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第78話「世界の真実(最悪のハイブリッド)」

【Side: Mia】

 その日の深夜。 私たちは、エリザベート様の部屋のベッドの上に防音結界を張り、二人きりで分厚いノートを広げていた。


「……ねえ、ミア」


 就寝前のハーブティー(青汁ではない)を飲みながら、エリザベート様が深刻な顔で口を開いた。 彼女の表情には、いつもの悪役の仮面はない。


「最近、少し気になっていることがあるの」


「体調ですか? どこか痛むとか……」


「違うわ。むしろ逆よ。貴女の強引な健康管理のおかげで、私の体はかつてないほど健康よ。……でも、それが問題なの」


 彼女は自分の胸元に手を当て、少し怯えたように目を伏せた。


「魔力の総量が、私の肉体のキャパシティを明らかに超え始めているの。……まるで、私の中に、私のものじゃない『別の何か』がいて、それが日々大きく膨らんでいるような……そんな不気味な感覚があるのよ」


「別の、何か……」


 私の背筋に、冷たいものが走った。 これまでの情報を整理する。

『無印版』では、エリザベート様は「瘴気の発生源(魔女)」であり、彼女が生き残れば世界は瘴気に飲まれる。 『真実版』では、彼女は「魔王の封印の人柱」であり、彼女が死ねば封印が解けて魔王が復活する。


 私たちはこれまで、「どちらの仕様なのか分からない」と悩んでいた。 だが、もし、その二つが「矛盾なく両立する」としたら?


「……エリザベート様。もし、この世界が『無印版』と『真実版』の、両方の設定を引き継いだ『最悪のハイブリッド仕様』だとしたら」


「どういうこと?」


 私の医療者としての「最悪を想定する思考トリアージ・アイ」が、一つの絶望的な仮説を組み上げた。


「お姉様が死ねば、封印が解けて魔王が復活します(真実版のバッドエンド)。でも、お姉様が生き続けても、体内に蓄積され続ける瘴気がいつか限界(臨界点)を迎えます。そして、その瘴気が器であるお姉様の肉体を乗っ取って……理性を失った『災厄の魔女』として世界を瘴気に沈める(無印版のバッドエンド)。」


「……ッ!」


 エリザベート様が息を呑んだ。


「死んでも魔王が復活し、生きていても私が世界を滅ぼす魔女になってしまう……。どちらに転んでも、私が破滅の引き金になるというの……!?」


「はい。システムは、何がなんでもお姉様を『世界のラスボス』に仕立て上げようとしているんです」


 絶望的な沈黙が、結界の中に落ちた。 もしこの仮説が正しいとすれば、それはシナリオが定めた残酷な真実。 逃げ道のない、完全なるチェックメイトを意味していた。


「……詰み、じゃない」


 エリザベート様が、震える声で呟いた。


「私が生きようが死のうが、世界は滅ぶ。だとしたら、私は……どうすれば……」


 彼女の目から、光が失われそうになる。 私は、彼女の両手を強く握りしめた。


「詰んでなんかいません」


「ミア……?」


「死んでもダメ、生きていてもダメなら……『悪い部分システム』だけを切り離すしかありません」


 私は、彼女の目を真っ直ぐに見据えて言った。


「以前から私たちが準備を進めてきた、あの作戦です」


「……『瘴気抽出オペ』。私の肉体を生かしたまま、体内に蓄積された魔王の瘴気(ガン細胞)だけを、外科手術のように摘出するっていう、あの狂った計画ね」


「はい! 私の光魔法をメス代わりにして、お姉様の魔力回路から瘴気だけを切り離し、外へ引きずり出します! そして、実体化したその瘴気を、私と……王子殿下たちで物理的に叩き潰すんです!」


 エリザベート様は、ポカンと口を開けた。 「何度聞いても、正気の沙汰とは思えないわ。前代未聞の荒業よ。成功する保証なんて……」 「ありません! だから私たちが、世界で初めてやるんです!」


 私は彼女の手をさらに強く握り、力強く断言した。


「タイムリミットは、春の『卒業パーティー』。本来、お姉様が断罪されるはずのその舞台で……私たちは、神様が用意した理不尽なシナリオ(病巣)を、完全に切除します」


 エリザベート様は、しばらく私の顔を呆然と見つめていたが、やがて、ふっと肩の力を抜いて笑った。 それは、悪役の嘲笑ではなく、腹を括った共犯者の笑みだった。


「……本当に、貴女は狂っているわ。白衣を着た悪魔ね」


「はい。お姉様を絶対に死なせない、地獄の果てまで付きまとう悪魔ストーカーです」


 私たちは、固く手を握り合った。 世界の真実(最悪の仕様)は判明した。 残された時間は、約三ヶ月。 誰も死なないトゥルーエンドを掴み取るための、前代未聞の「瘴気抽出オペ」の準備が、いよいよ本格的な最終段階へと突入しようとしていた。


深夜の作戦会議で明らかになった世界の真実。それは「死んでも魔王復活、生きても世界滅亡」という、無印と真実版が融合した逃げ道ゼロの最悪のハイブリッド仕様でした!

絶望するエリザベートに、ミアが叩きつけた解決策は「ガン細胞(瘴気)だけを摘出して、物理でタコ殴りにする」という前代未聞の荒業!

タイムリミットは、本来の断罪イベントである春の『卒業パーティー』。

「絶対に死なせない地獄のストーカー」と「腹を括った悪役令嬢」による、神のシナリオへの反逆がここから始まります!


※「物理でタコ殴りは草」「白衣を着た悪魔カッコいい!」と胸が熱くなった方は、ぜひ下部の星(☆☆☆)から評価をお願いいたします!

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