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SAVERS ―絶望の怪物と戦って助ける少年少女たち―  作者: 春坂 雪翔


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第二十九話【心の音を響かせて】(三)

 ルークはリボルバーにありったけのタブレットラムネを投入し、蜂の巣にする勢いで奏に撃ち込む。それらを全て避けられ刀で薙ぎ払われ、再びあの忌々しい鈴の音が鳴る。

 更に今度は琴の音も合わさって響きその不協和音に頭を抑えるが、今度はどうにか持ちこたえた。


 ルークが動けないのを確認したのか、奏が刀を構え直てルークに向かって振ると、鋭い水の刃がルーク目掛けて飛んでくる。ルークはそれを避けずに正面から当たりに行った。


「だからそんなのぼくにはきかないってなんどいったら」


 刃が彼の胸を貫通し、空いた穴が塞がれたのを確認してルークが挑発したその時、奏が石畳を蹴りルークに向かって突っ込み、彼の腕を掴む。そして次の瞬間、奏の背後から黒い大きな塊が現れ自身と奏目掛けて衝突した。


 大量の水がルークを襲い息が出来なくなる。がはっと水を飲み呼吸が出来なくなったタイミングでそれらが弾け飛んだ。

 

 ルークが呼吸を整え周りを確認した時、彼は奏によって大きな木の幹に押し付けられ壁ドンに似た体制になっていた。リゼットはどこにいるか確認した時、彼女もまた少し離れた所で美琴によって建物の壁に押し付けられていた。

 

 ルークが奏の手を振りほどこうとしたその時、押さえつけられた手の上に何かが飛んできてへばりつく。スライムのような冷たい感触のそれは、ロストの身体が破裂した時に出てきた風船ガムと似たような物だった。粘着力があり拘束がより強固なものになり、奏とルークがその場で身動き取れなくなる。


「こんなんでぼくをたおしたつもり? おにいちゃんおもったよりばかだね!」


 両手が塞がれてはお得意の刀も使えない。完全に捨て身の攻撃だと挑発するルークだが、対する奏の口角は僅かにあがった。


「お前を倒すのは、俺じゃない」


 ふっと少しだけ奏の表情から笑みがこぼれた時、ルークの胸に何かが当たり強い衝撃が走った。

 

 目線を下げると、ルークの胸に風穴が空いていた。

 奏の放った水の刃では無い。鳥のくちばしが突き破ったような傷跡だった。

 

「は……?」


 ルークは驚いて目を見開いたまま硬直している。

 彼が驚いてるのは傷を負ったからでは無い。

 その傷が修(・)復(・)し(・)な(・)い(・)からだ。

 

 どんなに攻撃を受けても、そこにたとえ核という弱点かあったとしても元通りに治るのがルークとリゼットの強みだった。

 その傷が、治らない。傷が、修復されない。

 これが意味することは即ち。


 顔を青ざめ、はっ、はっ、と荒い呼吸が漏れ出すルークに、奏が静かに語りかける。


「お前を倒すのは……」

 


「私の相棒よ……!」


 水を滴らせながら奏と同じように、壁に手をついた体制のまま美琴が笑う。

 彼女の視線の先にはリゼットがいて、彼女もまたぽかんとした表情で美琴を見つめる。そして彼女の胸元にも、水の刃で切り裂かれたような傷跡が出来ていた。


 桃色の毛先からぽたぽたと雫が落ち、風船ガムに似た粘着物質にかかる。徐々にそれが溶け始めた時、美琴は素早くリゼットから手を離し壁を蹴り後退して、彼女から距離をとる。リゼットから目を離さないように後ろ向きにゆっくりと歩を進め、背中に何かが当たって立ち止まった。


「良く思いついたな。追時雨と燕返しを同時に当てる為に、俺達を盾にするなんて」


 背中越しに奏の低い声が聞こえ、美琴はふふっと笑った。


 ルークとリゼット、二人を倒すには少なくとも、二人の核を同時に壊さなければならない。大事なのはそのタイミングと、如何にして攻撃を当てるかだった。

 

