第十八話【シェイド】(二)
続きは引き続き今までと同じ時間に更新します。
「しかし話を戻して悪いが、その明日香が手放した心がアリダになったとして、それが一体どうやってアリダになったのかが説明付かないな」
「やはり飛渡本部長もそこが気になりますか。私も先日話を聞いてから、同じ所で引っかかってまして」
「えっと、それってどういう事ですか?」
章吾と杏が少し首を傾げるのを見て美琴が疑問符を浮かべると、奏がその質問に答えた。
「手放した心がひとりでに変化したのではなく、何か別の因果が関わってる可能性があるって事か?」
杏が首を縦に振る。
どうやら明日香の心単体だけでアリダになったとは二人とも考え難いようだ。
その様子を見た空美が、それなんやけどと話し出す。
「うち、幽霊が見えるって言うたやんか。それでその……初めてあの人ら見た時に思ったんやけど、何となく、幽霊と似たような波長感じたんや」
「初めてってことは、病院に潜入した時ってことか?」
「せや。その前に廊下で会った幽霊と同じ波長やったからうちしか見えへんと思ってたんやけど、あの人らは奏さんにも見えとったからうち困惑してもうて」
空美の言葉に、奏が納得した声を上げた。
「それであの時挙動が遅かったのか」
「ごめんなあ。うちがもうちょっと早く動けとったら、奏さんもうちも捕まらへんかったかもしれんのに」
空美が申し訳なさそうに眉を八の字にするが、奏は特に気にした素振りを見せなかった。代わりに誠司が疑問を口にした。
「じゃあ、もしかしてアリダもあいつらも、元は幽霊だって事か?」
「多分な。浮遊霊の殆どはこの世に未練があってここにおるから、それと手放した心が何かしら惹かれおうて共鳴したんかもしれへん」
「確かにどちらも、負の要素が入ってても不思議ではないからな」
「幽霊か……とりあえずその集団はシェイドと呼ぶ事にしよう」
章吾の言葉を、誠司は声に出さずに復唱する。
ロストファクターから生まれた影なる存在。それが明日香から生まれた影であるアリダを崇めてる。
何の目的があってロストファクター達にロストを生み出させてるのかは未だに分からないが、ロストを使って良からぬことを考えてるのは明らかだ。人間をロストにするのを止めるには、シェイドを倒すのが最優先だと言えるだろう。
「あ、あと少し気になる事があるねんけど」
空美が何か言いかけたその時、スピーカーから警報が鳴り出した。
『ロストのエネルギーを確認。ロストのエネルギーを確認。直ちに現場へ向かってください』
同時に会議室のドアが勢いよく開き、研究開発班の職員が血相を変えて入ってきた。
「本部長、東京都心の四箇所でロストが出現しました。全て街中での発生、至急出動願います!」
「こんな時に、タイミングが良いのか悪いのか……」
「ごちゃごちゃ言ってる暇は無い。急ぐぞ!」
杏の掛け声で、全員が立ち上がった。
準備をする為足早に廊下を進む途中、曲がり角から小さな人影が明日香にぶつかる。明日香が下を見ると、沙夜が明日香に抱きついていた。
「沙夜……」
久しぶりに会った妹との再会を喜びたい気持ちと、早く現場に行かなければという気持ちが板挟みとなり明日香は眉を寄せる。誠司達も困惑した表情で沙夜を見るが、沙夜はそれに気付いてないのかにこりと笑って上を見上げた。
「お姉ちゃん行ってらっしゃい! 沙夜待ってるね!」
それだけ言うと、すぐに明日香から離れ手を振る。
明日香は物分りの良い沙夜に胸を痛めつつ、その行動に感謝しながら頷き沙夜の頭を軽く撫でると、誠司達の後を追った。
離れていく明日香達を見送る沙夜の後ろから、癒月が不安そうな顔で沙夜の後に続く。
沙夜ちゃん、と様子を伺いながら声をかけると、沙夜の目から雫がこぼれ落ちた。
癒月が沙夜の肩にそっと手を置くと、その小さな身体は小刻みに震えていた。
「沙夜、決めたから……お姉ちゃんの前では泣かないって、決めたから……っ!」
溢れる涙を零しながら、沙夜は明日香が行った先の廊下の奥をずっと見ていた。
* * *
ロストが暴れて盛り上がった瓦礫の中を、明日香は誠司と共に進んでいく。
暴れていたロストだった人間はDSIの職員に引き渡したが、逃げる人影が奥に入って行ったのを視界に捉えたので追いかけていた。
瓦礫を右に曲がった時、突然地面が揺れる。
空気が震え低い音が響き、明日香は体制を崩しかけた。
「明日香!」
よろけそうになった明日香を誠司が支えた刹那、更に低い重低音が二人の鼓膜に響く。立つのが困難になるほど激しく揺れ、地面に膝を付いたその時だった。
「おー、お二人さんまた会ったなあ」
軽快な声が聞こえ、明日香と誠司は顔をあげると、前方にギターを手にしたあの青年が二人を見てニヤニヤと笑っていた。
「シェイド……!」
誠司が睨みつけながら呟くと、青年が笑い出した。
「へえー。あんたら俺達をそんな名前で呼んでるのか。俺にはディオって名前があるんだけどなあ!」
中折れハットが風で飛ばされぬよう手を当てながら、青年、ディオが笑いながら二人を見下ろしていた。
奏と空美の設定は学生時代に考えた一種の厨二設定ですが、一種の伏線みたいに物語に組み込めたので気持ちよかったです。
ここから作画コストが高めの描写が続きます。
頑張って書いたんです褒めて下さい。




