりと鍛錬している成果が出ていますね!」
「お褒めに与り光栄ですが、あの屋敷の者達はどうなったのでしょうか……」
ギースさんと言ったかな?
代表して聞いて来ました。わかっていても確認がしたいみたいですね。
「んー。全て殺しましたので、生命ある者はもう居ませんよ? 皆さんに忠告しておきますが、今晩の事は当然ですが他言無用です。もし少しでも漏らしたらどうなるかは、カチュアが見た事をします。どんな罰かぐらいは聞いても良いので、覚悟だけはしておいて下さいね?」
「後ほど、ここの皆には伝えます。徹底致しますので、ご安心して下さい」
「さて、そろそろ僕はおねむの時間なので、お屋敷に戻っていつも通りの仕事に戻って下さいね。それでは、僕に質問してきたギースさんは、お姫様抱っこで、僕を運ぶ任務を与えますので頼みますね。それではおやすみなさいー」
起こった事に反して、僕が軽すぎるのでみんな唖然としていますが、今回は中々楽しめましたよー。




