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第75話「闇夜の同志討ち(相互過保護)」

 春の『卒業パーティー』というタイムリミットまでに、どうやってエリザベートを救うか。 連日の作戦会議とカルテの分析の末、ミアはある一つの狂気的とも言える解決策──前代未聞の「瘴気抽出オペ」の構想を練り上げていた。


(お姉様の体内に蓄積する魔王の瘴気を、私の光魔法をメス代わりにして、外科手術のように切り離して摘出する……。それができれば、お姉様を生かしたまま世界も救えるはず!)


 まだ理論上の話でしかないが、その準備に向けて、ミアは一つの重大な決意を固めていた。


(このオペには、お互いの莫大な魔力が必要になる。だから……エリザベート様には、日常の些細な魔法すら使わせず、魔力を極限まで温存させなければ!)


 ミアは自室で、深夜の学園見取り図にペンで印をつけた。 今日の深夜、学園の裏庭にある古い井戸の近くに、微小な魔物(スライムの変異種)が発生するという『真実版』のプチ・イベントがある。 本来なら、主人公がこれを見つけて討伐し、経験値を稼ぐイベントだ。 しかし、もしエリザベートがこれに気づいて、魔女の瘴気を刺激するような魔法を使ってしまったら大変だ。


(お姉様がぐっすり眠っている間に、私が物理でサクッと薙ぎ払ってこよう)


 ミアはこっそりとベッドを抜け出し、音を立てずに寮を抜け出した。 手には、魔力を一切消費しない物理兵器──学園の備品である「柄の長いモップ」を握りしめている。


 冷たい冬の夜風が頬を撫でる。 裏庭の古い井戸に近づくと、確かにドロドロとした暗い気配スライムが地面を這いずっているのが見えた。


(よし、先手必勝!)


 ミアがモップを振り上げ、闇に紛れて飛び出そうとした、その時だった。


「──『ダーク・ランス』」


 シュガァッ! という鋭い音と共に、真っ黒な魔力の槍が虚空から飛来し、スライムの目の前の地面に突き刺さった。


「えっ!?」


 驚いて声が出た。 そして、暗闇の中から、黒いマントをすっぽりと被った人影が、カツカツとヒールを鳴らして現れたのだ。


「……ふん。こんな雑魚魔物、私が指先一つで消し炭にしてあげるわ」


 その聞き慣れた高慢な声、そしてマントの隙間から覗く真紅の髪。


「エ、エリザベート様!?」


「ひゃあっ!? ミ、ミアさん!?」


 暗闇の中で、二人の声が間抜けに重なった。


「な、なぜ貴女がこんな深夜にここにいるのよ! 部屋で寝ていなさいと言ったでしょう!」 エリザベートが、完全に「夜遊びを見つけた親」のようなテンションで怒鳴ってくる。


「お姉様こそ! 何してるんですか! オペに向けて魔力を温存しなきゃいけないのに、こんな雑魚相手に魔法を使うなんて言語道断です!」


 ミアも負けじと、モップを突きつけて言い返した。


「はぁ!? 私は貴女の魔力を温存させるために、こっそり片付けておいてあげようと思ったのよ! 感謝しなさい!」


「それは私のセリフです! お姉様の瘴気を刺激しないように、私が物理モップで殴り倒そうと思って先回りしたんです!」


 二人は互いを指差し合いながら、真っ暗な裏庭でガチの口論(説教バトル)を始めた。


「だいたい、モップで魔物を倒そうとする聖女がどこにいるのよ! 野蛮すぎるわ!」


「お姉様こそ、スライム一匹に『ダーク・ランス』なんて魔力効率が悪すぎます! コストパフォーマンスを考えてください!」


「ピギィ……?」


 放置されたスライムが、二人の言い争いに挟まれて困惑したように震えている。


「「あんたは黙ってなさい(ね)!!」」


 エリザベートとミアは、同時にスライムの方を振り向き、全力の怒鳴り声を浴びせた。 エリザベートの底冷えするような冷徹な殺気と、元・看護師の威圧的なオーラ。 二つの理不尽な圧力を至近距離で浴びたスライムは、「ピギィィィッ……!」という断末魔を上げて、自らドロドロに溶けて消滅してしまった。 まさかの、ストレスによる自壊である。


「……あ。消えちゃった」


「……みたいね」


 二人は、スライムの残骸(ただの水たまり)を見下ろして、同時にため息をついた。


「……はぁ。本当に、お互い不器用ね。足並みが揃わないことこの上ないわ」


 エリザベートがマントのフードを下ろし、呆れたように笑った。


「ふふっ。でも、目的は同じでしたね。お互いを、守ろうとして」


 ミアも、モップを下ろして笑い返した。


 冬の夜空に、二人の笑い声が小さく響く。 阿吽の呼吸なんて、一生無理かもしれない。 知識も、やり方も、常識も、何もかもがすれ違っている。 でも、「誰も死なせない」というゴールだけは、絶対にブレない。


「ほら、帰るわよ。夜風に当たって風邪でも引いたら、また貴女の面倒な『特製青汁』を飲まされる羽目になるんだから」


「あ、それなら明日の朝はホット青汁にしますね」


「だから嫌だって言ってるのよ!」


 二人は、互いの魔力を温存するという目的を果たせたのかどうか分からないまま、肩を並べて寮への帰り道を歩き出した。 秘密のオペまで、あと数ヶ月。 ポンコツなバディの戦いは、まだまだ前途多難である。


来るべき「瘴気抽出オペ」に向け、互いの魔力を温存させたい二人。

深夜のプチ・イベント(スライム討伐)を、ミアは魔力温存のために「モップ(物理)」で薙ぎ払おうと裏庭へ。しかし、そこには同じくミアの魔力を温存させるために「ダーク・ランス」を撃ち込むエリザベートの姿が!

「なんで魔法使うの!」「モップって野蛮すぎるわ!」

互いを守りたかっただけなのに、スライムを挟んで始まるガチの説教バトル。二人の理不尽な殺気と威圧感を至近距離で浴びたスライムは、まさかの「ストレスで自壊」してしまいました(笑)。

不器用すぎるバディの戦いは、まだまだ前途多難です!


※「スライムの死因:過度なストレス(笑)」「最高のバディ!」と爆笑した方は、ぜひブックマークや下部の評価(☆☆☆)で応援をよろしくお願いいたします! 毎日の更新の大きな励みになります!

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