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第60話「決戦前の平穏(という名の監禁)」

【Side: Mia】

 季節は秋を深め、色づいた木の葉が王立学園の敷地に舞い落ちるようになった。 学園祭の大成功(私にとってはエリザベート様の救出成功)から数日後。 私たちは、嵐の前の静けさのような、奇妙で平穏な日々を送っていた。


「エリザベート様。本日の青汁は、少し肌寒くなってきた気候に備えて生姜と魔力人参を増量した『ポカポカ・エディション』です。さあ、一気飲みを」


「……アンナ。私、公爵令嬢の権限でこいつをつまみ出したいのだけれど」


 自室のソファで本を読んでいたエリザベート様が、死んだ魚のような目で専属メイドのアンナさんに助けを求めた。


「申し訳ありません、お嬢様。私のメイドとしての矜持よりも、お嬢様の肌ツヤと内臓の健康を優先させていただきます。さあ、鼻をつまんで」


「裏切り者ォォッ!!」


 アンナさんは一切の表情を変えずに、私の背後に回って退路を塞いだ。 素晴らしい連携プレイだ。 アンナさんは最初こそ私を警戒していた(今も腹の底では何を考えているか分からないポーカーフェイスだ)が、エリザベート様のバイタルが目に見えて向上していく事実を前に、今では完全に「健康管理の共犯者」となってくれている。


 エリザベート様は涙目で青汁を一気飲みし、「オェェッ」とむせ返りながらベッドに倒れ込んだ。


「よし、本日のミッションクリアです。アンナさん、ありがとうございます」


「……お気になさらず。これもメイドの務めですので(スッ)」


 アンナさんは、どこから出したのか胃薬の錠剤をフリスクのように噛み砕きながら、一礼して部屋を下がっていった。 少し顔色が悪い気もするが、自立歩行可能で意識も清明。トリアージ判定は『緑(軽症)』だ。今は目の前の超重症患者(エリザベート様)のケアが最優先である。


 私は、ベッドでピクピクと痙攣しているエリザベート様に毛布を掛けながら、カレンダーに視線を向けた。


(いよいよ、来月だわ……)


 カレンダーの11月の欄。 赤く大きな丸で囲まれたその日は、学園の冬の最重要行事──『聖女選定の儀』。


 学園の地下深くにある「始祖の神殿」にて、聖なるクリスタルから放たれる強大な光の洗礼を受ける儀式。 『無印版』でも『真実版』でも、ここで私が「本物の聖女」として覚醒するシナリオになっている。


 しかし、私の目的は自分が聖女になることではない。 問題は、その光を「エリザベート様が浴びた時」の反応だ。


『真実版』の設定によれば、彼女の体内に封じられた「魔王の瘴気」は、強大な聖属性の光と強烈な拒絶反応ハレーションを起こす。 つまり、来月のあの儀式で彼女が物理的な苦痛を示せば……それこそが、彼女が「魔王の人柱」であるという、言い逃れのできない【確定診断エビデンス】となるのだ。


「……もうすぐですよ、お姉様」


 私は、毛布の中で丸くなっている彼女の背中を、優しくトントンと叩いた。


「んぅ……うるさい、平民……」


「はいはい。ちゃんと消化してから寝てくださいね」


 これまでの数ヶ月、私は状況証拠と勘だけで彼女を「真実版の被害者」だと信じてきた。 でも、それだけじゃダメだ。 彼女を本当の意味で救い、世界中を納得させるためには、誰もが目に見える「医学的・システム的な証拠」が必要なのだ。


 その証拠が手に入った時、私は全力で彼女を「悪役」という孤独な処刑台から引きずり下ろす。


「来月のその日のために、これからの約一ヶ月間、今まで以上にたっぷり栄養をつけて、体力を限界まで高めておいてくださいね」


「……まだ、飲ませる気……?」


「ええ。明日は鉄分強化の『ブラッド・エディション』を作りますから」


「悪魔ぁ……!」


 彼女の悲痛な叫びが、暖かい部屋の中に響き渡る。


 決戦の日は近づいている。 彼女が抱える呪いの正体を白日の下に晒し、この理不尽なゲームのシナリオを完治クリアさせるための、最後の手術オペに向けた準備期間が始まろうとしていた。


【確定診断イベント「聖女選定の儀」まで──残り、25日】


学園祭を終え、アンナさんという強力な共犯者(退路封鎖要員)を得たミアの「健康管理」はさらにエスカレート! 生姜と魔力人参増量のポカポカ青汁が火を噴きます。

しかし、この平穏(という名の監禁)は、次なる決戦への準備期間。

来月行われる『聖女選定の儀』で、エリザベートが聖なる光に拒絶反応を示せば、彼女が「魔王の人柱」であるという確定診断エビデンスが下る!

いよいよ物語の核心に迫る「確定診断イベント」へ向けて、カウントダウンの始まりです!


※「健康管理(物理)が強すぎる」「いよいよ核心へ!」と続きが気になった方は、ぜひブックマークや下部の評価(☆☆☆)で応援をよろしくお願いいたします! 毎日の更新の大きな励みになります!

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