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妹を呪ったと森に追放されたいばら魔女は、なぜか王太子に執着されています  作者: 深水えいな
第四章 王都への旅立ち

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44.透明ローブ

 城に帰ったレゼフィーヌは、魔女の店で買った――というより無理矢理買わされた玉虫色のローブをさっそく試着してみることにした。


「思ったよりもよさそうだわ」


 鏡の前に立ち、ローブを体に当ててみるレゼフィーヌは、上機嫌にくるりと一回転をした。


「なんか……思っていたより派手だね?」


 シルムはというと、レゼフィーヌが手に持っている玉虫色に輝く緑のローブを見て目を丸くした。


  魔女のローブは黒か紫というのが昔からのイメージであるし、確かに普通に着るには派手すぎる色とデザインだ。


「うふふ、そうでしょ。でも見ていて」


 レゼフィーヌはローブを羽織り、くるりと一回転した。


 すると瞬く間にレゼフィーヌの姿が消え、透明になる。


「えっ」


 シルムが驚いていると、レゼフィーヌがフードを取った。たちどころに彼女の顔が現れる。


「これは『カメレオンのローブ』って言うらしいわ」


 誇らしげに言うレゼフィーヌであったが、首から下は透明なままなので、まるで生首が宙に浮いて喋っているようだった。


「す、すごいね」


 シルムがあっけにとられていると、レゼフィーヌはクスリと笑った。


「これ、ポーラの部屋にこっそりと行くのに使えそうじゃない?」


「まあ、確かに他の人に見つからずに部屋の出入りはできそうだけど……でも突然訪ねていってポーラがびっくりしないかい?」


 シルムの問いに、レゼフィーヌは透明マントをたたみながら答えた。


「それなら大丈夫よ。実はハンナに頼んでポーラにこっそり手紙を送っていたの。直接会って話がしたいって」


 初めは返事が来なかったからダメかと思っていたレゼフィーヌであったが、それがつい先ほど返事が来たのだという。


 レゼフィーヌがシルムに白い便箋に入った手紙を見せる。


 そこには『レゼフィーヌお姉様にぜひお会いしたいです』という返事が書かれていた。


「それで、これからポーラに会いに行くことにしたの」


 レゼフィーヌは再びローブを身に着けた。その姿が一瞬だけ消えては現れる。


「これからかい?」


「ええ。今の時間ならだれも面会に来ないそうよ」


 だが前みたいに侯爵夫人やリリアの邪魔が入っては面倒なので、いざという時のためにこのローブで身を隠そうというわけだ。


 レゼフィーヌは眉を寄せると心配そうにつぶやいた。


「こんなに長く部屋から出られないだなんて、ポーラが心配だわ。早くポーラの『呪い』をなんとかしないと」


 レゼフィーヌはフードをすっぽりと被った。


 レゼフィーヌの顔が、きれいさっぱり消えて無くなる。


「それじゃ、行ってくるわね」


 レゼフィーヌの声とともに、キィと小さい音がしてドアが開く。


 知らない人から見たら、まるで風が吹いて自然とドアが開いたかのように見えただろう。


「行ってらっしゃい」


 シルムはレゼフィーヌのいるであろう方向に声をかけた。


 だが、その声が本当にレゼフィーヌに聞こえていたかどうかはまるで分らなかった。


 ***


 レゼフィーヌは、カメレオンローブを身にまとったまま、音を出さないように慎重に廊下を歩いた。


 お目当てのポーラの部屋の前には誰もいない。


 レゼフィーヌは少し緊張で手がすくんだものの、意を決してドアをノックし、部屋に入った。


 部屋の中にいたのは、ベッドに横たわり本を読む金髪の少女だった。


 細い髪を三つ編みにし、頬にはそばかすが浮いている。


 一見、おとなしく気弱そうではあるが、その青い瞳には、強い意志が宿っているように思えた。


「こんにちは」


 レゼフィーヌが部屋のドアを開けローブを取ると、ポーラはびっくりしたように目を見開き、身をよじらせた。


「……も、もしかしてレゼフィーヌお姉様?」


 あまりにもびっくりして声も出なかったのだろう。


 ようやく吐き出した言葉は小さくかすれていた。


 レゼフィーヌはポーラを安心させるよう、ゆっくりと穏やかな口調で話しかけた。


「ええ。私の手紙に返事をしてくれてありがとう。お継母様やリリアに見つからないように、この魔法のローブで身を隠して来たの。びっくりさせてごめんなさいね」


「いえ……ちょっとびっくりしちゃって。こちらこそごめんなさい」


 レゼフィーヌは七年ぶりに会う妹をじっと見つめた。


 七歳になったのポーラは金髪に青い瞳のせいか、侯爵夫人やリリアよりもかえって異母姉妹であるレゼフィーヌに似ているような気がした。


 アリシア侯爵も侯爵夫人も金髪なのでポーラが金髪碧眼でもおかしくはないが……。


 見た目だけじゃない。心の奥底の魂の部分が似ている部分があるのかもしれない。


 レゼフィーヌは直感でそう思った。



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