 奏の追時雨はその名の通り、狙った的に当たるまで飛び続ける。

 彼が放った水の刃はルークを狙ったのではない。リゼットを狙ったのだ。


 美琴の燕返しも同様、狙った的に当たるまで飛び続ける。

 奏の追時雨に少し遅れて放たれた風の燕もルークと同じようにリゼットに当たったが、リゼットを狙ってはいない。ルークを狙ったのだ。


 奏は元々龍神の力がある為、リゼットの正確な場所は把握出来ていた。そして美琴もまた、目、耳、鼻という五感が鋭くなった今ならルークの正確な場所が分かるようになっていたので、攻撃を当てるタイミングを合わせるのは容易だった。


 しかしお互いの攻撃がルークとリゼットに当たる時、彼らの正面には奏と美琴がいた。つまり回避させない為とはいえ、二人の核に攻撃が届くより先に自分達がそれぞれの攻撃を受けることになる。だが二人の身体は無傷だった。それはなぜか。

 

「ギアの攻撃が私達に効かないなら、もし身体に当たってもすり抜けて届くかなって。今まで試すことはしなかったけど、和真君と誠司君が明日香ちゃんの拘束解いた時に怪我は増えなかったから、やっぱりそうなんだと思って」

「訓練の時はニードルの成分使ってるとはいえ、普通に当たるからな。分かっててもやろうとは思わない」

「でも、あの風船ガムが飛んできたのは流石に驚いたわ。一瞬ロストが復活したのかって思ったもん」

「成分分析はもう出来てたからな。分析結果を元に同じの作れるか聞いたらビンゴだった」

「いつの間にそんなことしてたの? 時間かかりそうなのに解析して実用するのは、流石木戸さんと言った所かしら?」


 美琴があははと軽く笑う。戦闘に集中してたのか知らないが、奏と修一のやり取りは聞いてなかったようだ。

 

「……でもこんな荒業、私達にしか出来ないかも。あの子達と戦ったのが、奏と私で良かった」


 美琴がほっと安堵のため息をこぼす。自分達を盾にして拘束したのは、お互いの攻撃に気付かれない様にする為だった。他のセイバー達もお互いの信頼感があれば互いに攻撃を向けることは出来たかもしれないが容易いことではない。互いを信用し、かつ奏と美琴だけが持つ能力のおかげで今回の作戦は成功したと言えるだろう。


 しとしとと静かな雨が今も尚降り続ける中、美琴が口を開く。


「ところで……誠司君の話だと、シェイドの核を破壊した時、黒い硝子の破片が飛ぶみたいだけど……何も起きないわね」

「ああ、妙だな……」


 ルークとリゼット、それぞれから目を離さないようにしてるが、彼らが核を破壊してから一切動かないことに二人は疑問を持つ。

 二人が眉をひそめたその時、ルークとリゼットの身体が宙に浮き、ゆっくりと空中で合わさった。

 

 それがロストが人間に戻る時と同じように黒いモヤに包まれ、徐々に下に下がってゆく。地面に降り立ったそのモヤが晴れた時、そこに居たのは年端もいかないぐらい小さい少年と少女だった。


「えっ……子ども……っ!?」


 高校生ぐらいの見た目だったルークとリゼットよりもはるかに幼い、幼稚園児ぐらいの子どもが突然現れ、二人は目を見開く。

 寄り添いあって眠ってるように見える子ども達を前に美琴が戸惑いの声をあげたその時、彼らの胸元に空いた穴から黒い破片が弾け飛んだ。

実は学生時代の時に考えてた敵キャラで双子と戦うのは空美でした。そしてスカーレットの元になった大人の女性と戦うのは奏でした。当時その女性敵キャラは和風で刀を使うキャラクターで考えてたんです。

そんで和真や美琴は大発生したロストの討伐に追われてるーみたいな話の流れを考えてました。


……逆にして良かったしコンビで戦わせて良かったと今は思います。

こんなしっくり当てはめることが出来るなんて。

(最高に良いバトルだったぜ!と思った方、リアクション、感想お待ちしております)

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