第20話 突然の騒ぎ
「ですから何度も申し上げておりますように、より高位のランクに行きたければ試験で結果を……」
「ふざけるな!おれはDランク以上の実力を持っている!そんな試験など要らないと言っているだろうが!」
僕が丁度ギルドに入ってきた時、その中心ではひどい騒ぎが起こっていた。
事務的に対応する女性のギルド職員。
そしてその彼女対して酷くボロボロな身なりをした1人の男が感情的に怒鳴りつけていたのだ。
「何でいきなりこんな場面に合うことに……」
そしてその光景に思わず僕はそう溜息を漏らす。
せっかく今まで清々しい気分でこのギルドに来たのに、いきなりこんな騒ぎを見せつけらるとは……
「悪趣味な……」
そして僕は周囲の冒険者がその騒ぎに関与しない様子にに気づいてそう呟いた。
冒険者からは受付嬢に男が怒鳴っている姿を面白がっている様子がありありと伝わってきているのだ。
つまり冒険者達がこの騒ぎに関与しようとしないのはただ面白がっているだけでしか無いのだが……
「ほら見ろ!ここにいる人生の落伍者達もおれにビビっているだろうが!」
……男はすごいポジティブな解釈をしてそう叫ぶ。
「いえ、単純に面白がっているだけだと思いますが?」
受付嬢の女性も男の言葉に呆れを浮かべているのがわかる。
それは僕が思わず頷いてしまうような至極当然の言葉だった。
「くそ!このアマ、なめやがって!」
けれども酷く自分の実力に余程の自信があるのか、男はその受付嬢の言葉に激怒する。
「おれは元衛兵様だぞ!それも衛兵の中で一番の剣の腕が立つと言われたことある程の!」
そして次の瞬間、その言葉と共に男は腰につけられた剣を抜きはなった。
その剣は確かに衛兵が持てるかなり質のいい剣だった。
しかもその男の身を包むぼろぼろの服は汚れてはいるが、確かにある程度質の高さを感じさせるもので、僕は本当に男が衛兵であったことを悟る。
……そして男を見たところ何か見覚えがある気がするのだが、気のせいだろうが?
「……畜生あいつに財布さえ盗まれなければ!今度会ったら絶対に殺してやる……」
だが何事かブツブツと呟いている男の姿に、思い出すのをやめた。
恐らく少し前に助けた湿地に迷い込んで死にかけていた人間の1人だろう。
何か口のなか、ヌメヌメしたいそうな顔出し。
というか冒険者に向かって人生の落伍者とか叫んでいたが、今の男の姿の方が人生の落伍者というに相応しいと思うのだけども……
と、なかなか僕は元衛兵に対してかなり失礼なことを考えていたが、もちろんそんなことを元衛兵が分かるわけはなく変わらずギルド職員に怒鳴りつける。
「とにかくこれで俺が冒険者としてCランク以上の実力を持っていることが分かっただろう!早く俺に認定証とギルドカードを……」
「お断りします。Cランク以上の飛び級には高位ランク冒険者の推薦が必要です」
「なっ!」
だがその返答は当たり前のことながら今までと変わることない拒否だった。
「……殺す!」
そしてその受付の女性の変わることのない態度に元衛兵はとうとうその手に持った剣を振り上げた。
「くそ!この剣がみえねえのか!早く俺に認定証を……」
そして受付の女性にその状態のまま、脅しとも取れる言葉を吐く。
「良いのですか?」
だがその脅しに対する女性の反応は酷く淡白なものだった。
今までと全く変わらない、事務的な言葉。
「っ!」
そして男はその態度にかなり整っている顔を相まって威圧感を感じて思わず躊躇する。
「うぉぉおお!」
だがもちろんこの状態から冗談でした、で済ませることなど出来るわけがなく男はそのまま剣を振り下ろして……
「………えっ?」
「忠告致しましたからね」
……次の瞬間鞘だけになった自身の剣の姿にそう呆然とした声を漏らした。
「はぁ……」
そしてその元衛兵の呆然とした顔に僕は思わずそうため息を漏らした。
元衛兵、それは確かにある程度戦えることを示している。
そして衛兵の中で一番腕が立ったその言葉は決して嘘ではないだろう。
それだけの腕を有していることは今までの男の動きから僕は悟っていた。
「これだけ大口叩いてその程度なの?」
「こいつ、ただのギルド職員じゃ……」
ーーー けれども、それは戦乱が無くなり腐りきった王国の衛兵の中での一番でしかないのだ。
そしてそれに対して冒険者は違う。
常に魔獣と呼ばれる怪物と命がけの戦いを繰り広げ、そして平和な世の中の中牙を磨いてきた人間。
それが冒険者なのだ。
そしてそんな冒険者を相手取る職業であるギルド職員になれるのは最低でも現役の時にCランク以上の冒険者になった者たちだけだ。
そしてそんな相手に衛兵の中でどれだけ強かろうが、元衛兵如きが勝てる訳などあるはずないのだ。
「ま、待ってくれ!お、おれが悪かった!」
そのことを剣を折られるという超常の技量を見たことでようやく男は悟る。
「これはあくまで正当防衛なので」
「ぎゃぁぁああああ!」
……けれどもその時すでに手遅れだった。
「すいません、でした……」
その数分後、瀕死の状態となった男はまるでゴミを捨てるかのようにギルドの外に捨てらることとなった……




