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妹を呪ったと森に追放されたいばら魔女は、なぜか王太子に執着されています  作者: 深水えいな
第五章 魔女の決闘

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53.魔法の解き方

 一方、シルムは意思のない人形のようにひたすら黒いいばらを攻撃していた。だが、傷一つ付く気配はない。


 いばらに囚われたリリアは、顔を真っ赤にして怒る。


「もうっ、使えないわね! そうだわ、レゼフィーヌを殺せばこのいばらも消えるかもしれないわ。シルム殿下、レゼフィーヌよ。レゼお姉様を殺して!」


 レゼフィーヌを指さすリリア。


「――ワカッタ」


 シルムは意思のない瞳を真っ赤に光らせ剣をレゼフィーヌに向かってくる。


「全く、愚かね」


 レゼフィーヌは静かに腕を振った。黒いいばらの影がシルムの腕に巻きつく。


 ――カラン。


 乾いた音がして、シルムの剣が地面に落ちた。


 これでシルムの動きは封じた。後は彼の意識を取り戻すだけ。


「無駄よ。シルム殿下には『暗黒の魔導書』を使って魔法をかけたの。私が今まで買った中で一番高価な魔道具よ。あなた程度の魔力じゃ打ち破れないわ」


 リリアは高笑いをする。


「このいばらを解いてくれればシルム殿下を元に戻してあげても良くてよ。どう?」


 レゼフィーヌは無感情な瞳でリリアを見つめた。


 何を馬鹿なことを。リリアの拘束を解いたところでシルムを助けてくれるとは限らない。また新たな魔道具で攻撃してくるだけだろう。


 しかしいばらの魔法は強力だが魔力消費が激しい。レゼフィーヌにはシルムにかけられた強力な呪いを解くだけの力は残っていなかった。


 レゼフィーヌは観念したように目を伏せ、囁いた。


「そうね。リリアの言う通り、私の魔力だけではシルムの呪いを解くことはできないでしょうね」


「でしょう? だからおとなしく……」


 前のめりになるリリアを、レゼフィーヌは無視するようにシルムのほうへと歩いて行った。


「私の力だけではね」


 レゼフィーヌは迷いのない足取りでシルムへ前へと進み、ピタリと足を止めた。


「……何を」


 レゼフィーヌはリリアを横目で見てクスリと笑うとぐいとシルムの襟元を引っ張った。


 自分の力では足りないのなら、シルムの力も借りればいい。そのためには強烈な衝撃で彼の魂を呼び起こす必要がある。


「目を覚ましなさい、シルム!」


 レゼフィーヌは叫ぶと、シルムに顔を近づけ、小さくその唇に口づけした。




  「目を覚ましなさい、シルム!」




 レゼフィーヌは叫ぶと、シルムの両頬をぐいと掴むと、顔を近づけて小さく口づけした。


 柔らかく、ほんのわずか触れるか触れないか程度の小さなキス。だけれども魔女の心からのキスは、王子の心を取り戻すには十分だった。


 シルムの目から毒々しい赤の光が抜けていく。焦点の合っていなかった瞳に力が戻り、いつもの柔らかなグリーンの光が差し込む。


「あれ? 僕はこんなところで何を」


 ぼんやりとレゼフィーヌに掴まれた頬を抑えるシルム。


「ようやく目覚めたわね」


 レゼフィーヌは少し頬を赤く染め、何事もなかったかのように腕を組んだ。


「今からその黒いものを祓うわよ」


 レゼフィーヌがシルムの額に青い魔法陣を書く。


「――散」


 唱えるや否や、シルムの体から黒い瘴気が抜け、リリアの元へと戻って行く。


「なるほど、払った瘴気は呪いをかけた本人に戻っていくのね」


 レゼフィーヌは小さく呟いた。


 闇魔法は本人の能力に不釣り合いな強力な力を扱える。その代わり使う本人は何かリスクを負う必要がある。その代償が今まさにリリアに降りかかっていた。


「きゃああああああ」


 リリアの体へ次々と黒い瘴気が入っていく。


 リリアの瞳が赤く染まり、体がガクガクと操り人形のように揺れる。


 さて、これはこれで面倒だ。どうしたものやら。

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