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妹を呪ったと森に追放されたいばら魔女は、なぜか王太子に執着されています  作者: 深水えいな
第四章 王都への旅立ち

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45.ポーラとレゼフィーヌ

「今日は私をこの部屋に入れてくれてありがとう。てっきり拒絶されるかと思ったから」


 レゼフィーヌがにこやかに挨拶をすると、ポーラは少し複雑そうな顔でうつむいた。


「……お母様が、レゼフィーヌお姉さまが私に呪いをかけたって小さいころからずっと言ってたから、初めはすごく怖かった。でも、お姉様がここについて馬車から降りてきた瞬間、お姉様からすごく綺麗で良いオーラを感じて……それって本当なのかなって思って。一度会ってみるべきだって思ったの」


「そう。ありがとう。でも良かった。想像していたよりずっと元気そうだわ」


 レゼフィーヌが微笑む。


 実際、肌が青白く痩せているため不健康そうには見えるものの、ポーラは寝たきりという感じではない。


 読書をしたり絵を描いたりと部屋の中で思い思いに過ごせる程度には元気に見えた。


 ポーラは小さくうなずいて答えた。


「レゼフィーヌお姉様がこのお屋敷に来たあたりから少しずつ良くなってきたの。その前は熱も高くて喘息の咳もあって辛かったんだけど……」


「そう。それはきっと、妖精の薔薇に肥料をあげたり日の当たる場所に移したりして元気をあげたおかげね」


「妖精って、この子ですか?」


 ポーラがピンク色に光る小さな光の玉を指さす。


 その姿を見て、レゼフィーヌは驚いた。妖精が見えるのは、魔力がある者だけだからだ。


 でもよく考えたら侯爵夫人は魔女だったというし、その魔力がポーラにも遺伝しているのかもしれない。


 レゼフィーヌはうなずいた。


「ええそうよ、それは私があなたの誕生パーティーで送ったものなの。あなた、妖精が見えるの?」


「はい。小さいころから私を守ってくれている暖かい力をずっと感じていました」


 ポーラは薔薇の妖精をぎゅっと抱きしめた。


「ええ、その子はあなたを守ってくれているわ。でも、あなたに悪さをするものもあなたに憑いている。それについては気づいていたかしら?」


 ポーラは無言でうなずいた。


「私、時々とても怖い夢を見るの。真っ黒なモヤみたいなものに追いかけられる夢。そのたびに高い熱が上がって……私、とても苦しかったの」


「そう、それは大変だったわね」


 レゼフィーヌはポーラの細い髪を撫でた。


「でも大丈夫、私が怖いものを取り払ってあげるから」


 レゼフィーヌの細く長い指がポーラの額に触れる。


 瞬間、ポーラの額に青い魔法陣が浮かび上がり、ポーラの体が青白い光に包まれた。


「……すごく胸が軽くなったわ!」


 ポーラは少しびっくりしたような顔をした後、自分の胸に手を当てると、噛みしめるように言った。


「すごい。今まで灰色だった風景に急に色が付いたみたい。世界ってこんなに綺麗だったのね」


「ええ。悪いものを取り除いたから、大丈夫よ」


 レゼフィーヌはポーラをぎゅっと抱きしめた。


 コンコンコン。


 その時、部屋をノックする音がポーラの部屋に響いた。


 コンコンコン。


 部屋のドアがノックされ、侯爵夫人の声がした。


「ポーラ、今の光は何? 部屋に誰かいるの?」


 (まずい。お継母様だわ)


 レゼフィーヌは慌ててカメレオンのローブを被った。


 それとほぼ同時に部屋のドアが開く。


「あら、あなただけ? 今、何か物音がしなかった?」


 部屋の中をじっと見まわし険しい顔をする侯爵夫人。


 ポーラはにっこり笑ってベッドの上の魔法書を指さした。


「いえ、何でもないわ。ちょっと魔法の練習をしてたら失敗しただけ」


 侯爵夫人はホッと眉を下げてポーラの手から魔法書を取り上げた。


「もう、あなたは侯爵令嬢なのだから魔法の勉強なんてしなくてもいいっていつも言ってるでしょ?」


「でも……」


「それよりもあなたはダンスとかヴァイオリンとか語学を頑張らないと、社交界に出た時に困るわ。あなたには立派なお姫様になってここよりも格式の高い家に嫁いでもらうんだから!」


 不満そうな顔のポーラをよそに、うっとりと宙を見上げる侯爵夫人。


「それじゃ、良い子にして寝てるのよ。晩ご飯はメイドに運ばせるから」


 ひらひらと手を振って、侯爵夫人は去って行った。


 レゼフィーヌはほっと息を吐くと、ローブを脱いだ。


「ふう、助かったわ」


 ポーラがクスリと笑う。


「私もヒヤヒヤした」


 ポーラと共に顔を見合わせて笑うと、レゼフィーヌは再びローブを身にまとった。


「それじゃあ、私はこれで失礼するわね」


「うん、ありがとう、お姉様」


 笑顔で手を振るポーラに手を振り返すと、レゼフィーヌは再びカメレオンのローブを身にまとい、部屋を出た。


 無事に瘴気は払えたものの、ポーラの部屋から出てきたところを誰かに見られては大変だ。


 音をたてないように慎重に廊下を歩いていると、ふと廊下の先に侯爵夫人の姿が見えた。


 ――まずい。


 レゼフィーヌは、慌てて廊下の端に飾っていた兵士の像の横に身を隠した。


 ローブの魔法で姿は見えないはずだが、侯爵夫人は魔女だ。


 看破や破魔といったローブの効果を無効にする魔法を使ってくる可能性もある。


 レゼフィーヌが息をひそめていると、侯爵夫人はキョロキョロと辺りを見回し、奥の部屋に入った。


 その様子を見て、レゼフィーヌは首を傾げる。


 あの部屋は、確か侯爵家お抱え魔導士ゼンの部屋だ。


 なぜ侯爵夫人がゼンの部屋に?


 

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