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妹を呪ったと森に追放されたいばら魔女は、なぜか王太子に執着されています  作者: 深水えいな
第五章 魔女の決闘

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52.魔女の決闘

(――この気配は、まずいわね)


 魔導書からにじみ出る黒い気配。


 危険を悟ったレゼフィーヌは、木の裏側の何もない空間に向かって呼びかけた。


「ポーラ」


「はい、お姉様」


 レゼフィーヌの声に呼応し、何もない空間から小さな薔薇の鉢を持ったポーラが現れる。


 ポーラは、カメレオンのローブで今まで身を隠し、レゼフィーヌが呼びかけるのを待っていたのだ。


「ポーラ、あなた何で!」


 突如現れたポーラの姿に、リリアは驚き瞳を見開く。


 その一瞬の隙をついて、レゼフィーヌは小さく呪文を唱えた。


 ポーラが手にした薔薇から、真っ黒ないばらの影が伸びてくる。


「これは……いばらの魔法⁉」


 リリアは必死に身をよじり、触手のようにうねうねと迫るいばらの影から逃れようとした。


 しかし次々と伸びてくる無数のいばらにリリアは捕らえられ身動きが取れないまま地面に転がった。


 その拍子に、黒い革表紙の魔法書がリリアの手から離れ地面に転がる。


「しまった……!」


 リリアがギリリと歯を食いしばってポーラを睨む。


「ポーラ、あなた同じ家でずっと一緒に育った実の姉の私よりその女を取るの? ほとんど会ったこともなかったくせに」


 ポーラは冷たくリリアを見下ろした。


「ええ。リリアお姉さまは実の姉だし、同じ家でずっと一緒に過ごした。だけどお姉様が私のために何かしてくれることが今まであったかしら。お姉様が私にくれたのは、呪いと怒鳴り声と悪口だけ」


「あんた……!」


 目を血走らせ、怒りに身を震わせるリリア。


 レゼフィーヌがそれを冷静な目で見ていると、不意にリリアの表情が変わった。


 嫌な予感がし、レゼフィーヌが振り向くと、そこには血に濡れた剣を構えたシルムが立っていた。


「レゼフィーヌお姉様!」


 ポーラが叫ぶ。


 レゼフィーヌはとっさに横に転がり、シルムの攻撃を避けた。


 (どういうこと? シルムはアレクが足止めしているはずじゃ――)


 レゼフィーヌがアレクがいた場所に目をやると、そこには腹から血を流し倒れているアレクがいた。


「アレク!」


「よくやったわ、シルム殿下。このいばらの魔法も切ってちょうだい!」


 リリアがシルムに命令する


「ポーラ、ローブで身を隠して」


「は、はい」


 レゼフィーヌはポーラに指示を送ると、シルムがリリアのいばらを切っている隙にアレクの元へと駆け寄った。


「アレク、大丈夫⁉」


 アレクは血の流れ出る腹部を抑え、うつろな瞳でうなずいた。


「はい。致命傷は避けました」


「そう、良かった。さすが王太子の騎士団長ね」


 レゼフィーヌがほっと息を吐くと、アレクは首を横に振った。


「いえ、私は剣の腕では、産まれた時から王宮剣術を叩きこまれてきたシルム殿下に適いません。私の命が助かったのは、シルム殿下が手加減してくださったからです」


「手加減? あの状態のシルムが?」


 レゼフィーヌは魔法でアレクの傷を治しながら片眉を上げた。


 アレクはうなずいた。


「はい。私の体を剣で射貫こうとしたシルム殿下の瞳の中に、一瞬迷いが見えました。恐らくですが、シルム殿下はまだ完全にはあの体を乗っ取られてはいません。シルム殿下の意識はあの女に乗っ取られまいと今必死で戦っているところなのだと思います。」


「なるほど。ありがとう。良いことを聞いたわ」


 レゼフィーヌはアレクの傷を治癒し終わると、まっすぐにシルムたちを見据えた。


 勝機はまだ、あるかもしれない……!


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