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妹を呪ったと森に追放されたいばら魔女は、なぜか王太子に執着されています  作者: 深水えいな
第四章 王都への旅立ち

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39. 枯れた薔薇

「……よくもまあおめおめとこの城に帰ってこれましたこと」


 リリアは吐き捨てるようにつぶやいた。


 アビゲイルも、レゼフィーヌを見るなり汚いものでも見るかのように眉をしかめる。


「本当に。シルム殿下に見初められて随分と舞い上がっているようですけれど、大方シルム殿下に怪しげな黒魔術でもかけたんでしょ。私の可愛いポーラに呪いをかけたみたいにね!」


 そんな二人をたしなめたのは父親であるアリシア侯爵だった。


「まあまあ、その件についてはゼンも呪いではないと言っているのだから」


 そういえば――と、レゼフィーヌは考える。


 (侯爵家お抱え魔導士のゼンが、あの呪いを見抜けないというのも変な話だわ)


 もしかしてゼンがあの呪いをかけているのだろうか。


 それとも誰かに脅されて「呪いではない」と言い張っているのだろうか。いずれにせよ、ゼンのことは探ってみる必要があるかもしれない。


 レゼフィーヌが思考を巡らせていると、侯爵がシルムに向かってこんなことを言い出した。


「そうだ、レゼフィーヌの帰還を祝して、この城でパーティーを開くのはどうだろう。来週ならば予定も空いているだろう? それまでレゼフィーヌとシルム殿下にもこちらに滞在していただくことにして……なあ、アビゲイル」


「私は別にかまいませんが……」


 侯爵夫人は眉にしわを寄せ、ナプキンで口元をぬぐった。


「そうか。それならば、さっそく親族や貴族の皆にもその旨を伝えておこう。もちろん、国王陛下にもお越しいただかなくては」


 侯爵はさっそく執事にあれこれ指示を出す。


 恐らく、周りに王室とのつながりを示すいい機会だと侯爵は有頂天なのだろう。


 どうやらアビゲイルとリリアが不機嫌になったことには気づかなかったようだ。


 (――相変わらずね、お父様は)


 レゼフィーヌは人知れずため息をついた。


 思えば子供の頃も、侯爵はレゼフィーヌがいくら虐げられようが無関心だった。侯爵は、自分の金や権力以外のことには、心底興味が無いのだろう。


 まあいい。これでしばらくここに滞在する理由ができた。


 その間にポーラの様子を確認して、呪いをかけた犯人を見つけよう。


 レゼフィーヌは晩餐会が終わるとさっそくポーラの部屋へと向かうことにした。


 レゼフィーヌは廊下を歩いていたハンナを見つけると、声をかけた。


「ハンナ、ポーラに挨拶したいのだけれどポーラの部屋はどこ?」


「それでしたらこちらです。ただ――」


「ただ?」


 レゼフィーヌが尋ねると、ハンナは浮かない顔をする。


「ポーラ姫様は体調を崩しておられるので誰にもお会いにならないかもしれません」


 体調を崩している?


 レゼフィーヌの胸に嫌な予感がよぎる。


「それでは、とりあえず顔だけでも見れないか尋ねてみるわ。もう七年も会えていないんですもの」


「それでしたら、一応場所の案内はいたしますが……」


 レゼフィーヌはハンナに案内されてポーラの部屋へと向かった。


 だがレゼフィーヌがポーラの部屋をノックしようとした瞬間、花瓶を手にした侯爵夫人が悲鳴を上げた。


「あなた、ここで何をしているの⁉︎」


 (厄介な人に見つかったわね)


 レゼフィーヌはそう思いつつも穏やかな笑みを作った。


「お継母様。ポーラの様子はどうですか? 晩餐会にも参加しなかったし、せっかくきたのだから挨拶でもと思いまして」


「いいえ、結構よ。ポーラは誰にも会わないわ」


 ピシャリとはねつける侯爵夫人。


「私まだポーラ姫様に挨拶できていないので顔だけでも……」


「しつこいわね。私の可愛いポーラにまた呪いでもかけるつもりなんでしょう⁉︎」


「いえ、そんなつもりじゃ――」


「黙らっしゃい! この穢らわしい魔女が!」


 侯爵夫人はヒステリックに叫ぶと、花瓶に入っていた薔薇の花をレゼフィーヌに投げつけた。


「シルム殿下や国王陛下は騙せても、この私は騙せないわ! 早く結婚でもなんでもしてこの城を出ていってちょうだい! 私の前に顔を見せないで」


 レゼフィーヌは濡れた顔を拭き、その場を立ち去った。


 この分ではそう簡単にはポーラには会うことはできなさそうだ。


レゼフィーヌはびしょびしょになってしまったドレスを見た。


  せっかく用意してもらった服なのに、びしょ濡れになってしまった。


 それにせっかくの薔薇も勿体ない。


 レゼフィーヌは床に落ちた薔薇を拾い上げた。


 床に落ちていたピンク色の薔薇は、色つやが悪く小ぶりでどこか元気がなさそうに見える。


 なにもこんなに状態の悪い薔薇をお見舞いの花に使わなくてもいいのに。


 レゼフィーヌは、そこまで考えて気が付いた。


 もしかして、あの時ポーラにあげた精霊の薔薇も具合が悪くなっているのかもしれない。だとすると――。


 レゼフィーヌは螺旋階段の踊り場へと急ぎ、窓辺に置いてある鉢植えの薔薇を見た。


 いつもは香り高いはずの薔薇の花弁が寂しげに萎れ、かつて鮮やかだった葉も色褪せている。


「いけない」


 レゼフィーヌは薔薇の鉢を持って外に出ると、薔薇を大きな鉢に移し替え、肥料を与え、日当たりの良い場所に移した。


「これでよし……と」


 これでポーラに与えた薔薇の精霊も元気になるといいけれど……。



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