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SAVERS ―絶望の怪物と戦って助ける少年少女たち―  作者: 春坂 雪翔


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第三十三話【死角に潜む一手】(二)

ここからしばらくストレス展開が続きます。カタルシスは10/3の予定です。

 禍々しい空気が充満する中、ピリッとした緊張感漂う空気が上書きするように張り詰める。しかし全てを上書きする事は出来ないのか、澱んだ空気が消えることは無かった。


 尻もちをついた誠司もよろよろと腰を上げ、誰の手も借りず自分の足で立ち上がる。柱に叩きつけられた衝撃でガンブレードはコアに戻ってしまっていたが、誠司の手から離れていなかったのは不幸中の幸いだった。


 杏も和真の手を借りつつもすぐに手を離し、コアを握りしめながらリリカとグラサイトを睨みつけている。

 そんな中明日香は、美琴の肩に腕を回したまま静かに呼吸を整えていた。


「……ちっ、読心はお見通しってか」

「なんか変なノイズがするわね。超音波かしら……」


 奏の呟きに美琴が視線は前に向けたままそう呟いた。


「ここに来る前にお仲間は俺達が倒した。残ってるのはあんたら二人とアリダだけだ。数だけでも俺達の方が有利な事に変わりない」

「はっ! 勝ってるのは数だけだろう。殆ど手負いじゃないか。貴様らの相手等、私達二人でも赤子の首をひねるぐらい容易いことだ」


 和真の挑発をグラサイトがどうってことないと言わんばかりに跳ね返す。杏が僅かに見せていた疲労を隠すように努め、コアを握りしめながら前に出た。


「舐めてくれたものだな。武器が無くとも私達は戦える。分かったら大人しくその子ども達を解放しろ」

「往生際が悪いですね。ハッタリなら無意味ですよ。……とは言っても、無駄な戦闘は避けたいものです。私達もマスターを傷付けたくは無いので」


 杖を構えたままリリカが淡々と返し、すうっと目を細めて明日香を睨みつける。


「その器をこちらに引き渡すのでしたら、マスター達と交換するのは考えてあげなくもないですが」


 全員の身体が強ばる。

 明日香の身体も例外なく無駄に力が入り、びくりと肩が跳ねた。

 美琴のもう片方の腕が明日香の身体に回り、明日香の身体をぎゅっと抱きしめながら美琴が「大丈夫、明日香ちゃんは私達が守るから」と小さく呟きリリカとグラサイトを睨みつける。身体の震えが美琴に伝わっていたが、今の明日香には気に止める余裕が無かった。


 一触即発の空気が漂う沈黙が続く中、最初にそれを破ったのはリリカだった。


「やはり貴女のその能力、目障りですね」


 リリカが目を細めて美琴を睨みつけながら小さくそう呟くと、杖をロストファクターから離し、柄の部分で床をとん、と叩く。


 その直後、突然美琴が頭を抑えて苦しみ出した。


「うっ……ぐ……ぁあ…………っ!?」

「美琴さん!?」


 顔を歪ませて床に手をつきながら苦しむ美琴に明日香は動揺しつつも、落ち着かせようと美琴の肩に手を伸ばす。

 しかしその手を美琴は拒み、明日香を突き飛ばした。

 

 明日香の身体が転がった次の瞬間、美琴の足元に魔法陣が浮かび上がる。

 禍々しい模様のそれが美琴を囲み、そこから植物のつるが生えてきて、それが美琴の身体に巻き付こうとした。


 明日香が言葉を失って取り乱した美琴を見守る中、奏が焦りの表情を浮かべながら明日香を押しのけて刀で美琴に巻き付くつるを叩き斬った。


 がらがらとつるがいとも容易く崩れ美琴がよろめきながら逃げ出し、奏が美琴を抱きとめる。それを見て我に返った誠司と杏も胸を撫で下ろした。

 しかしほっとしたその直後、明日香を大きな何かが囲いこんだ。


「……え?」


 明日香は目が点になり前に手を伸ばす。

 自身を取り囲んだ透明なそれは、ガラスで出来た箱だった。


「明日香ちゃん!?」

 

 ガラスの棺の様な箱に囲われた明日香に美琴が奏の腕の中から離れ手を伸ばすが遅かった。

 明日香の指先と美琴のそれが合わさった時、ガラスにヒビが入って中が白く濁る。

 刹那、一瞬でそれが砕ける。中にいたはずの明日香がそこから姿を消し、大小様々なガラスの破片だけが散らばっているだけだった。


 美琴が呆然とガラスの破片に視線を落とし、その場にいた他の全員が明日香が消えたことにより顔色を変える。いち早く切り替えたのは和真だった。


「てめえ! 明日香を釣るために美琴を餌にしやがったな!?」

 

 和真がブチギレ声を張り上げ、槍を構えグラサイトに飛び掛ろうとする。

 誠司と杏も怒りをあらわにし、コアをギアに戻すべく強く握りしめる。


 そんな時、グラサイトがふと手元の懐中時計を見た。

 

「ああ、そろそろ時間ですね」


 グラサイトが口角を少し上げながら懐中時計の蓋をパカッと開いてすぐ、かちりと短い音が鳴る。

 そして突然、なんの前触れもなく杏の身体から血が吹き出した。

 いつ出来たか分からない傷が杏の顔に、腕に、足に浮かび上がりそこから赤い血が流れ始める。耳と目、口からも血が流れ、杏が訳が分からないといった表情を隠さずに表に出しながらその場に倒れた。


「杏姉!!」

 

 取り乱した声で和真が名を呼ぶが、それに杏が答えることはなかった。今までどんな状況でも敵なしだった杏がこうもいとも簡単に倒れて戦闘不能になるとは誰も予想しておらず、誠司達は全員頭が真っ白になる。

 

 先に正気に戻った和真が更に激昂した。

 血が登った状態でグラサイトに飛びかかったその時、グラサイトの肩にいたとかげが至近距離で和真に向かって黒い唾を吐く。それが瞬時に黒い霧となり、和真に直撃した。


「和真さん!?」


 とかげの攻撃モロに食らった和真がその場で倒れ動かなくなる。戦闘力の高い二人が呆気なく倒された状況を理解しきれてない所に、リリカが杖を構え鏡のような物で出来た林檎を作り出し、美琴に投げつける。

 咄嗟に奏が美琴を庇うように立ち塞がり、それを切ろう刀を構え振り上げた時だった。


「待て雨宮!?」


 何かの違和感に気付いた誠司が奏に向かって叫んだのと、奏が刀を振り下ろして林檎を真っ二つにしたのはほぼ同時だった。

 切った瞬間林檎の中から煙が吹き出す。

 誠司が毒を食らった時と同じ紫色のそれが奏に、それを覆いかぶさって庇おうとする美琴に、そして二人の元に駆けつけようとしていた誠司に降りかかった。

時間が来たら魔法がとける→今まで見てた物は全部まやかしという。

杏姉を潰すにはこうするしか無かったと同時に思い付いた自分天才と自画自賛してます。

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