第19話 冒険者の砦
「もうそろそろか」
祝会をした次の日、僕は整備された通路を歩いていた。
僕が向かう目的地はこの街よりも大きなあるギルドだ。
そしてそれがあるのはより強力な魔獣の群生地が存在する場所に建てられたある場所だった。
魔獣から取ることのできる魔石、それはより強力な魔獣から取れるものの方が効果は高く、金になる。
なのでより高位の冒険者たちは魔獣の群生地を見つけるとどんどんと奥へと進んで行き、辺境街よりももっと深い場所に砦のようなものを立てる。
それは最初街とも呼べないようなものだった。
けれどもより大きな魔石の利益を上げるためにギルドがその場所により大きな支部を立てるようになってからは状況が変わった。
ギルドが進出したことにより、見回りという中級冒険者用の依頼が出たことによってその砦の危険度が急激に下がったのだ。
その結果、命を賭け死人が日々何人も出る代わりに実入りのいい冒険者相手に儲けようとどんどん商人達がその砦に入ってきたのだ。
もちろん幾ら魔獣による被害が減ったといえ、危険であることは変わらず殆ど民間人がその砦に住み着くことはない。
けれどもその砦は高位の冒険者達にとって、丁度いい稼ぎ場となったのだ。
その結果その砦には冒険者達と、危険を顧みずに冒険者相手に儲けようとする商人達が雪崩れ込み、今は冒険者の砦と呼ばれている。
「本当に近いな……」
そしてそれこそが僕が今向かっているギルドがある場所だった。
推薦と呼ばれるその仕組み、それは正直かなり制限がある。
元々推薦のシステムは最初、勇者を冒険者として登録する際に作られたものなのだ。
しかし今から200年程度前、勇者を召喚し魔王を倒してから、今まで推薦は高位ランクの冒険者にいち早く上がろうと企む貴族達の家督を継げない次男や三男などの不正が横行したらしい。
けれどももちろん、そんな甘い考えで高位ランクになったところで待っているのは死でしかなかった。
そして一度ギルドの名声は、高位の冒険者のレベルが低すぎるということで地に堕ちたらしい。
そこから流石に焦った当時のギルド長が推薦に対してさまざまな制限を受けたらしい。
推薦した高位冒険者へのペナルティもその一つだ。
そしてその中の一つに、推薦でランクを飛び級しても一ヶ月程度は仮の立場で、一ヶ月間その実力を示さなければならないというものがある。
その条件を果たすためには辺境街にあったギルドよりもより大きなギルドでCランク冒険者になる必要があったのだ。
その目的を果たすために僕は今まで過ごしていたシュライトさんの家を後にし、この冒険者の砦まで来たのだ。
「おぉ!ここが冒険者の砦!」
そして、ようやくその目的地に着いた僕は、その活気のある砦に思わずそう歓声をあげた。
王都では人気のない場所を通って逃げ出し、辺境街では殆ど鍛錬に費やしていたため活気のある場所に来たのはこれが初めてだった。
前の世界をおもいだすその雰囲気に僕が思わずはしゃいだ声をあげたのも致し方がないことだろう。
内心そんな言い訳をしながら、僕は興奮を隠せない様子で走り出した……
◇◆◇
砦の中に入ること、それは想像以上に簡単なことだった。
何せここは元々冒険者というあまり素性の確かなではないものを受け入れるための場所なのだ。
確かに一部のAランク冒険者は、その超越した実力と華々しい活躍で英雄視されていて、冒険者に憧れる子供は多い。
けれども実際の所、低位の冒険者になればなるほど人柄的にもかなり問題のある人間が多いらしい。
そして冒険者の中で高位ランクになれるのはほんの一握りしかいない。
つまり、そんな冒険様達を迎え入れるようなこの場所には砦の中に入れる人間の審査など必要ではないのだ。
……まぁ、もちろんそのせいで中は活気はあるとはいえかなり治安が悪い。
流石に幾ら魔獣の群生地に近いとはいえ、迷宮都市ではないこの場所にはシュライトさん並みの実力を持っている人間などいないだろうが。
そしてそう思いながら僕が目的地であるギルドの中に足を踏みいれようとした時だった。
「いいから、おれのいうこときけと言っているだろうが!」
ギルドに入った僕の目に入ってたのは周りの様子もきにすることなく受付の人間に叫ぶ1人の男だった。
「……いきなり面倒ごとか」
そしてその姿に僕は思わずそう漏らしていた……




