第10話 シュライトさんの正体
当初シュライトさんの突然の言葉に僕は呆然としていたが……
「お、お願いします!」
だが、能力を使った状態の僕を圧倒する能力を持ったシュライトに弟子入りする機会だと気づいた瞬間、僕はそう声を上げていた。
確かに僕は超越した能力を得たかもしれないが、だがそれでもこの世界で生き抜けるかなんて自信はない。
だが、シュライトさんに弟子入りしてその能力を少しでも吸収できれば生還率はぐんと上がる。
「いい返事だ!」
そしてその僕の言葉にシュライトさんは心底楽しそうにそう笑った。
僕の中にもそのシュライトさんの様子にやる気が湧き上がってきて……
「まぁ、俺だって勇者を鍛える一族の人間だ!翔、お前のその身体に我が技量を全て叩き込んでやる!」
「……え?」
「おお、そういえば言ってなかったな!」
……シュライトさんの衝撃の事実に言葉を失うことになった。
◇◆◇
改めて聞いてみたところ、何とシュライトさんは魔王という天災級の存在が出現した時、勇者を鍛えたその末裔らしい。
当初そのことを聞いた僕はどんな偶然があれば偶然きたところでそんな存在が街にいて、さらに遭遇するのかと言葉を失った。
だが、僕とシュライトさんの遭遇は決して偶然などではなかった。
というのも普通に考えて、勇者が鍛えるとしたら王都に近い場所に決まっている。
そして一番王都に近い、レベルアップの為の魔獣が存在する辺境街はここだ。
つまりこの場所にシュライトさんが居たのは偶然でも何もない。
当たり前のことだ。
そしてアンラッキースケベだった僕とシュライトさんの初遭遇だが、それも偶然でもなかった。
というのも実は僕は目立った服を着て凄い速度で走ってくる変人として、街に入る前から噂になって居たらしい。
……非常に不本意だ。
まぁ、今はそのことを置いておくが、それを聞いたシュライトさんは僕を勇者だと勘違いしたらしい。
自分の元へと会いに来てくれたのだと。
それは決して勇者が自分に弟子入りしに来たのだと思っていたわけではないらしいが。
というのも、今シュライトさんと国王は敵対関係にあるらしい。
その理由は魔族を勇者を使って攻めようとする国王にシュライトさんが反対したことが理由らしい。
元々勇者というのは竜や魔王と呼ばれる天災級の存在が現れた時、さまざまな存在の許可のもと呼び出す存在だったらしい。
けれども国王は侵略のためだけに勇者を呼び出そうとして、シュライトさんと対立したらしい。
「何度も軍が派遣されたからなぁ!」
……そしてシュライトさんはその時のことをそう言って笑って居た。化け物だ。
とにかくそうしてシュライトさんと国王は対立していて、そしてだからこそ勇者らしき人間がこの場所に来たと聞いてシュライトさんはこう思ったそうだ。
ー 勇者が自分の考えに賛同してこの場所に来てくれたと。
そして僕がどろどろになったのをみて、勇者と親密な関係を結ぶため裸の付き合いで心を割って話そうと決意し、川で全裸で待って居たらしい……
……この人本当に何してるんだろう。
だからこそ、突然襲いかかられた時つい感情的になってしまったらしい。
その結果、実は僕はもう少しで死ぬ所まで行っていたらしい……
ポーションと呼ばれる超回復薬が無ければ僕は死んでいたらしいのだ。
……いや、まじ何してくれてんですか!
と、僕は今更ながらシュライトさんに掴みかかりたい衝動に駆られかけたが、だが僕はその感情を押さえ込んだ。
確かに少し……いやかなりシュライトさんは変わっている。
だがかなりいい人で、そして実力者であるのは確かだった。
そう、僕がこの世界に無事生きて行けるだけの力を与えられるくらい。
「改めてお願いします。僕に戦い方を教えてください!この世界で生きて行く最低限でいいので!」
だから僕はそう改めてシュライトさんに頭を下げた。
「……あぁ、任せろ!」
頼もしいシュライトさんの返事、それに僕は安堵を抱きながら顔を上げて……
「では、今から走りに行くか。なぁに。光の剣の能力を持っていれば、疲労骨折ぐらい一晩で治る!」
「え、えぇ!?」
……自分の早計を後悔することになった。
だめだ……僕はこの世界で生きて行く実力を持つ前に死んでいるかもしれない……




