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妹を呪ったと森に追放されたいばら魔女は、なぜか王太子に執着されています  作者: 深水えいな
第四章 王都への旅立ち

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37.侯爵家への帰還

 そして晩餐会の日。


 軽やかな蹄の音が響き渡り、王家の紋様を付けた馬車が侯爵家の城に到着した。


 馬車から降りてくるシルムとレゼフィーヌを笑顔で出迎えてくれたのはレゼフィーヌの父親、アリシア侯爵だった。


「よくぞ戻ってきたな。お前が居なくなって大変だったぞ」


 (いや、追放したのはあなたでしょうが)


 レゼフィーヌはそう言いたいのをぐっとこらえて笑顔を作った。


 七年も会っていなかったからだろうか。アリシア侯爵の頭には白髪がぐっと増えている。頬もげっそりとやつれて顔色も悪い。体調でも悪いのだろうか。


「お久しぶりですお父様」


 てっきりなぜ城に戻ってきたのかと怒られるものかと思っていた。


 けれどアリシア侯爵はレゼフィーヌが思っていたよりも上機嫌に見えた。


 恐らく侯爵にとっては、婚約するのがレゼフィーヌだろうとリリアだろうと王家とのつながりができることには違いないので喜ばしいことなのだろう。


 となると、レゼフィーヌとシルムとの婚約に反対しているのは侯爵夫人とリリアの二人と言うことになる。


 レゼフィーヌは辺りを見まわした。


 二人が城に来ることはあらかじめ伝えているはずなのに、侯爵夫人とリリアの姿はどこにもなかった。外出中なのだろうか。


「それでは、疲れただろうから今日はゆっくり休みなさい。部屋にはハンナに案内してもらうといい」


 アリシア侯爵がくるりと踵を返す。


 その瞬間、レゼフィーヌは思わず「あっ」と声を上げた。


 アリシア侯爵の背中に、見覚えのある黒いモヤのようなものが見えたからだ。


「どうした?」


 アリシア侯爵が不思議そうに振り返る。


「いえ。お父様、体調がすぐれないようですので、疲労回復の魔法を授けてあげますわ」


 レゼフィーヌはアリシア侯爵の背中に小さく魔法陣を書くと、呪文(スペル)を唱えた。


「――散」


 オレンジ色に光と共に、アリシア侯爵の背中に憑いていた黒い瘴気が消えた。


 (良かった。そんなに強い魔法じゃなかったみたい)


「おお、なんだか肩が軽くなったようだ。ありがとう」


 侯爵が肩をぐるぐると動かす。


「いえ、エマ婦人の家でたくさん魔法を教えていただけましたので」


「おおそうか。その話もあとでじっくり聞かせてもらうよ」


「ええ、ではまた後ほど」


 レゼフィーヌは去って行く父親の後ろ姿を見送った。


 ***


 侯爵が去ったのを見届けると、そばに控えていたメイドのハンナが口を開いた。


「お嬢様、久しぶりにございます」


「久しぶりね、ハンナ」


 レゼフィーヌは見知ったメイドの姿にほっと一息ついた。


 ハンナは涙ぐみながら頭を下げた。


「まあ、本当に立派なご令嬢に成長なされて、感激にございます。今、お部屋にご案内しますね」


 レゼフィーヌたちは、ハンナに案内されて来客用の部屋に向かった。


「それにしても、ずいぶん見慣れない使用人が多いわね」


 レゼフィーヌは辺りを見回しポツリと言った。


 レゼフィーヌが子供のころにいた使用人がハンナ以外はほとんどいない。


 ハンナは苦笑する。


「奥様とリリアお嬢様が気に入らない使用人をどんどん首にしていくので……。こちらとしてもベテランや中堅の使用人をあんなに首にされては大変なんですけれど」


「ええ、大丈夫よ」


 どうやら城に残ったハンナも相当苦労しているらしい。


「レゼ様はこちらの部屋に、シルム様はこちらへどうぞ」


 ハンナが客室の鍵を開ける。


「隣同士の部屋なのね。近いほうが色々話もできるし助かるわ」


 私とシルムが目線を合わせてうなずき合うと、ハンナは心なしか頬を染めて笑った。


「そうですわよね。お二人の話、聞いております。早くお二人の婚約が認められてゼフィーヌお嬢様が幸せになられると良いですね」


「ありがとう」


「それではごゆっくり」


 オホホホホと笑いながらドアを閉めるハンナ。


 どうやらレゼフィーヌたちの話は使用人たちにも伝わっているらしかった。



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